はじめに
最近、「人生100年時代」という言葉をメディアなどでよく耳にする機会が増えたように思う。世界中で長寿化が進んでいるが、特に日本ではその傾向が顕著であるようだ。
この「人生100年時代」を健康的に生き抜くための方法論も考えなければならない。「健康寿命」という用語があるように、私たちにとっては継続的な医療や介護に依存しないで、健康で、自立した生活ができる期間と、いわゆる「寿命」との差ができるだけ小さい方が良い。日常的・継続的な医療や介護に依存して生きる期間が長引くことを望む者は誰もいないと思う。
私もシニア世代になり、今までのような無茶が体力的にもできなくなった。若い頃はがむしゃらにスポーツを楽しんだり、過剰な運動をしても一晩ぐっすりと眠れば翌日には回復していたものである。しかし、年齢を重ね、シニア世代と呼ばれるようになると過度な運動は身体に堪えるようになる。だからと言って、運動を全くしないでいると健康にも支障が出てくる。なんとも厄介なものである。歳はとりたくないものだとつくづく思うが、加齢だけは何ら努力をしなくても勝手に進んでいってしまう。
さて、愚痴ばかり言っても仕方がないので、シニア世代にとって健康維持のために必要な、いわゆる「適切かつ適度な運動」について考えてみたい。何故なら、運動には下記のような様々な効果が期待できるからである。
- 心肺機能の向上
- 筋力の強化
- 転倒予防
- 免疫力の向上
- 生活習慣病の予防
- 認知症の予防
- ストレスの解消
適切な運動とは?
運動量を制限せざるを得ないような病気を抱えていない場合、シニア世代が健康を維持するためには日頃から活動的になることが大切である。
運動の種類によって効果や強度が異なるので、自分の目的や体力に合わせて選ぶことが大切である。運動をする際には、体調や負荷に注意して、無理をしないように自己管理が必要となる。
運動の種類としては、有酸素運動、筋力トレーニングやバランス運動などがある。
有酸素運動
有酸素運動とは、酸素を使ってエネルギーを作り出す運動のことで、心肺機能の向上や体脂肪の減少などの効果があるとされる。
有酸素運動の代表的な種類としては、下記のようなものがある。
- ウォーキング
- 歩くことで全身の筋肉を動かし、心肺機能を高める
- 気軽に始められる運動
- ジョギング
- 走ることでウォーキングよりも高い強度の運動ができる
- 膝や足首に負担がかかるので注意が必要
- サイクリング
- 自転車に乗ることで下半身の筋肉を鍛えることができる
- 心肺機能を高めることができる
- 坂道や風によって強度を調整できる
- 水泳
- 水の中で泳ぐことで全身の筋肉を使うことができる
- 心肺機能を高められる
- 水の抵抗によって高い負荷がかかる
- エアロビクスダンス
- 音楽に合わせて体を動かすことで全身の筋肉を使う
- 心肺機能を高められる
- 楽しみながら運動できる
筋力トレーニング
筋力トレーニングとは、筋肉に負荷をかけて筋力を向上させる運動のことで、基礎代謝の向上や骨密度の増加などの効果があるとされる。
筋力トレーニングの代表的な種類としては、下記のようなものがある。
- プッシュアップ
- 腕立て伏せのことで、胸や腕の筋肉を鍛える
- 膝をついて行うと負荷が軽くなる
- スクワット
- しゃがんで立ち上がる動作
- 太ももやお尻の筋肉を鍛える
- 膝がつま先より前に出ないように注意する
- プランク
- 体をまっすぐにして腕や足のつま先で支える姿勢
- 腹筋や背筋などの体幹の筋肉を鍛える
- 腰が落ちないように注意する
- バックエクステンション
- うつ伏せになって上半身を持ち上げる動作
- 背中やお尻の筋肉を鍛える
- 首や肩に力が入らないように注意する
- シットアップ
- 仰向けになって上半身を起こす動作
- 腹筋を鍛える
- 腰に負担がかからないように注意する
- 器具を使ったトレーニング
- ダンベル
- ゴムチューブ
- バランス運動
- 片足立ち
- つま先立ち
- ヨガ
- 太極拳など
適度な運動とは?
