はじめに
マンリョウ(万両)は、その美しい花と果実で、特に冬の季節に特別な魅力を持つ樹木である。その名前が縁起が良いとされ、センリョウ(千両)などととも正月の縁起物としても用いられている。
センリョウ(千両)は、センリョウ科に属し、樹高は50~80cmの低木で、葉の上にまとまって実がつく。実の大きさは直径5~7mmで、晩秋に赤く熟する。花は黄緑色で、6月頃に咲く。
一方、マンリョウ(万両)は、サクラソウ科ヤブコウジ属に属し、樹高は50~100cmの低木で、葉の下に鈴なりに実がつく。実の大きさは直径6~8mmで、晩秋から冬にかけて赤く熟する。
このようにセンリョウとマンリョウは、どちらも一般的に赤い実をつけ、名前や形も似ているが、実の大きさや実の付き方に違いがある。本稿では、マンリョウについて記することにする。
マンリョウ
マンリョウは、サクラソウ科ヤブコウジ属の常緑小低木で、日本を含む東アジアからインド、東南アジアの温暖な地域に広く分布している。マンリョウは、その美しい赤い果実と緑色の葉が特徴で、特に冬に熟する。
マンリョウの樹高は約1mで、葉は互生し、葉身は長楕円形で、葉縁が波打ち波状の鋸歯がある。花期は夏(7月頃)で、白色の花を咲かせる。そして、10月ごろに赤く熟した果実は、翌年2月ごろまで枝に見られる。
マンリョウは、一般的には美しく可愛い赤い実をつけることで知られているが、この赤実のマンリョウの変種として白実のマンリョウが知られている。
白実のマンリョウは、実が熟すと白くなることが特徴であり、その他の特徴は赤実のマンリョウと全く同じである。赤実と白実のマンリョウと並べて紅白となり、お正月の縁起物として切り花がよく使われている。
マンリョウは、半日陰と水はけの良い場所を好む植物である。鉢植えのマンリョウは市販の園芸用培養土で問題なく育てられる。
マンリョウの楽しみ方
マンリョウは四季を通じて楽しむことができる植物である。
春の観賞
春は新芽が出始める時期で、鮮やかな緑色の葉が目を楽しませてくれる。
夏の観賞
夏には白い花を咲かせる。花は小さいが、その存在感はマンリョウの魅力の一部であると言える。
秋の観賞
秋には花が終わり、実が形成され始める。この時期から実が赤く(白実マンリョウでは白く)熟し始める。マンリョウの見た目が一層鮮やかになる。
冬の観賞
冬はマンリョウが最も美しい時期と言える。赤い実(白実マンリョウの場合は白い実)が熟し、緑色の葉とのコントラストが美しい。実は12月から3月頃まで楽しめる。
以上のように、マンリョウは四季を通じてさまざまな楽しみ方がある。その美しい実と緑色の葉は、特に冬の季節に特別な魅力を持つ樹木とされる。マンリョウは、お正月の飾り物(縁起物)として親しまれている。
マンリョウの育て方
適切な植え場所
マンリョウは、自生地では常緑樹林の林床に生えているので、栽培するには、明るい日陰で強風が当たらない場所が適している。また、土壌は極端に乾燥せず、腐植質に富んだ水はけのよいものが適している。
マンリョウは、強い日差しが苦手な植物で、直射日光が当たり続けると葉焼けを起こしたり、観賞価値のある実が付きにくくなる。日陰で育てるか、少し日が当たる程度の場所で育てると良い。また、寒さに弱いので、鉢植えの場合、厳冬期は室内に取り込むことが推奨される。
用土
鉢植えの場合、根腐れを起こしやすいので、水はけのよい用土で育てる。赤玉土1、鹿沼土1、腐葉土1の割合で配合した、水はけのよい用土を使うと良い。
植えつけ・植え替え
露地植えの場合は、直射日光が当たらない日陰で水はけがよく、極端に乾燥しない場所に植えつける。適期は4~5月である。
