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素人がマツ(松)の剪定法を学び、実際に剪定ができるようになる方法

はじめに

マツ(松)は、常緑樹であり、一年中葉が青いため「永遠の命」の象徴とされているらしい。さらに寿命の長さと堅牢な幹の姿から「庭木の王様」と呼ばれることもある。門松で知られるようにマツは古来より縁起の良い木とされ、人々に愛されてきた。

しかしながら、庭木の剪定の中でもマツの剪定は特に難しいと言われている。素人には厄介な作業が多いからである。私の自宅の庭にはマツの中でも比較的手入れが容易なゴヨウマツ(五葉松)が一本だけ植えてある。今まで自分では全く手入れをしてこなかったがリタイアを機に自分でも手入れをしてみようと思う。

一方、義母の自宅の庭にもクロマツとゴヨウマツが植えられている。他界した義父が大事に育ててきたものである。長年手入れをしてくれていた庭師さんも亡くなり、最近ではマツの剪定を依頼できる庭師を探すのも苦労する時代になった。

なんとか趣味の一環として私にもマツの剪定ができないかと考えたのが本稿の動機である。

素人がいきなりマツの剪定するのはハードルが高いので、書籍やネットで基礎を学び、分からないところは知り合いの庭師さんに相談し、自分の庭のマツで少し練習をした上で近い将来には義母の庭のマツにもチャレンジしたいと思う。

本稿が私のようにはじめてマツの剪定にチャレンジしようとする読者の参考に少しでも役立つのであれば嬉しいかぎりである。


<目次>
剪定の目的
マツの剪定時期
  • 春剪定
  • 秋剪定
マツの剪定の基本
  • みどり摘み
  • 透かし剪定
  • もみあげ
マツの剪定が難しい理由
剪定に必要な道具
【実践】クロマツの剪定
  • クロマツの剪定のポイント
  • クロマツの剪定でよくある失敗例
  • クロマツの剪定の実施例
【実践】アカマツの剪定
  • アカマツの剪定のポイント
【実践】ゴヨウマツの剪定
  • ゴヨウマツの剪定のポイント
  • ゴヨウマツの本格的な剪定方法
  • ゴヨウマツの剪定の実施例
マツの剪定の仕上げ確認
あとがき

剪定の目的

庭木を剪定する目的には複数あり、主な目的は下記のようなものである。

  • 見た目を美しくして鑑賞を楽しむ
  • 樹木の健康を保つ
  • 病気や害虫による被害から守る

特に、「透かし剪定」と「もみあげ」と呼ばれる秋の剪定を行う目的は大きく分けて2つある。それは「見た目の美しさ」と「害虫予防」である。

下記の葉や枝を取り除くとマツは非常に美しい樹形を見せる。

  • 去年の古い葉
  • 今年の葉の一部
  • 枯葉
  • 枯れ枝
  • 不要枝

これらの古い葉や枯れ枝を取り除くことで毛虫などの害虫が身を隠す場所がなくなり、冬を越すことができなくなる。その結果、春になって毛虫などの害虫が出てくるのを予防することになる。


見た目を美しくして鑑賞を楽しむ

剪定の目的の一つは、見た目を整えて美しく見せることである。綺麗に手入れされた松の木の鑑賞は実に楽しい。特に、松は堅牢な幹と複雑に曲がりながらも整理された枝と特徴ある葉は造形的にも美しく、魅力的であり、観る者の心を捉える。


樹木の健康を保つ

剪定の目的には樹木の健康を保つ役割がある。不要な枝を取り除くことで日当たりを良くしたり、栄養を必要な箇所に集中させることができる。また、大きくなりすぎて、周りの樹木や低木の成長を阻害するのを防止できる。


病気や害虫による被害から守る

樹木を放置していると、不要な枝にも栄養分が使用される。剪定することで、必要な枝に栄養が行き渡り、樹木全体の抵抗力も上がるので病気にかかりずらくなる。

また、樹木を放置すると、枯れ葉や枯れ枝に害虫が繁殖する。剪定をして枝を間引くことで、風通しがよくなり害虫が増えるのを防ぐことができる。


マツの剪定時期

マツの剪定は、基本的に年2回、「春剪定」と「秋剪定」を行う。春剪定は「みどり摘み」とも呼ばれ、剪定時期は4~5月末に行う。一方、秋剪定は「透かし剪定」や「もみあげ」とも呼ばれ、剪定時期は11月頃が最適である。

