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ガーデニング

松(マツ)の品種、役割、松くい虫被害状況について

はじめに

松竹梅」【しょうちくばい】という言葉があるが、これは、慶事や吉祥のシンボルとして松・竹・梅の三点を組み合わせたもののことで、日本では祝い事の席で謡われたり、引出物などの意匠にも使われてきた(引用:ウィキペディア)。

京都市・善峰寺遊龍松ゴヨウマツ

日本で松竹梅が 慶事・吉祥の象徴とされるようになったのは、が常緑で不老長寿に繋がるとして平安時代から、室町時代から、冬に花を咲かせる江戸時代からであると言われている。

また、品物などを三階級に分けた際の等級の呼称となり、一般的には、松が最高等級となる。

支柱が必要なくらい枝を伸ばす遊龍松

本来、松・竹・梅に上下関係はないが、寿司のにぎりや料理のメニューにおいて、特上が松、が竹、が梅とされるようになった。

この順番は、吉祥の象徴となった時代順という説もあるが、松・竹・梅の三種を「松竹梅」と呼ぶところからきたとされるのが一般的な理解である。

目次
はじめに
松の品種
松の役割
松くい虫被害
松くい虫被害による枯死

松の品種

マツ)は、マツ科マツ属の常緑高木で、針のような形態の葉と松かさ/松ぼっくりと呼ばれる実がなるのが特徴の針葉樹である。約100種類が主として北半球の各地域に分布しているという(引用:ウィキペディア)。

京都・梅宮大社ゴヨウマツ

和名のマツの由来には、(神を)待つ、(神を)祀るや(緑を)保つが転じたとする諸説あるが、東アジア圏では神の下りてくる樹や不老不死の象徴として珍重されることから「待つ」から転じたとする説が有力なようだ。(引用:ウィキペディア)

区民の誇りの木」と書かれていた

松(マツ)は、手入れが大変ではあるが庭木としても人気があり、神社やお寺の境内に植えられていることも多い。

京都・城南宮の池のそばのアカマツ

また、環境に強い丈夫な樹木であるため防風林として海岸などに古くから植えられてきた。

アカマツの幹は赤みを帯びている

庭木や防風林として植えられている松の種類には、クロマツ(黒松)、アカマツ(赤松)、ゴヨウマツ(五葉松)などがある。


松の役割

海岸林(防風林・防潮林 ・防砂林 )は、海からの風や潮、津波や高波、飛んでくる砂などから海沿いの暮らしを守るため植林された森林である。

兵庫県南あわじ市/慶野松原黒松林

養分の少ない海岸の土壌でも大きく育ち、森林をつくることのできる木はクロマツのほかにはないという。

慶野松原は国指定の名勝地の一つで、兵庫県南あわじ市松帆慶野にある松原である

また、内陸部においてもアカマツが荒廃地でいち早く生長し、土壌が流出するのを防ぐ働きをする。

慶野松原根上あがりの松黒松
根あがり松は根の力で浮いている大木、近くには二代目候補(?)も育っている

厳しい環境でも育つ松が作る森林の役割は、私達の生活や日本の国土にとってかけがえのない重要な存在である。


松くい虫被害

風雪など環境には強いマツではあるが、松くい虫被害(マツ材線虫病)には弱い。

林野庁の報告によれば、松くい虫被害による被害材積は、昭和54年(1979年)度に約243万立方メートルとピークに達したあと減少傾向にあるという。

令和2年(2020年)度には約30万立方メートルとピーク時の8分の1程度の水準となってはいる。

しかしながら、新たな被害の発生が見られるほか、被害が軽微になった地域においても気象要因等によっては再び激しい被害を受けるおそれがあるという。

京都府宮津市・天橋立の松

重要な松林に甚大な被害をもたらす松くい虫被害は、マツノザイセンチュウという体長1mmにも満たない線虫が松の樹体内に侵入・増殖することで引き起こされる。

その線虫の運び屋マツノマダラカミキリというカミキリ虫である。マツノザイセンチュウは マツノマダラカミキリの寄生虫である。

私は高校時代に所属した生物クラブの活動中、偶然にもマツノザイセンチュウの実物を部員仲間と一緒に見つけた経験がある。

1974~1975年の頃で、松くい虫被害の報告が新聞にも掲載される頃であった。以来、松くい虫被害には関心を寄せてきたが、最近はニュースになることはほとんどない状況である。

