はじめに
静かな池の畔に立ち、風もない水面を眺めてみると周囲の景色が映っている。まるで鏡のような正確さだ。私はこのような景色を写真に撮るのが好きである。
すこしでも風があり水面が動いていると綺麗な写真にはならない。陽光の角度も影響する。すべての条件が満たされた時にはじめてシャッター音と共に一枚の写真が切り取られていく。
成立要因別に分類できる天然湖沼
天然湖沼は、その成立要因によって分類することができる。
日本列島の中央部はフォッサマグナ(中央地溝帯)上にあるので、地殻変動、すなわち断層によって生じた天然湖沼、構造湖が存在する。
また、日本は火山国でもあるので、火山活動で出来た天然湖沼、いわゆる火山湖(volcanic lake)も多い。火山湖は、その規模によって火口湖(crater lake)とカルデラ湖(caldera lake)に分類できる。
溶岩などで河川が堰き止められてできた堰止湖(dammed lake)も日本では多いようだ。
さらには日本は島国でもあるので、海岸線には海跡湖(inland sea‐lake)や潟湖(lagoon)が形成されることも多い。
上述のように日本では成立要因の異なる天然湖沼を観光できるのは国内旅行の楽しみの一つである。
北海道でお勧めの天然湖沼
調べてみて分かったことの一つは、北海道には規模の大きな天然湖沼が多くあるということだ。観光名所になっている所も多い。
屈斜路湖
名 称 | 屈斜路湖 |
所在地 | 北海道川上郡弟子屈町屈斜路 |
Link | 屈斜路湖|【公式】北海道の観光・旅行情報サイト |
摩周湖
名 称 | 摩周湖 |
所在地 | 北海道川上郡弟子屈町弟子屈原野 |
Link | 摩周湖|【公式】北海道の観光・旅行情報サイト |
知床五湖
知床半島の背骨を形作っているのは羅臼岳(1661m)、斜里岳(1547m)、海別岳(1419m)、硫黄山(1562m)など 1400m~1600m級の知床連山と呼ばれる山々である。
知床五湖(北海道斜里町)は、知床連山を背景に原生林の中にある5つの湖である(一湖から五湖までの名前がつく)。自然豊かな世界自然遺産・知床を象徴する景勝地として知られている。
知床連山や原生林を水面に映す風景は見飽きることはない。多くの野生動物の生息地でもあり、ヒグマの爪痕など知床の自然の豊かさを実感できる場所でもある。
知床五湖には高架木道と地上遊歩道があるが、一湖以外の湖を観るなら地上遊歩道を通らなければならない。ヒグマの出没情報があれば立入禁止になるのでヒグマ次第・運次第だ。
知床半島は、人口よりもヒグマの生息数の方が多いと言われている。私は幸か不幸か、ヒグマに遭遇することはなかった。
名 称 | 知床五湖 |
所在地 | 北海道斜里郡斜里町岩尾別 |
Link | 知床五湖|知床斜里町観光協会 |
白金青い池
白金青い池(北海道上川郡美瑛町白金)は、水面が青く見える不思議な池である。十勝岳の防災工事の際、堰堤にたまった水が、不思議なほど青い色をたたえ、立ち枯れのカラマツとあいまって幻想的な風景となり、いつしか「青い池」と呼ばれるようになったと言われている。
確かに、立ち枯れたカラマツが幻想的な雰囲気を醸し出している。風のない良く晴れた日の午前中が写真撮影におけるシャッターチャンスだ。季節や天候によって様々な青い色が楽しめるという。
白金青い池が青くなる理由は、付近の湧水と関係があるという。
アルミニウムを含んだ湧水が美瑛川の河川水と混じることによってコロイドが生成し、そのコロイド粒子に太陽光が当たると青色の透明光が加わるので青く見えると言われている。青くて幻想的な美しい風景は太陽と自然の協働作業らしい。
名 称 | 白金青い池 |
所在地 | 北海道上川郡美瑛町白金 |
Link | 白金青い池 :一般社団法人 美瑛町観光協会 |