みどり摘みに適した時期は、地域やその年の気候によって多少変動することがあるが、4~5月末に行うのが一般的である。時期が早すぎると、みどり摘みをしたところから新たに芽がでてきてしまったり、逆に遅すぎると手で折れないので鋏を使うことになり時間がかかる。桜が散ったあとの頃が、一つの目安らしい。

透かし剪定はマツの休眠期である11月以降に行うのが良いとされている。しかし、7〜8月の暑い時期でなければ、いつ剪定をおこなっても特に問題はないらしい。

もみあげの時期はマツが休眠期に入る、11〜2月中旬を目安に行うと良いらしい。休眠期にもみあげを行うことでマツへの負担を最小限にすることができるという。


マツの剪定の基本

マツの剪定は、基本を守り、枯らすことのないようにしたいものである。マツの剪定の基本は、次のようなものである。

  • 葉(芽)のあるところで切る
  • 複数ある新芽は真ん中の芽をとる
  • 剪定は上から下に、奥から手前に向かって行う

マツは葉(芽)のあるところで切らないと枯れてしまう性質がある。したがって、剪定は必ず葉(芽)を残して切るようにする。

枝先に複数の新芽がある場合は、成長の強い真ん中の芽をとるようにする。理由は、成長を抑制してバランスの良い樹形にするためである。例えば3本の芽がある場合は真ん中をとり、あとの2芽をY字に残すことで枝の曲がった美しいマツに仕立てることができる。しかし実際には4~5本の新芽が出ている場合が多いので、成長した後の姿をイメージしながら最も良さそうな2本の新芽を残して他の新芽は摘みとってしまうことになる。

ただ2本にするのではなく、芽の伸びる方向と全体の樹形とを見合わせて行うことが大切であり、それが美しい枝配りに仕立てるコツであるという。

剪定は上から下に向かって行うことで、先に剪定した箇所に後から切った枝が引っかかることを防ぐことができる。さらに、奥から手前に剪定することで、剪定済みの枝に身体や腕が当たって傷付けるのを回避できる。


みどり摘み

春になるとマツの枝先から数本の新芽が出てくる。この新芽を「みどり」と呼び、みどりを折って取ることを「みどり摘み」という。

みどり摘みの目的は、マツの樹勢を抑えて均一にすることである。元気な芽を取っていくことでマツの樹勢を抑えることができる。春以降にマツがボサボサにならず、スッキリと見せることができる。

マツの枝先から出ている芽の中で、真ん中の強い芽を手で折る。手で折れない場合は、鋏で切っていく。

みどりは付け根で折るようにする。中途半端なところで折ってしまうと、そこからまた芽が出てしまい樹形が崩れてしまうからである。

最後に残した芽の長さが違う場合は短い方に長さを揃える。このときに、小さな芽は触るとポロッと取れてしまうので触らず、長い方の芽を途中で折ることで長さをそろえる。


透かし剪定

不要な枝を取り除き樹形を整えることを「透かし剪定」と呼ぶ。

透かし剪定で、まずやることは、飛び出している樹勢の強い枝を切ることである。根元に小さな芽があれば残すように切る。

木を上から覗き、下が見えないほど枝が密集している箇所を見つけ、枝を間引く。枝先についている芽の数を1~2芽になるように調整する。枝を透かし、葉をもみあげることで美しいマツの木に仕上げることができる。

透かし剪定のポイントは次の2つである。

  • 枝をV字になるように残す
  • 上下に重なっている箇所は下枝を大切にする

木から離れた場所から樹木全体のバランスを確認する。

  • 飛び出している枝はないか?
  • 形はおかしくないか?
  • 広がりすぎていないか?

