はじめに
写真撮影は、自分の目で見た世界を表現する楽しい趣味である。デジタルカメラが普及した今日では誰でもが簡単に写真を撮ることができる。今まで写真をあまり撮ったことがない人でもスマホで簡単に写真が撮れている時代となった。私たちシニア世代が写真撮影を趣味に加えないという選択肢はないのではないかとさえ私は思う。
趣味のアマチュア写真家を目指す者は、写真の撮影技法を学習するに際し、写真の世界で使われている専門的な用語については理解しておく必要がある。そして最低限の専門用語については覚えておかなければならない。
しかしながら、かつての銀塩フィルムで撮影して時代と異なり、現在はデジタルカメラで撮影できる時代である。ほとんどの撮影操作はカメラの本体機能で自動的に調整してくれるので、私たちは被写体にカメラを向け、構図とアングルだけに気をつけてシャッターを押すだけで良い便利な時代に生きている。
だから専門用語を理解しなくても写真を撮る分には問題ないのが実情ではある。しかし、より良い写真を撮ろうとすると、どうしてもカメラの仕組みや被写体の撮影状態についての知識が必要となってくるものである。
本稿では、初心者が魅力的な風景写真を撮ろうとする際に、知っておくと役立つ基本知識とスキルを紹介したいと思う。
趣味のアマチュア写真家を目指す初級者の一人として、私もデジタルカメラを用いた写真撮影技術について一緒に学んでいきたいと思う。趣味のアマチュア写真家を目指す初級者にとって、知っておくと役立つ撮影技術を集めてみた。きっと何か一つぐらいはお役に立つはずである。アマチュア写真家の端くれとして、45年を超える経験からもそのように私は確信する。
風景写真
風景写真は、自然の美しさやその場の空気感を一枚に閉じ込める魅力的なジャンルである。しかしながら、いざ風景写真を撮ろうとすると「なんだか平坦な写真になってしまう・・・」なんてこともよく起きる。
魅力的な風景写真を撮影するためには、いくつかのポイントがある。順を追って、下記のようなポイントを説明したい。
機材の基本セット
風景写真の撮影に必要な機材は意外とシンプルである。
- 広角レンズ:
- 広がりのある風景をダイナミックに撮れる
- 三脚:
- ブレを防ぎ、構図をじっくり決められる
- NDフィルター:
- 昼間の長時間露光や水の流れを滑らかに表現したいときに便利である
レンズの選択
風景写真を撮影するためには、広い範囲を一度に撮影できる広角レンズが最適である。広角から中望遠をカバーするズームレンズを装着している場合は、広角側にすればよい。
撮影モードの設定
風景写真の撮影では「絞り優先モード(A)」が使いやすい。
- 低いISO
- できるだけ低いISO設定を使用する
- ノイズを減らし、より鮮明な写真が撮れる
- ISO100〜200にすればノイズを抑えてクリアな画質になる
- 絞り設定
- F8〜F16の絞りを使うことで、風景全体にピントが合った写真が撮れる
- F値をやや高め(F8〜F11)にすれば、全体にピントが合いやすくなる
- シャッター速度
- 三脚を使用してマニュアル操作で調整する場合もある
- 長時間露光で雲や水の動きを表現することができる
構図とフレーミング
構図を意識するだけで、写真の完成度がグッと上がる。
- 三分割法(三分割構図)
- 画面を縦横に3分割して、被写体を交点に配置
- 写真を水平・垂直に三等分し、交点に主要な被写体を配置することでバランスの取れた写真になる
- リードインライン
- 道や川など自然のラインを活用して視線を誘導することで、写真に深みと動きを与える
- 前景・中景・背景の三層構造
- 奥行きと立体感を演出できる
- 主役を明確に
- 何を見せたいかを意識して、視線を誘導する
撮影テクニック
- 長時間露光
- 滝や川、雲の動きを撮影する際に長時間露光を使うと、滑らかな流れを表現できる
- パノラマ撮影
- 複数の写真をつなげて広い風景を撮影する方法もある
- 多様な天候
- 晴天だけでなく、曇りや雨、霧の中で撮影することで、異なる雰囲気の写真が撮れる
- 季節感
- 季節の変化を取り入れることで、風景の多様性と美しさを引き出す
- ゴールデンアワー
- 日の出直後や日没直前の時間帯は、柔らかい光と美しい影ができ、風景写真に最適である
- 特に、湖沼や紅葉などの撮影には陽光の方角が重要となるので写真撮影の時間帯がポイントとなる
- 逆光撮影
- 被写体の後ろから光を受けることで、シルエットやドラマチックな効果を演出する
風景写真の撮影に適した時間帯
風景写真は、「光」が命であると言っても過言ではない! 撮影する時間帯によって写真の印象がガラッと変わる。
- ゴールデンアワー(朝日・夕日):
- 柔らかくてドラマチックな光が差し込む時間帯
- ブルーアワー(日の出前・日没後):
- 幻想的で静かな雰囲気が出せる
- 日中の順光・逆光:
- 鮮やかな色彩やシルエットを活かした表現ができる
天候とロケーションの読み方
風景写真の撮影は、基本的に「自然まかせ」になることが多い。特に旅行先での風景写真の撮影は運次第である。だからこそ、柔軟な対応が大切である!
- 現地の天気予報をチェック
- 雲の動きや光の入り方を予測しよう!
- 現地の下見やGoogleマップ活用
- 撮影ポイントや太陽の位置を事前に確認するとよい
- 予定に縛られない柔軟な対応をする
- その日のベストな条件に合わせて動くのがコツである
あとがき
風景写真は、自然との対話みたいなものである。構図や光を味方につけて、自分だけの一枚を切り取ってみるのは実に楽しい。
その理由は、風景写真はただ景色を撮るだけではなくて、自分の感性と自然が響き合うような体験、あるいは自然と心を通わせるような体験であるからだと思う。
言葉で説明するのは難しいが、例えば、下記のような体験ができると私は思っている。
1. 自然との対話ができる
風景写真を撮ることで、その場所の空気や光、音まで感じ取れるようになる。特定の撮影地に何度も通ううちに「土地勘」が生まれて、その場所がどんどん好きになっていく。まるでその風景の語り部になるような感覚が得られることもある。
2. 一瞬の光を切り取る楽しさ
朝焼けや夕暮れ、霧や雨上がりの光など自然は刻々と表情を変えるから、同じ場所でも毎回違う写真が撮れる。その一瞬を逃さずにシャッターを切るのが、風景写真撮影のスリルであり、喜びでもある。
3. 世界そのものが被写体になる
風景写真では、目の前に広がるすべてが被写体となる。山、海、空、木々、雲などどこにでも美しさが潜んでいる。それをどう切り取るかは私たち撮影者次第である。自己満足であるかも知れないが、まさに「自分の世界観を表現する」って感じになる。
4. 思い出を美しく残せる
旅先や日常の風景を写真に残すことで、あとから見返したときにその時の感情や空気感までがよみがえる。写真って、時間を閉じ込める魔法みたいな玉手箱だと思うことがある。
風景写真を数多く撮影して、腕を上げていきたいと思う。