六甲山に自生するツツジの品種は何か?
ツツジ科の植物は、やせた酸性の土壌を好んで生えるため花崗岩が風化した六甲山系には約20種類ものツツジ【躑躅】が自生しているという。
5月上旬の六甲山(兵庫県南東部)で見つけたピンクの花を付けた花木、多分、ツツジの一種であるとは思うが、その品種が気になって調べることにした。この記事は、六甲山系に自生するツツジ類の調査と私の考察である。
<目次> 六甲山に自生するツツジの品種は何か? 深山霧島 霧島躑躅 紫山躑躅 黐躑躅 三葉躑躅 小葉の三葉躑躅 雪国三葉躑躅 結論 あとがき(作庭に不可欠なサツキ) |
深山霧島
ミヤマキリシマ(深山霧島)は、ツツジ科ツツジ属の落葉低木で、九州各地の高山に自生する。
特にくじゅう連山の平治岳と大船山がミヤマキリシマの群落で美しいことで知られている。
花期は5月下旬~6月中旬ぐらいまでであり、枝先に2~3個ずつ紫紅色の花をつける。
ミヤマキリシマは、火山活動により生態系が撹乱された山肌で優占種として生存できる。逆に、火山活動が終息して植物の遷移により森林化が進むと、優占種として生存できなくなる。
1909年に新婚旅行で霧島を訪れた植物学者・牧野富太郎が発見して、「深い山に咲くツツジ」という意味で「ミヤマキリシマ」と命名したといわれている。(引用:ウィキペディア)
残念ながら私の好きなミヤマキリシマ(深山霧島)は六甲山系には自生していないようだ。
霧島躑躅
一方、似た名前のツツジに、キリシマ (霧島)、別名がキリシマツツジ(霧島躑躅)というのがある。
キリシマツツジはツツジ科ツツジ属の常緑低木で、4月~5月頃に小ぶりの花を開花させる。
庭木や公園木にしたり、鉢植や切花に使われ、多くの園芸品種がある。
鹿児島県の霧島山の山中に自生するツツジの中から江戸時代初期に選抜されたもので、関東の土壌が生育に適していたこともあって江戸を中心に爆発的に流行した。
その後全国に広がり、各地に古木が残存する。今日でも重要な造園用樹として盛んに利用されている。
(引用:ウィキペディア)
紫山躑躅
ヤマツツジ(山躑躅)は、ツツジ科ツツジ属の半落葉低木で、別名をエゾヤマツツジ、テリハヤマツツジあるいはムラサキヤマツツジという。
日本の野生ツツジの代表種で、日本の野生ツツジでは分布域がもっとも広い。
春葉と夏葉の別があり、春葉は春に出て秋に落葉し、夏葉は春葉より小型で夏から秋に出て一部は越冬する。
花期は4~6月で、枝先の1個の花芽に2 ~3個の花をつける。花の色は赤、朱赤色、紅紫色など濃いものや淡いもの、まれに白色がある。 (引用:ウィキペディア)
黐躑躅
モチツツジ(黐躑躅)は、 ツツジ科ツツジ属の 落葉(半落葉)低木である。
主に低山地や丘陵地に自生し、明るい林(アカマツ林など)のなかで多くみられる。
通常4~6月に開花し、花びらは5枚あり、濃紅色の斑点などがみられる。葉は秋を迎えると紅葉し、大きく茂った葉は落葉する。(引用:ウィキペディア)
三葉躑躅
ミツバツツジ(三葉躑躅)は、ツツジ科ツツジ属の落葉低木で、近縁のミツバツツジ類の総称ともなる。
ミツバツツジという名称は、個別の種と、ミツバツツジ類の総称を指す場合があり紛らわしいので、種としてはホンミツバツツジという和名への改称が提案されているという。
主に山地や丘陵地のやせた尾根や岩場、里山の雑木林などに生育する。葉が3枚輪生することが名の由来になっている。葉よりも先にピンク色の花が咲く。
ミツバツツジ類は、類縁種や雑種が多く、分類が困難な種であるという。
自生するミツバツツジ類には、トウゴクミツバツツジ、サイゴクミツバツツジ、コバノミツバツツジ、ダイセンミツバツツジ、 ユキグニミツバツツジ、ツルギミツバツツジ、キヨスミミツバツツジ、キヨスミミツバツツジ、ヒュウガミツバツツジ、オンスツツジなどがあるという。(引用:ウィキペディア)