これらは剪定中には気づきにくいので、時々離れて場所から確認する。マツの透かし剪定は慣れるまでは難しい。しかし、経験を積むことで上手にできるようになる。


もみあげ

夏に伸びた新しい葉の一部と去年の古い葉を除去することを「もみあげ」と呼ぶ。「透かし剪定」と「もみあげ」は一緒に行う方が効率良く作業できるが、剪定の時期には注意を要する。

もみあげは、新しい小枝が伸びるのを止め、固まった時期に行うとよいと言われている。11〜2月中旬が一般的な適期とされる。

もみあげは、マツの手入れのうちで最も手間のかかる作業とされるが、樹木のふところ部分に日光を入れるために不可欠である。

もみあげの正しいやり方は、葉をむしる方向に注意することである。葉の流れに逆らってむしると、樹皮がめくれることがあるので、斜めか、横方向にむしるようにする。

松(マツ)の木のもみあげの方法
もみあげ正しいやり方
引用:松(マツ)の剪定方法・基本を現役庭師が徹底解説! | 庭ラブ

古葉もみあげは、手で古い葉を全てむしる。古い葉は軽くむしるだけで簡単にとれる。

一方、新葉もみあげは、今年の葉の枚数が5〜7枚になるように、むしっておくと綺麗に見える。

松(マツ)の木の古葉
松(マツ)の木のもみあげ

むしりとった葉が枝などに引っかかっていると、見栄えが良くないので、枝や幹などを揺すって落としておく。


マツの剪定が難しい理由

マツの剪定が難しいと言われている理由は何であろうか? 一般的に知られている困難な理由には下記のようなものがある。

  • 剪定箇所を見誤ると枯れる
  • 手間がかかる
  • マツヤニで汚れる
  • 葉が尖っていて触れると痛い
  • 数年後の姿を想像するのが難しい

剪定箇所を見誤ると枯れる

マツは葉のないところで切ると、その先は枯れてしまう。そのため切る箇所を間違えると大切な枝を枯らしてしまうことになる。マツのこの特性が剪定を難しくしている要因である。


手間がかかる

マツの剪定においては、一般に「刈り込み」と呼ばれる剪定はできない。「刈り込み」とは大きな鋏でバサバサと切っていく剪定方法を指す。マツの場合は、芽や枝を一つ一つ丁寧にハサミを入れる必要があるので、他の庭木に比べて非常に手間がかかる。


マツヤニで汚れる

マツの幹や切り口からは「マツヤニ」と呼ばれる樹脂が出る。このマツヤニは手につくとベトベトし、そのまま作業すると汚れを吸着して真っ黒になる。服につくと洗っても落ちないことが多いので捨てる覚悟が必要である。


葉が尖っていて触れると痛い

マツの葉は先が尖っているので素手にあたると痛い。手袋や手甲をつければ多少は軽減されるが、痛みに耐える我慢が必要となる作業が続く。


数年後の姿を想像するのが難しい

庭木の剪定は数年後の姿をイメージして行うことが大切であるが、数年後の姿をイメージするには多くの経験が必要である。


剪定に必要な道具

マツの剪定に必要な道具と、あると便利なモノには次のようなものがある。道具次第で剪定の作業効率が大きく変わるので、道具は大切である。

  • 植木鋏【うえきばさみ】
  • きりばし
  • 芽切り鋏
  • 剪定鋏【せんていばさみ】
  • サック
  • ノコギリ
  • 三脚脚立
  • 背抜きのゴム手袋
  • 手甲
  • ガーデニング袋
  • 剪定シート

植木鋏

植木鋏【うえきばさみ】は、草花などの細かい作業をすることを目的に作られた鋏【はさみ】である。

マツの剪定では、マツの芽を切る際や枝を切る際に使う。あまり硬い枝は切れないが、マツの小枝であれば十分に切断することができる。植木鋏は、一般的には直径10mm程度の枝まで切断できるので、これ一本あればマツの枝の9割程度を剪定することができるらしい。

植木鋏は、草花や細い枝などの剪定に使われることの多い鋏であり、マツの剪定にも非常に使いやすい鋏であるという。切れ味、耐久性および保守性においてバランスが良く、庭師さんにも愛用者が多いと言われている。

また、持ち手が輪になっているので、誤って落とす心配もなく安心して使うことができる。私は手が小さい方なので、D型を使用している。手の大きい人はA型が良いかも知れない。

植木鋏
きりばし

きりばし

きりばしは、植木鋏によく似ているが、持ち手が輪っかになっていないのが特徴である。主に京都などの関西地方で使われている鋏であるらしい。下記のような特徴があり、プロの庭師さんをはじめ、熱烈なファンがいる鋏であるようだ。

  • 植木鋏よりも太い枝を切れる
  • 芽切り鋏と違ってガシガシ使える
  • 切った時の音が好き
  • 見た目が渋い

芽切り鋏

芽切り鋏は、マツの芽切り中芽をするのに適した鋏であるという。芽切り鋏の特徴は、細かい作業に特化している点である。刃先が細くなっていて、葉と葉の間や、茎の隙間に刃先を差し込んで切れるようになっている。一方、刃の厚みが薄く作られているので太い枝は切れない。

