はじめに
昔々、猿が飛び越えたことから「猿飛」【さるとび】と命名されたとの由来がある観光名所を訪ねたことがある。一つは、黒部渓谷・猿飛峡であり、もう一つは猿飛千壺峡である。
立久恵峡は、島根県出雲市南部を流れる神戸川【かんどがわ】上流にある峡谷で、巨大な石柱や断崖の奇岩が屹立した景観で有名な所である。
大歩危峡は、美しい岩石やV字谷の様子から日本列島の成り立ちが分かる全国的にも貴重な場所として国指定天然記念物であり、名勝にも指定されている。
面河渓は、仁淀川上流の面河川のV字谷でおり、 早瀬、深淵、瀑布が連続する国の名勝地にもなっている。
高千穂峡は、日本神話で天孫ニニギが降臨した高千穂の峰の近くに位置し、シンボルでもある眞名井の滝で有名な渓谷である。
これらの渓谷は、いずれもV字谷と呼ばれ急峻な渓谷として広く知られている。渓谷の底を流れる清流と共に渓谷美と呼ぶにふさわしい美の世界を魅せてくれる。そこは絶好の撮影スポットとなるはずである。
<目次> はじめに 黒部峡谷・猿飛峡【富山県】 猿飛千壺峡【大分県】 立久恵峡【島根県】 大歩危峡【徳島県】 面河渓【愛媛県】 高千穂峡【宮崎県】 あとがき |
黒部峡谷・猿飛峡
【富山県】
黒部峡谷は、立山連峰と後立山連峰の間を北上する黒部川が花崗岩質の岩肌を浸食して形成したV字谷であり、日本一深い急峻な渓谷として知られている。
上流は黒部ダム直下から下流は東谷合流地点までの地域と、下流の奥鐘山の大断崖と猿飛の地域が飛地として指定されている。
猿飛峡【黒部市黒部峡谷口】は、黒部川本流で最も川幅が狭くなった場所で、昔猿が飛び越えたことから命名されたとされる。
名 称 | 猿飛峡 |
所在地 | 富山県黒部市黒部峡谷口 |
Link | 黒部峡谷附猿飛【公式】富山県観光サイト |
猿飛千壺峡
【大分県】
猿飛千壺峡【中津市山国町草本】は、山国川の清流と河床一帯に広がる変朽安山岩、小さな石ころの三位一体で生まれた自然の造形物が織りなす素晴らしい景勝地である。
峡底には、渓流が長い年月をかけて造りあげた大小無数の甌穴【おうけつ】が約2kmに渡って広がっている。
国の天然記念物にも指定されている。「猿飛」という名前は、その昔、山猿が現れて岩から岩を飛び回っていたことから名付けられたという。
名 称 | 猿飛千壺峡 |
所在地 | 大分県中津市山国町草本 |
Link | 猿飛千壺峡 | 中津耶馬渓観光協会 |
立久恵峡【島根県】
立久恵峡は、島根県出雲市の南部を流れる神戸川【かんどがわ】上流2kmの峡谷である。
安山岩質集塊岩を浸食して形成された渓谷であり、高さ100~200mの石柱や断崖がそそり立つ奇岩が屹立する渓谷である。
国の名勝および天然記念物にも指定されている。
見上げると奇岩柱石(高さ100~200m)がそそり立っている。
立久恵峡には不老橋と浮嵐橋の2つの橋が架かっている。この2つの橋の間は自然観察コースとして遊歩道が設置されており周遊できる。
奇岩柱石には、神亀岩、烏帽子岩、ろうそく岩などの名が付いているらしいが、どれがそうなのかよく分からない。
奇岩柱石が俊立する集塊岩の渓谷は神戸川の浸食や風化によってできたものであると言われている。
名 称 | 立久恵峡 |
所在地 | 島根県出雲市乙立町 |
Link | 立久恵峡|出雲観光ガイド【出雲観光協会公式HP】 |
大歩危峡【徳島県】
吉野川(徳島県)は水量が多く、流れも速い。両岸から急峻な傾斜面と岩壁が迫ることから、V字谷の一帯は古くから大歩危・小歩危【おおぼけ・こぼけ】と称され、通行の難所として知られてきた。
大歩危峡は、美しい岩石やV字谷の様子から日本列島の成り立ちが分かる全国的にも貴重な場所として国指定天然記念物であり、名勝にも指定されている。
大歩危峡は、自然が作り出した芸術的作品とも言える場所である。そんな景色を遊覧船から眺めるのはある意味贅沢であるかも知れないが、天然記念物を間近に見ることのできる機会は滅多にない。大歩危峡に出かけた際は、観光遊覧船を利用するのは良い考えだと思う。
何故、「鯉のぼり」が大歩危峡に架かっているのかその理由が分からない。どこにも説明がない。些細なことだが気になるものである。
鯉(コイ)は、清流だけでなく、池でも沼でも生きられる生命力の強い魚である。そこから「鯉のぼり」は環境の良し悪しに関わらず、立派に成長し、立身出世するように願って飾られるようになったそうだ。
登竜門の話を「鯉のぼり」にしたという江戸時代の日本人の発想は日本独特だという(株式会社晃月人形HP)。
大歩危峡の急流が登竜門の語源になっている「竜門」と呼ばれる急流になどられているのかも知れない。
名 称 | 大歩危峡 |
所在地 | 徳島県三好市山城町西宇 |