六甲山系に自生するミツバツツジ類は、コバノミツバツツジとユキグニミツバツツジの二種であることが分かった。
小葉の三葉躑躅
コバノミツバツツジ(小葉の三葉躑躅)は、ツツジ科ツツジ属の落葉低木で、葉が3枚展開するミツバツツジ類の一種である。ミツバツツジの葉よりも葉が小さいためこの名となったという。
3~4月頃に紅紫色~淡紫色の花が多数咲く。(引用:ウィキペディア)
六甲山系では「一番ツツジ」とも呼ばれ、3月末の今頃山麓を中心に咲く。六甲山地で最も多い落葉低木のツツジで、六甲山地はコバノミツバツツジの日本有数の自生地ということだ。
雪国三葉躑躅
ユキグニミツバツツジ(雪国三葉躑躅)は、ツツジ科ツツジ属の落葉低木で、雪国に多いのでこの名がついた。
秋田県から近畿地方北部の日本海側に分布している。ダイセンミツバツツジの変種であるとされる。
4月中旬から5月にかけて、約4cmの桃紅色の花を咲かせる。(引用:ウィキペディア)
ユキグニミツバツツジを六甲山でも見ることができるが、海抜の高い、裏六甲に偏在しているという。
コバノミツバツツジに遅れて、5月頃に薄ピンク色の花を咲かせるらしい。
結論
六甲山系にはミツバツツジ(ホンミツバツツジ)は自生していないようだ。
可能性のあるのはユキグニミツバツツジとコバノミツバツツジの二種である。
開花の時期的には、ユキグニミツバツツジだと思うが、私が見たのは表六甲であって裏六甲ではない。
一方、見頃の季節を過ぎているようにも思うが、花の色や形状から開花が遅れたコバノミツバツツジである可能性が高い。
その理由はかなりあいまいだ。コバノミツバツツジの方がユキグニミツバツツジよりも個体数が六甲山では多いので、確率の観点から判断してみただけであり、決して確信があるわけではない。
しかし、六甲高山植物園でも名前を確認したコバノミツバツツジにかなり酷似しているので正解の確率は高いのではないかと思っている。
広義の「ミツバツツジ」の一種であるとすれば正解ではなくとも誤答にはならないだろう。なんとも「気になる木」である。
あとがき
作庭に不可欠なサツキツツジ
サツキツツジ(皐月躑躅)は、ツツジ科ツツジ属の植物で、単にサツキ(皐月)とも呼ばれる。他のツツジに比べて1ヶ月程度遅い5~6月頃、つまり旧暦の5月(皐月) の頃に咲き揃うところからその名が付いたと言われている(引用:ウィキペディア)。
サツキツツジは、作庭には欠かせない庭木の一つで和洋を問わず、どの庭園にも植栽されている。
このサツキツツジがどのように植栽されているかを実例で検証してみようと思う。
サツキツツジは、玉仕立てされる樹木の中で最もポピュラーな樹木であり、日本庭園で頻繁に用いられる。
常緑樹であるため花が咲いていない季節でも玉仕立てのサツキツツジの造形美は素晴らしい。
雪舟庭園の一つである常栄寺・雪舟庭においても玉仕立てのサツキツツジが植栽されている。
正に日本庭園には不可欠な万能の庭木といえるのではなかろうか。
寺社仏閣の境内にもサツキツツジが玉仕立てで植栽されている。
【参考資料】
樹木検索 【六甲山系植生電子図鑑】 |
ヤマツツジ 【六甲山系植生電子図鑑】 |
モチツツジ 【六甲山系植生電子図鑑】 |
コバノミツバツツジ 【六甲山系植生電子図鑑】 |
ユキグニミツバツツジ 【六甲山系植生電子図鑑】 |
姫路城西御屋敷跡庭園 好古園【公式サイト】 |
神戸市立 須磨離宮公園 【公式サイト】 |
柳谷観音 立願山楊谷寺【公式サイト】 |
瑠璃光寺五重塔(香山公園)【公式サイト】 |
常栄寺雪舟庭 【公式サイト】 |
龍福寺本堂【公式サイト】 |
医王寺 – 福山市【公式サイト】 |