芽切り鋏には両刃芽切り鋏片刃芽切り鋏の2種類ある。

両刃芽切り鋏は、両刃になっているので切断面が非常に綺麗に仕上がり、皮などの切り残しが無い。太い枝は切れないので用途は限られている。

一方、片刃芽切り鋏は、剪定鋏と両刃芽切り鋏の中間に位置づけられる鋏で、細かい剪定に向いており、かつ、両刃芽切り鋏よりは太い枝も切断できる、「万能な」芽切り鋏と言えるかも知れない。

芽切り鋏はマツの剪定を上達したい人には是非使って欲しい鋏である言われている。用途はマツの剪定専用になってしまうが、その分とても扱い易くて剪定が楽しくなるということなので、私も早速購入してみた。

両刃芽切り鋏
片刃芽切り鋏

剪定鋏

剪定鋏【せんていばさみ】は、硬い枝や太い枝を切る鋏である。植木鋏とノコギリの中間に位置する剪定用道具であると言える。

剪定鋏は、枯れた枝や太い枝を切るときに活躍するが、細かい作業には向いていない。植木鋏と使い分けることで剪定を効率的におこなえるという。


サック

植木鋏や剪定鋏を携帯するのに便利である。ノコギリを携帯できるサックもある。


ノコギリ

剪定鋏では切断できないような太い枝はノコギリを使用する。剪定用ノコギリには、ピストル型と折りたたみ式がある。

ピストル型は、持ち手が曲がっているタイプのノコギリである。このタイプは持ち手が滑りにくく、細い枝などを片手で切れるので便利である。刃渡りは長めのものが多いのが特徴である。

一方、折りたたみ式は携帯に便利なのが特徴である。刃渡りは短めのものが多い。

折りたたみ式ノコギリ

ノコギリの刃の種類には生木用・剪定用・万能・荒目などのように種々のものが市販されているが、いずれか一つを選んでおけば十分である。

ノコギリは、剪定鋏でも切れない太い枝を切るときに使用する。折りたたみ式のノコギリならコンパクトで携帯に便利である。


三脚脚立

マツは背丈よりも高いのが普通であるので、マツの剪定に脚立が必須である。脚立は必ず三脚脚立と呼ばれる3本脚のものを使用した方が安定性と安全性の観点から良いとされる。

三脚脚立は足場の悪いところでも安定して使えるから転落のリスクが減る。マツの剪定のような高所での作業には必須である。


背抜きのゴム手袋

背抜きと呼ばれる手のひら側にだけゴムのついた手袋を使用するとマツヤニで手が汚れるのを防げる。また、マツの葉で手が刺されることも少ない。


手甲

手甲【てっこう】は、汚れや外傷から手首を守るのに重宝する。マジックテープのタイプが簡単に脱着できるので便利である。


ガーデニング袋

ガーデニング袋は大量の剪定ゴミを入れておくことができ、頑丈なので枝を入れても破れずに安心して掃除することができる。袋が自立するタイプは剪定ゴミを入れるのに非常に便利である。


剪定シート

剪定シートを剪定前に木の下に敷いておくと後片付けが簡単になり、便利である。


【実践】クロマツの剪定

クロマツ(黒松)は別名、雄松【オマツ】や男松【オトコマツ】と呼ばれている。アカマツ(赤松)と比較すると次のような特徴がある。

  • 葉が硬く、太くて長い
  • 灰黒色の樹皮
  • 幹に力強さがある

クロマツは、海岸で防風林や防砂林としても利用され、厳しい環境でも生き抜くことができる特長を有するマツである。神社仏閣の境内や日本庭園でもよく見かけるマツである。一般に庭木のマツと言えばクロマツを指すことが多い。


クロマツの剪定のポイント

クロマツの剪定のコツには、次の5つがあるという。

  • 下枝を大切にする
  • 樹形をひと回り小さくする意識を持つ
  • 将来の姿をイメージしながら剪定する
  • 上から見下ろしながら剪定する
  • 道具への投資は惜しまない

下枝を大切にする

マツは下枝を残すように意識して剪定することが重要である。理由は下枝を残すことで木の重心が下がり、バランスの良い樹形になるからである。下枝を大切に育てることによって、貫禄のあるマツの樹形に仕立てることができる。