オンネトー
オンネトー(北海道足寄町)は、阿寒摩周国立公園の最西端に位置し、雌阿寒岳の麓にある周囲2.5kmの美しい湖である。
天候や見る角度によって湖の色が変わる神秘的な湖で、私の好きな湖である。
湖畔周辺には原生林の間に整備された散策路があり、大自然を満喫できるのもこの湖を気に入っている点である。
天気の良い日には、ここでゆっくりと時間を過ごしたい。
名 称 | オンネトー |
所在地 | 北海道足寄郡足寄町茂足寄 |
Link | オンネトー|【公式】北海道の観光・旅行情報サイト |
阿寒湖
名 称 | 阿寒湖 |
所在地 | 北海道釧路市阿寒町阿寒湖温泉 |
Link | 阿寒湖|【公式】北海道の観光・旅行情報サイト |
塘路湖
塘路湖【とうろこ】は、北海道東部の標茶町にある淡水湖で、釧路湿原国立公園に含まれる。
名 称 | 塘路湖 |
所在地 | 北海道川上郡標茶町塘路原野沼ノ上 |
オコタンペ湖
オコタンペ湖(千歳市奥潭)は、恵庭岳の西山麓にある周囲5 km、最大深度21.1 mの堰き止め湖で、天候、見る角度や時間帯により、湖水の色がエメラルドグリーンやコバルトブルーなどに見えるという。
オコタンペ湖は道道78号側にある展望台から眺めることができる。湖は、鬱蒼と繁る針葉樹と落葉広葉樹の原生林(針広混交林)に囲まれている。森林生態系保護地域に指定されているという。
名 称 | オコタンペ湖 |
所在地 | 北海道千歳市奥潭 |
一度は訪ねたい北海道内の天然湖沼一覧
湖沼名 | 成立要因 | 所在地 | 備考 |
---|---|---|---|
阿寒湖 | カルデラ湖 | 北海道 | マリモ生息地で有名 |
屈斜路湖 | カルデラ湖 | 北海道 | 日本一のカルデラ湖 |
支笏湖 | カルデラ湖 | 北海道 | 貯水量日本2位 最深部日本2位 |
洞爺湖 | カルデラ湖 | 北海道 | |
摩周湖 | カルデラ湖 | 北海道 | 透明度日本1位 最深部日本2位 |
サロマ湖 | 潟湖 | 北海道 | 日本最大の汽水湖 |
知床五湖 | 堰止湖 | 北海道 | |
オンネトー | 堰止湖 | 北海道 | 個人的第1位の湖沼 |
クッチャロ湖 | 海跡湖 | 北海道 | |
春採湖 | 海跡湖 | 北海道 | 汽水湖 |
能取湖 | 海跡湖 | 北海道 | 汽水湖 |
風蓮湖 | 海跡湖 | 北海道 | 汽水湖 |
塘路湖 | 海跡湖 | 北海道 | 淡水湖 |
(太字は訪ねた経験があり、お勧めの天然湖沼であることを示す)
(参考:ウィキペディア Wikipedia)
北海道以外でお勧めの天然湖沼
河口湖【山梨県】
わずかでも湖面が揺れていると綺麗な逆さ富士の写真は撮れない。随分と粘ってみたがこの日は成功しなかった。
名 称 | 河口湖 |
所在地 | 山梨県南都留郡富士河口湖町 |
Link | 富士河口湖町公式ホームページ |
みくりが池【富山県】
みくりが池(富山県立山町)は、約1万年前にできた周囲約630m、水深約15mの火山湖である。北アルプスで最も美しい火山湖といわれている。
室堂ターミナルから舗装された遊歩道を歩いていくと美しいみくりが池が姿を現す。そして紺碧の湖面に雄大な立山を映し出してくれる。みくりが池は室堂のシンボルとなっている。
名 称 | みくりが池 |
所在地 | 富山県中新川郡立山町芦峅寺ブナ坂外11国有林 |
Link | 【公式】みくりが池温泉:アクセス |
宍道湖【島根県】
名 称 | 宍道湖 |
所在地 | 島根県松江市 |
Link | 宍道湖 | しまね観光ナビ|島根県公式観光情報サイト |
中海【島根・鳥取県】
中海【なかうみ/なかのうみ】は、島根県松江市・安来市と鳥取県境港市・米子市にまたがる湖である。
日本海に開いた湾の入り口が、砂州によって塞がれてできた湖(潟湖)と言われている。
