はじめに
終活という用語をいつ頃かよく耳にするようになり、シニア世代となった昨今、私も他人事のようには思えなくなっている。
しかしながら、終活という用語には明確な定義はないらしく、今一つ釈然としない。一般的に私たちがよく耳にする終活は、葬儀や墓の準備だけでなく、より広義的な意味で人生を見つめ直す時間として捉えられているようだ。
終活を「人生の終わりのための活動」と捉えるか、「人生を見つめ直すための活動」と捉えるかで、やるべき時期とやるべき優先事項も異なってくる。私は、どちらかと言えば、後者の「人生を見つめ直すための活動」の良き機会と捉えたい。
後者の立場で、終活を捉えるならば、終活はいつから始めてもよいらしい。しかし、少なくとも自分に判断能力があるうちに始める必要があると思う。何らかの契約が必要な場合には判断能力が欠かせないからである。
もし終活に老後資金を貯めることをも含めようとするならシニアになってからでは遅いかも知れない。つまり終活で何をするかによって開始時期も異なってくると思う。
公益財団法人地方経済総合研究所が実施した意識調査結果によれば、還暦を前に終活を意識し始め、還暦を過ぎた頃に終活を実際に始める人が多いという。すなわち、私たちシニア世代が終活を始める「適齢期」と言えなくもない。
本稿では、終活とは何か、終活として何かから始めれば良いかにについて一緒に考えていきたいと思う。
終活としての具体的な活動
私たちシニア世代は、具体的に終活として何から始めれば良いのだろうか。終活のための活動としてリストに取り上げられているのは、次の5つが一般的には多いという。
- 断捨離
- 保有財産の整理(棚卸)
- 終末期の方針
- 遺言書の作成
- エンディングノートの作成
断捨離をするには体力が必要であるから、やはり元気な内に終活は始めた方が良いかも知れない。また、終活は必ずしも人生の「終着駅」を意味しているわけではなく、「人生の後半戦に向けて良いスタートを切る」ためであるならば「乗り換え駅」と見做すこともできるはずである。
断捨離
断捨離とは、まず家の中にあるものを「必要なもの」と「不要なもの」に分け、不要なものを捨てて家の中を片付けていくことを指す用語である。不要なものや使わないものを捨てれば、生活スペースが快適になるほか、自分な亡くなった後、家族の負担を減らせることができる。
断捨離では、下記のようなものを中心に仕分けし、不要であると判断した場合は、処分(廃棄)を検討することになる。
- 書籍
- 家電
- 生活雑貨
- 衣服
- 家具
- 装飾品
- 想い出の品(写真、アルバム、書簡、収集品など)
いつか使うであろうと思っていても、何年も眠ったままのものが結構多いものである。一軒家でスペースがあると、部屋がそんな不要な物の物置き部屋になっていることがある。断捨離によって不要な物は一掃したいと思う。但し、断捨離には体力と気力が必要なので、体力と気力があるうちに始めて、一気呵成に進めていく必要がありそうである。
保有財産の整理(棚卸)
シニア世代の終活にあたって最重要となるのが、保有財産の整理(棚卸)ではないかと思う。財産関連は残された家族が困らないためにも、少なくとも下記のような情報を中心に整理する必要があると思う。
- 不動産
- 有価証券(取引のある証券会社・証券口座)
- 銀行口座やクレジットカード
- 年金口座
- 生命保険
所有している資産によっては相続の準備をしたり、事前に売却を検討したりする必要も出てくるだろう。手続きに必要なものや情報の保管場所は、事前に家族に伝えておくべきであると思う。
終末期の方針
人生100年時代を迎えた今日では、終活は死後のことだけではなく、長生きをしてしまうリスク(?)もある。健康で長生きする分には本人をはじめ家族も嬉しいはずである。しかし、そうではない場合の方が多いのが現実である。そんな最悪の事態をも考慮した上で、生前の希望もまとめておくことが大切であると思う。
医療や介護に関する方針や希望を書き残したり、家族に伝えたりしておくと、いざというときに納得がいく判断ができるのではないかと思う。例えば、私が不治の病になった際、延命治療を希望するのかしないのか、あるいは認知症を発症した際に介護施設に入りたいのか入りたくないのかといったことなど私自身が判断できなくなってしまう。そのような状況では、私に代わって家族が判断しなければならない。そんな事態を想定し、私自身が事前に判断を下しておけば家族は悩む必要がないはずである。