マツの枝をよく観察して上下に芽が重なっているところを見つけたら、上の枝を外して下枝を残すように剪定する。上の枝を取り除くことで、下枝についている芽に日光が十分に当たるようになり、日照不足で枯れることを防ぐことができる。


樹形をひと回り小さくする意識を持つ

クロマツの剪定においては、樹形をひと回り小さくする意識を持つことはとても大切であるという。

理由は、基本的にクロマツは樹勢が強い木なので、とくに意識せずに剪定を続けていくと、大きくなってしまうからである。

したがって、脇芽(枝の途中に出た芽)がある場合は積極的に切り戻し剪定(芽のあるところまで切り戻す剪定)、そして不要枝の除去をおこなうことが必要とされる。

切り戻したからといって樹形が崩れることはなく、むしろ切り戻さない方が間延び枝(途中に芽のないヒョロ長く伸びた枝)が増えてしまい樹形を整えるのが困難になってしまう。

不要枝の除去も重要である。不要枝にはいくつかあるが、特に逆さ枝(幹に向かって伸びている枝)に関しては樹形を乱すので見つけたら切っておく。

常に樹形をひと回り小さくする意識を持っておくことで、小さな脇芽での切り戻しがスムーズにできるようになり、不要枝の除去もできるようになる。


将来の姿をイメージしながら剪定する

将来的にどのような樹形にしたいのかをイメージして剪定する。樹形は、ある程度は剪定によってコントロールできるが、大きく樹形を変えるには何十年もの年月が必要である。

クロマツはどのような樹形にしたいかをイメージして剪定することで、上達が何倍も早くなるという。


上から見下ろしながら剪定する

クロマツの剪定は上から見ながらやれば上達する。その理由は次の2つである。

  • 枝の流れや芽の混み具合がよくわかる
  • 腕が疲れない

枝の流れや芽の混み具合というのは、横から見ただけでは非常に分かりづらいが、上から覗くことで次のようなチェックがしやすくなる。

  • 地面が見えないほど芽が重なっていないか?
  • 枝がからみあって、ごちゃごちゃしている箇所はないか?
  • 芽が少なくて隙間が空いていないか?

このように上から覗くことで枝葉の状況を確認しやすくなる。現状を把握することで、解決するべきポイントが分かり、効率よく剪定できる。また上から覗きながら剪定すると、必然的に腕を上げずに作業できるため、疲れにくくなる。疲れてくると、注意力も散漫になり、剪定に集中できなくなる。

枝葉の状況を上から確認して、楽な体勢で剪定をするだけでも上達は早くなるという。


道具への投資は惜しまない

剪定は道具選びが重要で、適切な道具を使うことで、上達は確実に早まる。剪定の上達だけでなく、安全にも関わることであるから、道具への投資は決して惜しんではいけないという。

クロマツの剪定には最低でも下記のような道具が必要になる。

  • 植木鋏
  • ノコギリ
  • 三脚脚立 
  • ゴム手袋

この中でも特に三脚脚立ゴム手袋は、適切なものを使うことで上達が早くなるという。

三脚脚立は脚の長さが調節できるものを使用する。脚の長さを調整できることで、平らでない場所でも水平に脚立を立てることができる。作業しやすい体勢で集中して剪定をすることができる。

クロマツの葉は当たるとチクチクするので、ゴム手袋を使うと良い。最近のゴム手袋は非常に薄いものもあるので、指先の感覚を保ったまま剪定することができる。


クロマツの剪定でよくある失敗例

クロマツの剪定によくある失敗例には次のようなものがある。

  • 間伸び枝を増やしてしまう
  • 芽の数を増やしすぎる
  • もみあげの際に誤って芽を落としてしまう

間伸び枝を増やしてしまう

初心者によくある失敗例は、間伸び枝を増やしてしまうことである。間伸び枝が増えてしまうと芽の数が減り、クロマツが弱々しく見えてしまう。

この失敗を回避するためには、枝の途中の小さな芽を育てていくことが大切である。枝先の芽だけを剪定していると間伸び枝が多くなってしまうので、枝の途中の小さな芽を育ていく。小さな芽に十分に日光が当たるように枝の整理をおこなうとよい。