東は境水道を通じて日本海(美保湾)と、西は大橋川を通じて宍道湖と繋がるユニークな湖である。
名 称 | 中海 |
所在地 | 島根県松江市・安来市、 鳥取県米子市・境港市 |
Link | 中海 | しまね観光ナビ|島根県公式観光情報サイト |
由布院・金鱗湖
【大分県】
由布院(大分県由布市湯布院町)は、豊後富士とも称される由布岳の麓に広がる温泉地である。
由布岳の盆地で5つの清流が流れ込む湖が金鱗湖で、自然あふれるのどかな観光地である。明治初期の儒学者・毛利空桑が、湖で泳ぐ魚の鱗が夕日で金色に輝くのを見て金鱗湖と名付けたとされる。
金鱗湖には清水と温泉が流れ込んでいると言われ、年間を通じて水温が高いために秋から冬にかけての早朝には湖面から湯気が立ち上る幻想的な光景を見ることができるという。その霧が、由布院盆地名物の朝霧の源であるとも言われる。
湖の周りには散策路が整備されており、魚や水鳥が泳ぐ姿が眺められる。朝霧に包まれた幻想的な金鱗湖の姿を撮影したいと思って訪ねたが、その機会は次回に持ち越しである。
名 称 | 由布院・金鱗湖 |
所在地 | 大分県由布市湯布院町 |
Link | 由布市公式ホームページ » 金鱗湖 金鱗湖 | 大分県の観光情報公式サイト |
一度は訪ねてみたい天然湖沼一覧
(北海道内以外)
湖沼名 | 成立要因 | 所在地 | 備考 |
---|---|---|---|
十和田湖 | カルデラ湖 | 青森県 | 行きたい湖沼第2位 |
田沢湖 | (不明) | 秋田県 | 日本最深 |
八郎潟 | 海跡湖 | 秋田県 | |
長沼 | 堰止湖 | 宮城県 | |
大鳥池 | 堰止湖 | 山形県 | |
御釜 | 火口湖 | 山形県 | 蔵王のシンボル |
五色沼 | 火口湖 | 福島県 | |
秋元湖 | 火口湖 | 福島県 | |
猪苗代湖 | 構造湖 | 福島県 | |
尾瀬沼 | 火口湖 | 福島・群馬 | |
小野川湖 | 火口湖 | 福島県 | |
桧原湖 | 火口湖 | 福島県 | |
霞ヶ浦 | 海跡湖 | 茨城県 | 面積日本2位 |
中禅寺湖 | カルデラ湖 | 栃木県 | 行きたい湖沼第1位 |
榛名湖 | 火口湖 | 群馬県 | |
丸沼 | 火口湖 | 群馬県 | |
諏訪湖 | 構造湖 | 長野県 | |
青木湖 | 構造湖 | 長野県 | 仁科三湖の一つ |
中綱湖 | 構造湖 | 長野県 | 仁科三湖の一つ |
木崎湖 | 構造湖 | 長野県 | 仁科三湖の一つ |
白馬大池 | 堰止湖 | 長野県 | |
大正池 | 堰止湖 | 長野県 | |
河口湖 | 堰止湖 | 山梨県 | 富士五湖の一つ |
西湖 | 堰止湖 | 山梨県 | 富士五湖の一つ |
精進湖 | 堰止湖 | 山梨県 | 富士五湖の一つ |
本栖湖 | 堰止湖 | 山梨県 | 富士五湖の一つ |
山中湖 | 堰止湖 | 山梨県 | 富士五湖の一つ |
浜名湖 | 海跡湖 | 静岡県 | 汽水湖 |
ミクリガ池 | 火口湖 | 富山県 | 個人的第2位の湖沼 |
琵琶湖 | 構造湖 | 滋賀県 | 面積・貯水量 共に日本最大 |
余呉湖 | 構造湖 | 滋賀県 | |
阿蘇海 | 海跡湖 | 京都府 | 天橋立による内海 |
久美浜湾 | 海跡湖 | 京都府 | |
湖山池 | 海跡湖 | 鳥取県 | |
宍道湖 | 海跡湖 | 島根県 | |
中海 | 海跡湖 | 島根・鳥取 | 汽水湖 |
金鱗湖 | 堰止湖 | 大分県 | |
池田湖 | カルデラ湖 | 鹿児島県 | 九州最大 |
大池 | カルスト湖 | 沖縄県 |
(太字は訪ねた経験があり、お勧めの天然湖沼であることを示す)
(参考:ウィキペディア Wikipedia)
天然湖沼についてより詳しく知ろう!