Link | 大歩危峡まんなか(大歩危峡観光遊覧船) |
面河渓【愛媛県】
面河渓【おもごけい】は、愛媛県久万高原町にある渓谷で、仁淀川上流の面河川に至る渓谷である。
周囲を高峻な山々に囲まれてV字谷となっており、 早瀬、深淵、瀑布が連続する国の名勝地にもなっている。
名所には関門、相思渓、五色河原、亀腹、蓬莱峡、紅葉河原、御来光の滝などがあり、紅葉の名所にもなっているという。
面河渓に通じる県道12号西条久万線は通称「もみじライン」と呼ばれている。
私が面河渓のことを書いている理由は、この面河渓が「21世紀に残したい日本の自然百選」に選らばれていることを後か知ったからである。
「陰性植物の宝庫であり、奇岩と渓流、周辺の自然林も美しい」というのが選定理由に挙げられているが、訪れる前に知っておくべきであったと後悔している。
面河渓は、複雑に入り込んだ地形をしており、また気象条件により、植物の水平分布は、暖帯性のものから温帯性のものまで見られ、その種類は極めて多く、植物の宝庫となっているという。
次に訪れる機会があれば、しっかりと植物まで観察することにしたいと思う。
名 称 | 面河渓 |
所在地 | 愛媛県久万高原町 |
Link | 面河渓|愛媛県 |
高千穂峡【宮崎県】
御塩井【おしおい】駐車場が満車であったため、あららぎ駐車場に車を止め、駐車場横にある「あららぎ乃茶屋」から遊歩道を通って御塩井駐車場に向かう。その近くにボート乗り場がある。
遊歩道の途中に新旧の橋が見える場所がある。新旧の橋とは、高千穂峡大橋と神橋【しんばし】のことである。実はこれらの橋の上にはさらに新しい神都高千穂大橋が開通しているが、この場所からは見えない。
高千穂峡も他のV字渓谷と同様に浸食によって形成されたものと勝手に思っていたがそうではなかった。
高千穂峡は、かなりの昔、阿蘇山の火山活動で噴出した火砕流が五ヶ瀬川に沿って帯状に流れ出し、それが急激に冷却されたために柱状節理の懸崖となった峡谷であるという。
柱状節理の懸崖の高さが約70mにも及ぶ場所があり、その懸崖は急峻なことから「仙人の屏風岩」と呼ばれているそうな。
遊歩道をゆっくりと15分程度歩いてくると高千穂峡のシンボルとも言うべき「眞名井の滝」が見えてくる。
眞名井の滝の辺りまでの両岸は柱状節理の懸崖であったが、観光用ボート乗り場の辺りは広く開けている。この辺りから下流も比較的川幅が広くて先程まで目にしてきた独特の柱状節理の懸崖が見られなくなる。
御塩井駐車場横にある観光用ボートのチケット売り場でチケットを購入し、徒歩で3分ほど下るとボート乗り場がある。そこで救命胴衣を腰につけ、順番待ちをすることになる。ボートに乗り込み、いざ出陣、否、出航。手漕ぎボートだから気楽に行こう!
なんとも言えない神秘的な様相を見せてくれる「眞名井の滝」を目指して観光用ボートを漕いでいくとマイナスイオンを全身に浴びて爽快な気分に不思議となれる。
落差約17mの眞名井の滝は、高千穂峡を象徴する風景である。陳腐な説明など何もいらない。ただ黙って五感で感じれば良い。
私達が高千穂峡を訪れたのは紅葉の季節であったが、瀧と紅葉は実に相性が良い。知らず知らずのうちに同じような写真を何枚も撮ってしまっている。私は下のアングルの写真を気に入っているがどうであろうか。私の独り善がりというものであろうか?
日本神話で天孫ニニギが降臨の際、この地に水がなかったので、 天村雲命【アメノムラクモノミコト】が水種を移した「天真名井」から湧き出る水が水源の滝との伝説がある。眞名井の滝はその伝説と共に今なお神秘的な様相で私達の眼を楽しませてくれる。落差はそれほどでもないが名瀑と称してよいと私は思う。
名 称 | 高千穂峡 |
所在地 | 宮崎県西臼杵郡高千穂町大字三田井御塩井 |
Link | 高千穂峡 | 高千穂町観光協会 | 宮崎県高千穂の観光情報 |
あとがき
長年、待ち焦がれていた高千穂峡に行く機会が得られたという高揚感が今なお続いていて、記事に公平さを欠いているがご容赦願いたい。決して美観に甲乙を付けているわけではない。単に個人的な思い入れの違いからくるものであって他意はない。
交通の便が良くなったおかげで、昔に比べて渓谷に容易に行ける機会が増える傾向にある。渓谷美を一度知ってしまうと虜になってしまう。今後はもっと積極的に渓谷に出かけてみようと思う。
【参考資料】
黒部峡谷附猿飛【公式】富山県観光サイト「とやま観光ナビ」 |
猿飛千壺峡 | 中津耶馬渓観光協会【公式サイト】 |
大歩危峡まんなか(大歩危峡観光遊覧船)【公式サイト】 |
面河渓|愛媛県【公式サイト】 |
日本の自然100選 – 森林文化協会 |
『えひめの記憶』|愛媛県生涯学習センター【公式サイト】 |