芽の数を増やしすぎる

芽の数を増やしすぎてしまうのもあまり良くない。理由は、芽を増やしすぎてしまうと芽同士の感覚が密になりすぎてしまい、日照不足で下の枝が弱ってしまうからである。

この失敗を回避するためには、残す芽の数は芽の密度によっては1芽にしてバランスを整えることが必要である。

マツの新芽(みどり)は2芽残すことが推奨されているが、これを毎年やっていくと芽の数が増えて行ってしまう。芽を大事にすることは重要ではあるが、混み合っているところは思い切って1芽にすることも大切である。


もみあげの際に誤って芽を落としてしまう

もみあげをする際に誤って芽を落としてしまうことがある。芽を失くした枝は枯れてしまうので注意が必要である。小さな脇芽や弱っているマツの芽は、少し触っただけでもポロッと取れてしまうので細心の注意が必要となる。


クロマツの剪定の実施例

プロの庭師さんによる実例から学ぶことが第一歩である。下記の写真は妻の実家の庭のクロマツの剪定である。剪定の実施時期は4月下旬であった。

【剪定前】

【剪定後】

【剪定前】

【剪定後】

【剪定前】

【剪定後】


【実践】アカマツの剪定

アカマツ(赤松)は、別名、雌松【メマツ】や女松【オンナマツ】と呼ばれている。樹皮が赤褐色なのが特徴で、擦ると剥がれ落ちる。アカマツの葉先も尖っているが、クロマツに比べて柔らかいことからクロマツの葉ほど触っても痛くはない。

アカマツの生えている場所は内陸部に多く、アカマツの根元にはマツタケ(松茸)が生えることでも有名である。

盆栽ではクロマツやゴヨウマツに人気があるが、庭木ではアカマツを好む人が多いという。気品と優雅さはマツの中では一番だという人もいる。確かに幹だけ見ても美しいと思う。


アカマツの剪定のポイント

アカマツの剪定はポイントさえ押さえることができれば初心者でもチャレンジできる。アカマツの剪定におけるポイントには下記のようなものがある。

  • 剪定に適した時期は年2回ある
  • 「みどり摘み」で樹勢を抑える
  • もみあげと透かし剪定で樹形を整える

剪定に適した時期は年2回ある

アカマツの剪定に適した時期は、春と秋~冬の年2回である。春の剪定は、4~5月末までに行う、いわゆる「みどり摘み」である。一方、秋~冬の剪定は、10月~1月に実施する、いわゆる「透かし剪定」と「もみあげ」である。


「みどり摘み」で樹勢を抑える

アカマツのみどり摘みは、4~5月上旬におこなうと良い。

みどり摘みの目的は、新芽をとって樹勢を抑え、樹形を整えることである。みどり摘みを行うことで、アカマツの樹勢をおさえることができ、美しい樹形を保つことができる。

「みどり摘み」の方法

みどり摘みの方法は、次のとおりである。

  • 真ん中の強い芽を取る
  • 残りの芽を1~2本になるように調整
  • 残した芽の長さを揃える
真ん中の強い芽を取る

新芽が複数出ているので、その中で真ん中の樹勢の強い芽を根元から折る。時期が遅いと指で折れないので、植木鋏で切る。

必ず新芽の根元で切るのがポイントである。中途半端なところで切ると、切り口から新たに新芽が出てきて、余計に樹形がみだれる原因になる。

残りの芽を1~2本になるように調整

次に、残っている新芽の数を1~2本になるように調整する。2本残す場合は、2本の芽がVの字になるように残すと、自然な感じに仕上がる。

残した芽の長さを揃える

最後に、芽を2本残した場合は、長さを揃える。短い方の芽にあわせて長い方を途中で切ればよい。これで「みどり摘み」は終了で、秋には樹形が整い出す。


もみあげと透かし剪定で樹形を整える

10月~翌年の1月末までの期間に実施するマツの剪定は、一般に「もみあげ」と「透かし剪定」と呼ばれる剪定である。この2つの剪定は、同時におこなうと効率よく作業できる。

もみあげは、去年の古葉をむしりとる作業のことである。もみあげをする目的は、樹形をスッキリと美しくし、下枝への日当たりの調整をして下枝が枯れるのを防ぐと共に害虫の予防である。