決して松くい虫被害が終息したわけではないのに、皆の関心が薄れているようで悲しい気分になっている。

天橋立松並木クロマツ

この松くい虫被害は重要な海岸林だけにとどまらず、各地の名松をも枯死させてきたようだ。

今回、調べてみて愕然とした。調査対象135か所中41か所(特に1本松)で枯死していたので約3割がその雄姿を消したことになる。

残りの7割が無傷であったわけではなく、多大な被害(松くい虫被害)を受け、数を減らしながらも今日まで生き続けているのが現状である。

松くい虫被害を最小限にくい止めよう懸命に努力された関係者の尽力があったおかげである。

枯死の原因のほとんどが松くい虫被害であると特定されている。

中には原因が特定されていないケースもあるが、上述したようにマツは元々環境に強い樹であるので松くい虫被害による枯死が濃厚であると私は考えている。

広島県・宮島厳島神社龍髯(りゅうぜん)の松(クロマツ)」

クローン技術を用いて再生させようとする動きも一部にあり歓迎すべきことではあるが、元通りの姿になるまでには悠久の時間がかかる。

私達が生きている間には再開できない。一度失くしてからでは遅い。何とか松くい虫被害を防止し、松林やマツの名木を後世に残してもらいたい。切にそう望む。


松くい虫被害による枯死

松林あるいは名松と知られるマツの名所樹種    本数 
北海道厚沢部町/鶉川ゴヨウマツ自生地 ゴヨウマツ不明
北海道様似町/幌満ゴヨウマツ自生地 ゴヨウマツ不明
北海道えりも町/襟裳岬の黒松林 クロマツ不明
北海道函館市/千本松並木 アカマツ1400
青森県名川町/法光寺の千本松 クロマツ不明
青森県三戸町/関根の松 アカマツ1
青森県つがる市/屏風山保安林の松 クロマツ不明
岩手県陸前高田市/華蔵寺の宝珠松
(2018年枯死、2020年クローン苗木)
クロマツ 枯死
岩手県川崎村/薄衣の笠松 アカマツ3
岩手県/大原の赤松アカマツ 枯死
宮城県/松島の松 アカマツ不明
秋田県能代市/能代海岸・風の松原 クロマツ700万
山形県村山市/高谷家の臥竜松 アカマツ1
山形県鶴岡市/中山の五葉松 ゴヨウマツ1
山形県最上町/東法田の大アカマツアカマツ 枯死
福島県那須川市/古寺山の松並木 アカマツ不明
福島県猪苗代町/天神浜の赤松林 アカマツ不明
福島県いわき市/新舞子浜の黒松林 クロマツ不明
茨城県大洗町/大洗の松林クロマツ不明
栃木県日光市/日光の姫小松(1995) ゴヨウマツ 枯死
栃木県真岡市/太子の笠松 クロマツ1
群馬県高崎市/萩原の大笠松 クロマツ 1
群馬県桐生市/相生の松 アカマツ
クロマツ
2
群馬県伊勢崎市/連取の松 クロマツ1
埼玉県小川町/永昌寺の大松(1984年)不明 枯死
千葉県千葉市/稲毛の松林 クロマツ不明
成田市千葉市/甚兵衛の森 不明30
東京都千代田区/皇居外苑の黒松 クロマツ2000
東京都江戸川区/善養寺・影向の松 クロマツ1
東京都太田区/秋葉の黒松 クロマツ1
神奈川県真鶴町/真鶴岬の黒松林 クロマツ 枯死
神奈川県/延喜の松アカマツ 枯死
新潟県新潟市/西海岸公園 クロマツ38万