鉢植えでは、2~3年に1回、4~5月に一回り大きな鉢に植え替える。斑入り品種などは、成長が遅いため、鉢に根が回っていなければ、同じ大きさの鉢でも構わない。細根が少ないので、根を切らないように注意する。
水やり
露地植えの場合、植えつけからしばらくの間は、土が乾いたら水を与えるが、その後は必要ない。
鉢植えの場合は、極端に土を乾燥させないようにし、土の表面が乾いたら水を与える。
肥料
露地植えと鉢植えのどちらの場合も、肥料はほとんど必要ない。苗を購入して、株を大きくしたい場合は、2月中旬から3月に緩効性化成肥料などを少量施せばよい。
剪定
剪定はする必要がない。
増やし方
- さし木
- 適期は6月
- 3cmほどの長さに枝を切り、さし木用土にさす
- 風が当たらない日陰で育てる
- 水を切らさないように管理する
- 約3か月で発根する
- タネまき
- 秋から冬に熟した果実を採取する
- 果肉を水洗いして完全に取り除き、タネだけにする
- タネは乾燥させると発芽能力がなくなるので、赤玉土などにすぐにまく
- 戸外に置き、土を乾かさないように管理すれば、春に発芽する
病虫害対策
病気は特にない。害虫としては、ごくまれにカイガラムシがつくことがある。春の幼虫の発生期に薬剤を散布して、防除すればよい。
あとがき
冬に縁起物とされる植物にはいくつかあるが、主な植物として下記のものがよく知られる存在である。
- 松(マツ)
- 「不老長寿」を象徴し、お正月には松を飾る習慣がある
- 竹(タケ)
- 「繁栄」を象徴し、お正月の飾りつけや祭事に使用
- 梅(ウメ)
- 「喜び」を象徴し、早春から香りの良い花を咲かせる
- 南天(ナンテン)
- 「災難を避ける」を象徴し、お正月飾りなどに使用
- 千両(センリョウ)
- 「富」を象徴し、お正月に床の間に飾られる縁起植物
- 万両(マンリョウ)
- 「富」を象徴し、お正月に床の間に飾られる縁起植物
これら植物は、その美しい花や実、またはその名前や伝説などから縁起が良いとされ、特にお正月などの祝い事に使われる。
赤実マンリョウと白実マンリョウは、同じサクラソウ科ヤブコウジ属に属する植物であるが、それぞれ異なる品種として存在する。白実マンリョウは、赤実マンリョウの変種であり、白実マンリョウが赤実マンリョウから直接生まれることはない。つまり赤実マンリョウの実から育てた場合、その実は赤いままであり、同様に白実マンリョウの実から育てた場合、その実は白いままであるとされる。
ところが、私の庭では赤実マンリョウだけが露地植えされており、その実が落ちて発芽したものを鉢植えにして育てていたら、今年はじめて白い実をつけていた。最初はこの白い実が熟して赤い実なるものとばかり思っていたのだが、いつまで経っても白いままであり、赤くなる気配は一向にない。
野鳥がどこかから運んできたものだろうかと思ってみたが、実はマンリョウの実は野鳥にはあまり人気がない。私の庭のナンテンやピラカンサスの実は野鳥、特にヒヨドリによってすぐに食べつくされてしまうが、マンリョウの実だけはいつまでも手付かずで残こされている。したがって、白実マンリョウが野鳥によって運ばれてきたという説にはあまり説得力を感じない。
一般的には、白実マンリョウの実を植えるか、白実マンリョウの苗木を入手する以外に白実マンリョウを育てることができないとされている。しかし、私はそのどちらも実施した記憶はない。
現実として白い実をつける白実マンリョウが2本、鉢植えで育っていることが私の庭における「不思議な現象」になっている。彼らは一体どこから来たのだろうか?
【参考資料】
中山草司著;庭師の技術がわかる庭木の手入れ(1993年刊、大泉書店) |
船越亮二監修;庭木の手入れ12か月(1993年刊、主婦と生活社) |