一方、透かし剪定は、不要な枝を剪定して、マツの成長をコントロールしたり、病害虫の予防を目的とした剪定である。

「もみあげ」の方法

もみあげのやり方は、去年の古い葉を手でむしっていく。あまり強引にむしると皮までむけてしまうので、むしる方向には注意が必要である。また一緒に今年の葉も4~6枚程度残すようにむしっておけば、全体的にスッキリとした印象になる。

「透かし剪定」の方法

アカマツの透かし剪定のポイントは、次のようなものである。

  • 芽は1~2本に減らす
  • 不要枝を剪定する
  • 下からみて空が見える程度に剪定する

まずは、芽の数を1~2本にまで減らしていく。一般に多いものでは5~6本ほど芽が出ていることがあるので、1~2本になるように植木鋏で切っていく。

真ん中の強い芽を外したあとは、V字になるようにバランスを考えて他の芽を切るとよい。

不要枝とは次のようなもので、これらはすべて剪定する。

  • 徒長枝:上に強く伸びた枝
  • 交差枝:他の枝と交差した枝
  • 逆さ枝:幹に向かって伸びている枝

不要枝を切りながら、少しずつ枝を透かしていく。切断する箇所は、根元に小さな芽があればそこで切り、なければ枝の分かれている股のところで切る。

最後に下からのぞいてみて、空が透けていれば完了である。風通しを良くすることで病害虫の予防にもなる。


【実践】ゴヨウマツの剪定

ゴヨウマツ(五葉松)は、日本固有のマツの種類で、特長は名前の通り、葉が5枚で1組になっている点が、クロマツやアカマツとの違いである。クロマツやアカマツの葉は、二本一組である。

ゴヨウマツは、銀色がかった緑の葉をしており、古来より庭木や観賞用として人気が高く、神社や寺院の境内にも植栽されている場合が多い。

葉先は尖っているが触れても痛くなく柔らかい感触で、枝も柔らかく柔軟に曲がる。このような柔軟な性質から盆栽としても非常に人気が高いという。


ゴヨウマツの剪定のポイント

ゴヨウマツの剪定はポイントさえ押さえることができれば初心者でもチャレンジできる。庭木のゴヨウマツの場合は、飛び出している枝の整理だけでも綺麗になるが、ゴヨウマツの剪定におけるポイントには下記のようなものがある。

  • 枯れ葉を手で落とす
  • 飛び出た枝を剪定する
  • 枯れ枝と垂れた枝を剪定する

枯れ葉を手で落とす

ゴヨウマツの場合は、枯れ葉を落とすことから始める。枝の中を覗くとたくさんの茶色い枯れた葉があるので、まずは手でむしりとって取り除く。枯れ葉を放置していると害虫の発生を引き起こすので、綺麗に取り除く。枯れ葉を取り除くだけでも、見た目が少しスッキリする。

飛び出た枝を剪定する

次に飛び出た枝を剪定する。樹形を確認して仕上げたいラインを決め、そのラインから飛び出している枝だけを剪定する。飛び出している枝だけを剪定することで、樹形を整えることができる。

枯れ枝と垂れた枝を剪定する

最後に枯れ枝と垂れた枝を剪定を剪定する。枯れ枝は枝先に芽のない枝であり、手でも折れる。太い枝は、剪定鋏を使って枝元から切る。少し離れた場所から木を見てみて、垂れている枝があれば剪定すれば、作業完了となる。


ゴヨウマツの本格的な剪定方法

ゴヨウマツの本格的な剪定方法と言っても実は、クロマツやアカマツと同様に年2回の剪定を実施するだけである。しかし、ゴヨウマツ独自の注意点もあるので必ず目を通して頂きたい。

ゴヨウマツの剪定時期は春と秋の2回

庭木のゴヨウマツの剪定時期は、春(5月~6月上旬)と秋(11月〜12月上旬)の年2回である。

春の剪定は、いわゆる「みどり摘み」である。みどり摘みの目的は、樹勢を抑えることである。ゴヨウマツの成長は、比較的遅いが、放っておくと枝がどんどんと伸び樹形を崩してしまう。みどり摘みを行うことで、早い段階で樹勢を抑えて成長をコントロールできる。

一方、秋の剪定は、いわゆる「もみあげ」と「透かし剪定」である。11月〜12月上旬にかけてゴヨウマツが休眠期に入るため、この時期に剪定すると木への負担を軽減できる。

みどり摘みの方法

枝先にたくさんの芽がある場合は、芽の数が2〜3芽になるように不要な芽を根元から摘む。特に長く強い芽は樹形を崩すので優先的に摘む。残った芽を半分ほどのところで手で折っていく。