新潟県新潟市/市役所の大松 クロマツ1
新潟県両津市/村雨の松 クロマツ1
新潟県黒川村/黒川の傘松 アカマツ 枯死
富山県富山市/浜黒崎の松並木クロマツ7
富山県矢田郷村/北陸一の松クロマツ 枯死
石川県金沢市/兼六園・唐崎の松クロマツ1
石川県能美市/源平古戦場跡の根上松クロマツ1
福井県敦賀市/気比の松原 アカマツ・
クロマツ
17000
福井県美浜町/美浜の根上りの松群 クロマツ30
山梨県山梨市/龍泉寺の万年松 クロマツ1
山梨県北杜市/万休院の舞鶴松
(2008年に枯死)
アカマツ 枯死
山梨県須玉町/遠照寺の鶴亀松 アカマツ2
山梨県/浅利の御座松アカマツ 枯死
長野県立科町/笠取峠の松並木 アカマツ68
長野県須坂市/臥龍山の松林 アカマツ 不明
長野県駒ヶ根市/高鳥谷神社の松並木 アカマツ不明
長野県/日名の境松アカマツ 枯死
長野県/飯盛松アカマツ 枯死
長野県/横手の駒の松アカマツ 枯死
静岡県清水市/三保の松原 クロマツ30699
静岡県沼津市/沼津の千本松原 クロマツ30万+
静岡県藤枝市/久遠の松 クロマツ1
静岡県浜松市/家康公松鎧掛松クロマツ1
愛知県豊川市/御油の松並木 クロマツ300
愛知県吉良町/勝楽寺の松(2006年)クロマツ 伐採
愛知県岡田町/御猿塚の松クロマツ 枯死
岐阜県矢作町/大船神社の松並木 アカマツ350+
岐阜県海津町/濃尾の千本松原 日向松 1000
三重県熊野市/七里御浜風致探勝林クロマツ不明
三重県桑名市/照源寺の夫婦松 クロマツ2
三重県鈴鹿市/地蔵大松クロマツ1
滋賀県湖南市/平松のウツクシマツ自生地 アカマツ
の変種
不明
滋賀県彦根市/彦根城のいろは松 クロマツ・
アカマツ
33
滋賀県大津市/唐崎の松(1920年)クロマツ 枯死
京都府京都市/金戒光明寺・鎧掛けの松 クロマツ 枯死
京都府京都市/京都御苑の松クロマツ不明
京都府京都市/善峰寺の遊龍松 ゴヨウマツ1
京都府宮津市/天橋立の松 クロマツ6699
京都府京丹後市/琴引浜クロマツ不明
大阪府 堺市~高石市/浜寺公園の松 クロマツ不明
奈良県奈良市/奈良公園の松 アカマツ?不明
和歌山県美浜町/煙樹海岸の松林 クロマツ不明
和歌山県和歌山市/満屋の姫小松ゴヨウマツ 枯死?
和歌山県那賀町/光明寺の黒松 クロマツ 枯死?
兵庫県神戸市/須磨浦公園の松 クロマツ不明
兵庫県神戸市/修法ヶ原の松 アカマツ不明
兵庫県南あわじ市/慶野松原クロマツ 不明
兵庫県南あわじ市/淡路国道マツ並木
(1980年に全滅)
クロマツ 枯死
兵庫県南あわじ市/千手の松(1977年)クロマツ 枯死
鳥取県大山町/大山並木松 クロマツ不明
鳥取県境港市/西東の五葉松 ゴヨウマツ1
鳥取県鳥取市/中ノ茶屋の一里松 クロマツ3
鳥取県/弓ヶ浜の松 クロマツ不明
鳥取県湯梨浜町/宇谷の連理根上りマツおよび根上りマツ(1982年までに全滅)クロマツ枯死
鳥取県五千石村/天神の松クロマツ 枯死
鳥取県隠岐郡島後/伊後の大松クロマツ 枯死
島根県斐川町/出雲平野の築地松 クロマツ不明
島根県大社町/出雲大社・松の馬場 クロマツ不明
