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ガーデニング

【荒廃竹林の話】竹は庭に生えると困るが、無くなると困る

タケ

は、庭に生えると困る植物である。地下茎による繁殖力に加え、地上部の生長力と生命力は他の植物を圧倒し、庭を占領されるかも知れないという恐怖感すら抱く。だから竹類は一切、自宅の庭には植えないことにしている。

しかしながら、 常緑で倒れにくく、真っ直ぐに伸びる竹は、生命力を象徴するおめでたい植物とされ、お正月に飾る門松にも使用されたりする。

竹は、日本の各地に広く分布し、さまざまな用途に利用され、古来より私達の生活に密着した植物でもある。竹と人の関わりにはそんな深い歴史がある。

モウソウチク孟宗竹)と「タケノコ」(食用としては大きくなりすぎた!)

タケは、イネ科タケ亜科に属する植物のうち、木本(木)のように茎(稈)が木質化する種の総称である(引用:ウィキペディア)。

和名の「タケ」の由来については諸説あり、なかでも有力なのは「高く成長するので高(たか)または丈(たけ)が語源となっている」という説と「ぐんぐん成長するので長生(たけおふ)と呼ばれていたものが転訛した」という説である。どちらももっともらしいが正解は分からない。

タケノコ」 から “大人”のタケに仲間入りするモウソウチク孟宗竹

タケ類の種類は、世界で600~1,200種とも言われ、そのうち日本には150~600種があるといわれる(引用:ウィキペディア)。

推定値に幅があるのは分類の仕方や種類の数え方に諸説があるためだというが、それはまだ確立された学説はないということでもある。

こんなにも種類が多ければ覚えられないし、覚える必要もないと思う。ただ有名な、主力の種類のタケの名ぐらいは覚えたいとは思う。


タケの種類

マダケ(真竹) 姫路城西御屋敷跡庭園 好古園/竹の庭

マダケ真竹)は、弾力性がある性質をもつため、加工性に優れており、良質な竹材として建築資材や竹細工などの工芸にも利用されている。

メダケ女竹)は、材質が柔らかくて、ねばり強いため竹細工や農業資材などに利用されている。

メダケ女竹)(好古園・竹の庭にて)

一方、モウソウチク孟宗竹)は、建築や農漁業用資材として利用されているが、弾力性にやや欠けるため、かごなどを編むなどの工芸用途には向かない。

しかしながら、春が旬のタケノコ(竹の子、筍)は、モウソウチク孟宗竹)のタケノコであることが多い。

この孟宗竹のタケノコが最も市場に出荷されるからである。ほのかに甘い独特の旨味があり、「春の味覚の王者」と言われ、人気が高い。

モウソウチク孟宗竹)/ 青谷梅林(京都府城陽市中)にて

竹材産業斜陽原因

私が青谷梅林で見たのは、実は荒廃竹林だという。荒廃竹林を整備することで生産梅林面積の減少に歯止めをかけようとしているようだ。

梅林の復興と景観の維持のため、荒廃竹林の竹を伐採し、有効活用に取り組む活動が続けられているという。

何故、荒廃竹林が全国的に増えたかというと竹材の需要が一気に減少したからである。

高度経済成長期(1955~1973年)以降に竹材の需要が減ったのは、プラスチック等の代替材の台頭が目覚ましかったからだと理解していたが、実はそれだけではなかったらしい。恥ずかしながら、それを知ったのはつい最近のことである。

マダケ真竹)は、加工性に優れているため、良質な竹材としてさまざまな製品に使われていることは上述のとおりである。

マダケ(真竹) 姫路城西御屋敷跡庭園 好古園/竹の庭

そのマダケはほぼ120年に一度花を咲かせ、すぐ枯れてしまうらしい。日本だけでなく世界中のマダケが花を付け、一斉に枯れてしまったのが高度経済成長期の最中(1960年代の後半)だったという。当然ながら加工用のマダケは世界中で品薄になってしまったという。

いくら成長が早い竹とはいっても、竹材として市場に出せるようになるまでには一定の長い歳月が必要である。そのため、加工用の竹材の供給が間に合わず、プラスチック等の代替材に一気に取って代わられたという。

もしも世界中のマダケが一斉に枯れるという事態にならなかったならば、急激な衰退には至らなかったはずだ。


竹材利用回帰への道程

一度失った信用とシェアを取り戻すことは容易なことではない。クールジャパンと呼ばれる日本の竹細工・工芸品の海外展開だけでは日本の竹材を十分に消費することなどできない。

そのため竹材の新しい用途開発や竹を用いての新素材開発など新技術を活用する努力が各方面で精力的に行われているようなので、未来はそう暗くはないはずだ。

しかし、これらの努力が結実するにはまだ時間を要しそうだ。その間に竹材生産者の高齢化も進んでしまい、荒廃竹林がさらに増え、近隣の耕作地や植林した森林をも襲いかねない。もっとスピード感をもって実行できる対策・政策はないものだろうか?

時代は、持続可能な社会を目指そうという世界のコンセンサスが得られている時代になった。

SDGsSustainable Development Goals)の一環としての活動と捉え、かつて竹材がプラスチック等の代替材に置き換えられたのとは逆の処置を国家の政策として実行できないものだろうか。

既得権益者の猛烈な反対も当然あるだろう。しかしながら、竹材の積極的活用によって、竹材生産者の意欲と生活を向上させ、国内自給率100%を達成する。

荒廃竹林の整備によって日本の国土を守り、プラスチックの消費を減らすことによって地球環境を守るという方向性は今の時代に合致した政策であると私は思うが、皆さんはどう思われますか?


【参考資料】
姫路城西御屋敷跡庭園 好古園【公式サイト】
竹の不思議な生態と構造:研究ピックアップ|近畿大学農学部
特集1 竹のおはなし(1):農林水産省
特集1 竹のおはなし(2):農林水産省
特集1 竹のおはなし(3):農林水産省
特集1 竹のおはなし(4):農林水産省
特集1 竹のおはなし(5):農林水産省
竹の利活用推進に向けて(平成 30年10月)林野庁(pdf