有酸素運動の目安としては、軽めの有酸素運動を週に最低150分以上行う。激しい有酸素運動をする場合は、週に75分で十分であるとされている。また、中程度の有酸素運動と激しい有酸素運動を組み合わせることもできる。
筋力トレーニングの目安としては、主要な筋肉(脚、腰、背中、腹部、胸部、肩、腕)の全てを、できれば週に2日以上鍛えることが推奨されている。バランス運動は、週に3日以上行うことが望ましいとされている。
運動時の注意点
運動は、自分の体力や好みに合わせて楽しく行うことが大切である。運動を習慣化することで、充実したシニアライフを送ることができるはずである。シニア世代が運動をする際には、特に下記の点に注意する必要があると思う。
- 体調の変化に注意し、息切れ・動悸・胸痛・めまいなどの症状がでたらすぐに運動を中止する
- 運動前・中・後に必ず水分補給をしっかり行う
- 熱中症のリスクが高まるので暑い日は運動を控える
- 凍傷のリスクが高まるので寒い日は運動を控える
- 転倒の危険があるので段差の多い場所での運動は避ける
- 事故の危険があるので交通量の多い場所での運動は避ける
- 筋肉・関節のケガ防止のため、運動前にウォーミングアップ
- 筋肉・関節のケガ防止のため、運動後にクーリングダウン
- 運動の強度や運動時間は徐々に増やし、無理をしない
身体活動・運動の推奨事項
健康づくりにおける身体活動・運動の意義を理解し、それに基づいて適切な運動を行うことが必要とされる。これには、筋力トレーニングや日常生活で活動的に過ごすためのポイント、慢性疾患を有する人の身体活動のポイントなども含まれている。
運動時間・強度・頻度の目安
自分に合った運動計画を作ることが大切であるとされる。運動時間・強度・頻度の3条件において、簡単に運動の目安を設定するコツと、続けるポイントを理解する必要があるとされる。
適度な運動量・頻度・時間の目安
運動効果の概念図を参考に、自分の体力・性別・年齢・運動経験・健康状態などによって、適切な運動強度を決定する必要があるとされる。
あとがき
人が健康を保つうえで大切なのは、食事と運動だとされる。栄養バランスのとれた食事をきちんと摂り、日々の生活の中に適度な運動も取り入れて規則正しい生活をすることが肝要である。
私の知り合いで、私よりも高齢なのに元気な人の多くは、日常生活に運動を取り入れている。1日30分程度の適度な運動(多いの朝の散歩やウォーキング)を取り入れており、それが健康的な生活に繋がっているという。
身体運動を行うことで、筋力や体力のアップが図れているのだと思う。特に、足の筋肉が鍛えられれば、歩行のときにきちんと足が上がり、転倒のリスクも軽減できるのだと思う。
自宅でできる運動としては、ストレッチやスクワット、ラジオ体操などが挙げらる。ポイントは、無理なく続けられる運動を選ぶことが大切であると思う。
日々の運動は、継続してこそ効果が期待できる。私のようにこれまでほとんど運動をしてこなかった者は、まずは半年を目安にしてやってみようと思う。
カナダで実施のある研究によれば、20~40分程度の有酸素運動を半年続けた場合、一部の認知機能が改善したとの結果が出たそうである。運動により脳への血流が改善し、認知機能を高めたのではないかと考えられている。半年といっても毎日の運動ではなく、この研究では週に3日行ったそうである。私もまずは週3日の運動を、半年間続けてみることにしようと思う。
また、2019年にミシガン大学が行った研究では、20~30分間、緑豊かな自然に触れると、ストレス値が1時間あたり約28%も低下したという結果が報告されている。
樹木が発しているフィトンチッドと呼ばれる物質には、うつや疲労、ストレス状態の改善や、血圧を安定させる効果もあるといわれている。森林浴を行うとリフレッシュでき、気持ちがスッキリするのはフィトンチッドの効果である可能性が高い。
自然公園などで緑を目にしながら歩けば、リフレッシュ効果と体力向上の2つの効果を得られる。私が近場に探鳥地を見つけ、バードウォッチングをしながら森林浴していることは手前味噌ながら理にかなっていると思う。