島根県隠岐の島町/春日神社の黒松群 クロマツ不明
島根県隠岐の島町/屋那の松原 クロマツ200+
島根県益田市/高津連理のマツ
(1997年に枯死)
クロマツ 枯死
島根県出雲市/伊奈西波岐神社の千年松
(1996年に伐採、樹齢 275 年と判明)
クロマツ 伐採
島根県出雲市/宇龍の松クロマツ 枯死
島根県江津市/都野津の人麻呂松
(1997年に伐採)
クロマツ 伐採
岡山県岡山市/後楽園の松 アカマツ・
クロマツ
240
岡山県玉野市/渋川海岸の松クロマツ不明
広島県福山市/法宣寺の天蓋松(1991) クロマツ 枯死
広島県広島市/蓮光寺の蓮華松 クロマツ 1
山口県光市/室積・虹ヶ浜海岸の松林 クロマツ 不明
徳島県鳴門市/鳴門の根上り松
(1999年に枯死)
クロマツ枯死
徳島県海南町/大里松原クロマツ不明
香川県高松市/栗林公園の松 アカマツ・
クロマツ
1000
香川県丸亀市/中津万象園の松 アカマツ・
クロマツ
1500+
香川県観音寺市/琴弾公園 クロマツ不明
香川県さぬき市/津田の松原 クロマツ3000
香川県さぬき市/志度岡の松(1993年) クロマツ 枯死
香川県宇多津町/円通寺の松(2002年)クロマツ枯死
愛媛県松山市/大師松(1995 年に伐採) クロマツ 伐採
愛媛県伊予市/大久保山の黒松
(1972年に伐採)
クロマツ 伐採
愛媛県今治市/根上り松(1980年)クロマツ伐採
愛媛県/荒神松アカマツ 枯死
高知県高知市/種崎千松公園クロマツ不明
高知県大方町/入野松原 クロマツ数万
高知県/龍坂の一本松クロマツ 枯死
高知県/大川内の老松クロマツ 枯死
福岡県糸島市/幣の松原クロマツ10万
福岡県玄海町/さつき松原 クロマツ不明
佐賀県唐津市~浜玉町/虹の松原 クロマツ100万
佐賀県平生町/夫婦松(1974年)赤松と黒松枯死
長崎県加津佐町/野田浜の松林 クロマツ不明
長崎県千々石町/千々石海岸の松林 クロマツ不明
長崎県小値賀町/姫の松原 アカマツ不明
熊本県小国町/池尻の唐傘松 アカマツ 1
熊本県熊本市/鐘掛松 アカマツ 枯死
大分県杵築市/奈多海岸の松林 クロマツ 不明
宮崎県えびの市/赤松千本原 アカマツ不明
宮崎県宮崎市/住吉海岸の松林 クロマツ不明
鹿児島県/吹上浜の砂丘林 クロマツ不明
鹿児島県阿久根市/阿久根大島の松林クロマツ不明
沖縄県今帰仁村/仲原馬場の松並木 琉球松不明
沖縄県伊平屋村/念頭平松琉球松1
沖縄県具志川村/久米の五枝の松琉球松1
太字松くい虫被害で枯死または伐採され、現存しない松の老木/名松を示す

【参考資料】
松くい虫被害:林野庁【公式サイト】
山梨県/松くい虫被害について【公式サイト】
松くい虫被害と対策 – 新潟県ホームページ
七里御浜風致探勝林:林野庁【公式サイト】
身近な松原散策ガイド
龍泉寺の万年マツ – 山梨県山梨市【公式サイト】
千本松原について | 海津市【公式サイト】
ウキペディア(Wikipedia)
各地の名松観光地に関する観光案内サイト

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