湖沼の定義
日本各地には有名な湖沼が点在していており、そこが観光地になっていたりする。
ちなみに環境省の定義によれば、湖【みずうみ】は四面を陸地でかこまれて中に水をたたえたものであり、池や沼などより大きく中央部に沿岸植物の侵入を許さない深度(5~10m以上)を持つものとされている。
一方、沼【ぬま】は深度5m以下で、底は泥ぶかく、クロモやフサモなどの沈水沿岸植物が生えている湖沼と定義されている。
しかし、両者はあまり厳密には区別されておらず、総称としての湖沼でこと足りているようだ。
池の定義
一方、池(いけ)は、くぼ地に自然に水がたまった所または地面を人工的に掘って水をためた所で、通常、湖沼より小さいものをいう(引用:デジタル大辞泉)。
特に、人工的に作られたものを池と呼ぶようである。そのためか、河川を堰き止めて造成したダム貯水池や造成池である人造湖は池等に区分される。
天然湖沼の種類
天然湖沼は、その成立要因によって分類することができる。
構造湖(tectonic lake) |
地殻の断層運動によって地面が陥没してできた湖。フォッサマグナ(中央地溝帯)上にある湖沼であるので、地域的にも限定されている。 【例】 琵琶湖、諏訪湖、仁科三湖など |
火口湖(crater lake) |
火山噴火後の火口に水が溜まってできた湖沼。【例】五色沼など |
カルデラ湖(caldera lake) |
火山噴火後にカルデラが形成され、そこに水が溜まってできた湖沼。通常は、火口湖より規模が大きく、水深が深い場合もある。 【例】 摩周湖、十和田湖など |
堰止湖(dammed lake) |
大規模な地滑りや、火山噴火に伴う山体崩壊などによって、河川が堰き止められてできた湖沼。我が国では最も数が多いという。 【例】オンネトー、大鳥池、白馬大池など |
海跡湖(inland sea‐lake) |
かつては海であった場所が、地面の一部が隆起したなどの要因で海から切り離された湖沼。【例】霞ヶ浦、八郎潟、浜名湖など |
潟湖(lagoon) |
潮流などによって砂が運ばれ、砂洲や沿岸洲が伸びた結果、これに海の一部が閉じ込められてできた湖沼。淡水中に海水が侵入している湖沼を汽水湖、または塩水湖ともいう。海岸付近に存在する潟湖は、ほとんどがこの汽水湖となる。【例】サロマ湖など |
川跡湖(flowage lake) |
河川の流路が自然に変化した結果、残された湖沼。河川が蛇行している場所で見られる三日月湖。 |
カルスト湖(karst lake) |
カルスト地形とは、石灰岩などの水に溶解しやすい岩石で構成された大地が雨水、地表水、土壌水、地下水などによって浸食されてできた地形をいう。カルスト湖とは、カルスト地形に水が溜まってできた湖沼。 |
氷河湖(glacial lake) |
かつて氷河が侵食して形成された窪地に、その後の温暖化によって氷河が消えて残された湖沼。日本には氷河湖の例はない。 |
(参考:ウィキペディア Wikipedia)
あとがき
池、湖、川が太陽の光を浴びてきらめく水面は美しい。心が洗われるようだ。日本の美しい水辺の絶景を撮影したいと思って足を運ぶが、タイミングが実に難しい。ベストコンディションで撮ることがなかなかできない。運・不運がつきまとう。
しかしアマチュアの身分なので、いい写真が撮れなくとも自然が織りなす風景に癒されたり、水辺の絶景でのんびり過ごす旅ができれば幸せだ。
そして運よく幻想的な一枚を撮影できれば儲けの幸いである。 そう思うことにしていると意外にも幸運に恵まれることがあるような気がしている。