はじめに
『マッサン』は、2014年秋から翌年の春まで放映されたNHKの連続テレビ小説のタイトルである。
このドラマのモデルとなった人物は、ニッカウヰスキーの創業者である竹鶴政孝氏とその妻リタさん(ジェシー・ロベルタ・カウン)である。
タイトルの「マッサン」はリタさんが竹鶴政孝氏のことをこのように呼んだことにちなんでいると言われている。
「日本のウイスキーの父」と呼ばれる竹鶴政孝氏は、「日本で本物のウイスキーをつくりたい」との夢と情熱をもって、本物へのこだわりを追求し、自身のウイスキーづくりの理想郷を求めて辿り着いた場所が北海道・余市であったという。
竹鶴政孝氏は、スコットランドに似た冷涼で湿潤な気候、豊かな水源と凛と澄んだ空気がそろった場所こそが、理想のウイスキーづくりには欠かせないと考え、さまざまな候補地の中から積丹半島の余市を選んだとされる。
モルトウイスキーの原料である大麦や、スモーキーなフレーバーを加えるためのピート(草炭)が豊富にあったことも好条件であったという。
1934年にニッカウヰスキーの前身である大日本果汁株式会社が余市に設立され、それから2年後に余市蒸溜所のポットスチルの炉に石炭がくべられた。ニッカウヰスキーの記念すべきウイスキーづくりの第一歩がそこから始まったとされる。
<目次> はじめに ニッカウヰスキー余市蒸溜所 ウイスキー 原料 製造方法 |
ニッカウヰスキー余市蒸溜所
ウイスキー
ウイスキーは、大麦、ライ麦、トウモロコシなどの穀物を麦芽の酵素で糖化し、これをアルコール発酵させた後に蒸留した「蒸留酒」である。
【原料】
ウイスキーの主原料は、大麦、小麦、トウモロコシ、ライ麦などの穀物を原料とする麦芽と水である。
原料の大麦には、モルトウイスキーづくりに適した性質をもつ二条大麦が使われる。
酵母は糖分をアルコールに変えることはできても、大麦のでんぷんをそのままアルコールに変えることはできない。そのため糖化という工程が必要になる。
しかし、その前に糖化の役目を担う酵素を大麦自身の中につくらせるために発芽した麦を乾燥させ、麦芽を作る必要がある。
水は、ウイスキーづくりにとってその品質を決める大きな要素の一つとして重要である。
ウイスキー製造用水の必要条件は、異味、異臭がなく、飲んでもおいしい水であるとともに、酵母の生育に好ましい適度なミネラルがバランス良く含まれることが重要である。
【製造方法】
ウイスキー造りの基本は、下記のステップで行われる。
- 製麦(麦芽の製造)
- 仕込み(酸化/糖化)
- 発酵
- 蒸留
- 熟成(貯蔵)
- ヴァッティング
- ブレンド
仕込み工程では、製麦で作った麦芽を粉砕し、加温した仕込み水と混ぜてお粥状態にする。この工程で麦芽中の酵素が働き、でんぷんを糖分に変える。これをろ過して、発酵に使用する麦汁をつくる。
発酵工程では、仕込みで作った麦汁をアルコール分約7%の発酵液に変える。発酵中の麦汁に酵母を加えると、酵母は麦汁中の糖分を分解し、アルコールと炭酸ガスに変え、ウイスキー特有の香味成分をつくる。
酵母の種類や発酵条件によって香りなどに特長が生じる。発酵は約60時間で終了する。
この工程でできた発酵液をもろみと呼び、この段階でのアルコール分は約7%である。
蒸留工程では、発酵の終わったもろみを銅製のポットスチルと呼ばれる単式蒸溜器にいれて二度蒸溜し(初溜と再溜)、アルコール濃度を65~70%に高める。
この生まれたばかりのウイスキーをニューポットと呼ぶ。蒸留の原理は、アルコールが約80度で沸騰する性質を利用し(沸点の違いを利用)、蒸気を発生させ、これを冷却・液体化させて、アルコールや香気成分などの揮発成分だけをとり出す。
蒸溜釜の形と大きさ、蒸溜方法や加熱方式を使い分けることで、様々なタイプのモルト原酒をつくることができるという。
貯蔵工程とは、蒸溜で製したニューポットを樽の中で長期間じっくり寝かせる工程をいう。貯蔵工程の期間は、一般的には3年、5年、10年に及ぶ。ウイスキーの琥珀色、奥深い味わいの秘密はこの貯蔵、樽熟成にある。
樽材にはホワイトオーク、スパニッシュオーク、ミズナラなどがある。ウイスキー原酒は、貯蔵環境(気温、湿度)によっても熟成の度合いが微妙に変化し、複雑な反応を見せ、多彩なウイスキー原酒が生まれるという。
モルト原酒同士を混和することをヴァッティングと呼ぶ。ちなみに熟成年数表示は、使用されたモルト原酒の中での最低年数を示しており、ヴァッティングされるモルト源酒の平均熟成年数はもう少し高くなる。
ブレンデッドウイスキーの場合、モルト原酒と麦以外の原料で作ったグレーン原酒をブレンドする。個性の強いモルト原酒と個性の穏やかなグレーン原酒が新たなハーモニーを生み、ブレンデッドウイスキーの香味が仕上がるという。