私の死後、残された家族が葬儀や墓を準備することになるだろうから、これらのことも終活をきっかけに、私が元気なうちから家族と話し合ったりしておくと良いかも知れない。
遺言書の作成
幸か不幸か私には相続トラブルを引き起こすような財産はないので、必ずしも遺言書を作成する必要はないと思う。
しかしながら、世の中には相続トラブルが原因で残された家族間に不和が生じることもあるようだ。そんな不毛な相続トラブルを回避するために、必要に応じて、遺言書を作成しておくのも手段の一つと言えよう。法的拘束力がある遺言書を作成しておけば、自らの意思を反映できるうえ、相続トラブルの回避にも繋がるというものである。一般的に、遺言書の種類と特徴は、下表のとおりである。
種類 | 作成者 | 保管場所 |
---|---|---|
自筆証書 | 被相続人本人 が自筆で作成 | 自宅 |
公正証書 | 公証役場で 公証人が作成 | 公証役場 |
秘密証書 | 被相続人本人 が作成し、封を して公証役場に 差し入れる | 公証役場 |
種類 | 長所 | 短所 |
---|---|---|
自筆証書 | ・自分で作成 ・費用が不要 ・修正可能 | ・要件を満たさない場合、遺言が無効になるリスクがある ・自分で保管する場合、 書き換えのリスクがある (法務局でも保管できる) |
公正証書 | ・無効のリスクがない ・公証役場で保管するため、書き換え、紛失リスクがない | ・証人が2人以上必要 ・公証人に遺言内容が知られる ・作成に時間と費用がかかる |
秘密証書 | ・遺言内容を他人に知られるリスクがない ・パソコンや代筆で作成可能 ・費用が公正証書より安い | ・証人が2人以上必要 ・要件を満たしていない場合、遺言が無効になるリスクがある ・自分で保管する必要があるため、紛失のリスクがある |
最も自由度が高いのは自筆証書遺言であるが、無効になるリスクもある。そのリスクを回避したいのであれば、公正証書遺言を作成すればとよい。不安があれば、専門家に相談すれば良い。
エンディングノートの作成
エンディングノートとは、人生の終わりに備えて、上述した情報の整理や記録をする際に役立つはずである。遺言書とは異なり、エンディングノートに法的拘束力はなく、内容や書き方にも決まりがない。
エンディングノートには、さまざまな種類のものが販売されているため、自分が使いやすいと感じられるものを選ぶとよい。
終活は、エンディングノートを作成しながら進めるのが効率的ではないだろうか。
あとがき
よく耳にするようになった終活という言葉は、マスメディアがつくった造語であるらしい。2009年頃の週刊誌の記事のタイトルに使われたのをきっかけとされる。その後、さまざまなメディアで「人生を有意義に過ごすための活動」として終活が紹介されるようになったという。終活という言葉が広く浸透した背景には、少子化や核家族化といった現代の日本が抱える社会問題的な影響も十分に考えられる。終活は、頼れる家族がいない人や残された家族に負担をかけたくない人の気持ちもあって、大きな関心を集めていると言えるだろう。
本稿では、自分の終活を進める場合について取り上げた。一方で親の終活を進める場合もある。私の場合、両親は既に他界してしまっているので、両親の終活を考える機会を逸してしまった。むしろ、今は自分自身の終活を真剣に考えるべき時を迎えている。
終活を始める時期に決まりはなく、未来のために行動するのに早すぎることはないという。しかしながら、残された時間の多寡によって真剣度は自ずと異なるはずである。やはり、私たちシニア世代の方が残された時間が少ないことによる現実味が高い分、終活に対する真剣度は高いはずである。
私たちシニア世代の終活において、何から始めればよいかを困った場合には、第一歩としてエンディングノートを作成することから始めれば良いと私は思っている。その理由は、残された家族の負担を減らす、死に対する不安解消、遺産相続のトラブルを回避できるなどのメリットがあると思うからである。しかもエンディングノートは、遺言書とは異なり、今後の方針や希望が変わったときにはいつでも容易に加筆・修正していけるので便利である。
特に、私たちシニア世代は、自分の葬儀やお墓などの方針を検討
し、そして何よりも自分の終活について家族へ報告しておくことが大切である。