芽が小さい場合はそのまま残しておいて、伸びたタイミングで折る方法もある。

ゴヨウマツはクロマツに比べて葉の伸びが短いので、あまり強くみどり摘みをする必要はないという。

みどり摘みの注意点

5月頃にみどり摘みをする際はみどりが硬くなっていて、手では折れないので無理をせず鋏を使うようにする。

ゴヨウマツは、二番芽(みどり摘み後に出る新しい芽)が出にくい特徴があるので、みどり摘みの際は、本当にいらない芽なのかをしっかりと判断する必要がある。

透かし剪定の方法

まず、仕上がりラインを決める。横から眺めてお椀を逆さにしたような形をイメージして仕上げたいラインを決める。

仕上げたいラインから伸びすぎている枝を見つけて剪定する。その方法は、仕上げたいラインから飛び出している枝をたどり、枝の途中に小さな芽があればそこから切断する。芽がなければ枝が分かれているところから切断する。

次に上からと見て枝が混んでいる箇所を剪定する。上から覗いてみて芽や枝の混み合っている箇所があれば、小さな芽を残して剪定する。

離れた場所から樹形を確認して、伸びすぎている枝がなければ完了である。ゴヨウマツは透かし剪定だけで綺麗な樹形を保つことができるので、伸びすぎている枝を見つけて剪定するだけでも樹形が整う。

小枝を密生させるので、貧弱な枝やふところ枝を抜き、全体の枝葉のバランスがとれるようにすれば良い。

もみあげの方法

ゴヨウマツのもみあげは軽く古葉をむしる程度にしておくことが重要である。クロマツやアカマツのように、綺麗に古葉むしってしまうと木が弱る場合がある。

したがって、ゴヨウマツのもみあげは葉の混んでいる箇所を軽くむしる程度にしておく。実際にゴヨウマツのもみあげを行う人はあまり多くはない。プロの庭師も要望がある場合以外は、透かし剪定で仕上げる場合がほとんどであるという。

その理由は、葉が細かくて難易度が高く、時間がかかる上にやりすぎると木が弱るからである。


ゴヨウマツの剪定の実施例

下記の写真は妻の実家の庭のゴヨウマツの剪定である。剪定の実施時期は4月下旬であった。

【剪定前】

【剪定後】


マツの剪定の仕上げ確認

マツの剪定を終えたら、最後に樹形全体を確認しておく。チェックポイントは、次のようなものであり、これらを確認して剪定終了となる。

  • 棚はお椀をひっくり返した形になっているか?
  • 剪定したマツの葉が枝や幹に引っかかっていないか?
  • 垂れた枝葉はないか?
  • 枯れた枝は残っていないか?
引用:松(マツ)の剪定方法・基本を現役庭師が徹底解説! | 庭ラブ

もし、棚に飛び出している箇所があれば切っておく。

剪定したマツの葉を放置すると、茶色くなり見栄えが良くないので、枝や幹を軽く揺するか、軽く叩いて葉を落としておく。

垂れた枝葉は樹形を崩してしまう。垂れた枝は鋏で切り、垂れた葉は手でむしっておく。

害虫被害や美しい樹形のためにも、枯れた枝は必ず取っておく。硬い枝の場合は剪定鋏かノコギリを用いて切断する。


あとがき

難しいとされるマツの剪定も基本を押さえて剪定すれば私のような初心者でもチャレンジすることができるかも知れない。マツは放置するよりは、やはり手入れすることで確実に綺麗になる。時間はかかるがその分達成感を味わうことができる。

タネが風に乗ってやってきて庭に自生したクロマツも最近では大きく育ち、私の「練習木」になってくれるのは幸いである。

マツの剪定に興味を持つと神社仏閣の境内にあるマツや日本庭園のマツの手入れ具合にも自然と関心がいく。庭師さんたちに感謝したいと思う。庭師さんたちの尽力によって私たちは優美なマツの姿を目にすることができ、散策を楽しめるのだから。


【参考資料】
庭師の技術がわかる庭木の手入れ(中山草司著、1993年刊、大泉書店)
庭木の手入れ12か月(船越亮二監修、1993年刊、主婦と生活社)
松(マツ)の剪定方法・基本を現役庭師が徹底解説! | 庭ラブ
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