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観光地化されたダム湖の魅力、その美観と経済的価値

はじめに

日本各地には有名な湖沼が点在していており、そこが観光地になっていたりする。

環境省の定義によれば、【みずうみ】は四面を陸地でかこまれて中に水をたたえたものであり、池や沼などより大きく中央部に沿岸植物の侵入を許さない深度(5~10m以上)を持つものとされている。

一方、【ぬま】は深度5m以下で、底は泥ぶかく、クロモやフサモなどの沈水沿岸植物が生えている湖沼と定義されている。

しかし、両者はあまり厳密には区別されておらず、総称としての湖沼でこと足りているようだ。

一方、【いけ】は、くぼ地に自然に水がたまった所または地面を人工的に掘って水をためた所で、通常、湖沼より小さいものをいう(引用:デジタル大辞泉)。

特に、人工的に作られたものをと呼ぶようである。そのためか、河川を堰き止めて造成したダム貯水池造成池である人造湖等に区分される。

人造湖(ダム湖)を造る理由は、利水治水である。

利水とは、水力発電、灌漑、上水道、工業用水道などに利用することをいう。水力発電は、太陽光発電と共に再生可能エネルギーと呼ばれる。地球温暖化などの影響でエコロジーが重要視されている現代は、この再生可能エネルギーである水力発電が再び注目されるはずである。

また、灌漑、上水道、工業用水道などに利用する水は、まさに「いのちの水」で、生活用水や経済活性化のために欠かせない。

一方、治水とは、大量降雨時の河川の水量を調節して洪水を防ぐためのことをいう。つまり、大雨のときは水を貯めて下流地域の川の水量を減らし、雨が少ないときは計画的に放流し、暮らしの水が不足しないよう、川の水量を調整することをいう。

水使用量の多い夏場であっても、人造湖(ダム湖)の膨大な貯水のおかげで、下流域に安定して水が行き渡る。

また、台風などの豪雨の際は、ダムからの流水量を調節することによって下流に深刻な洪水被害が発生することを防いでいる。

ダム湖(人造湖)は、例えるなら、ある一定の量の水を貯えた容器のようなものであり、そこから水を引くことで半ば安定的に水を供給することを可能にしている。

本稿では、観光地化された人造湖(ダム湖)の魅力、特に経済的価値と人工的自然美について考えてみたい。

目次
はじめに
日本の人造湖(ダム湖)
ダムの種類
重力式コンクリートダム
アーチ型コンクリートダム
ロックフィルダム
ダムが建設されるまでの工程
調査・設計
準備
掘削作業
ダム本体の建設
試験・検査を経て、完成
流れダム・とまりダムとは
人造湖(ダム湖)の魅力
経済的価値
人工的自然美
見てみたい人造湖(ダム湖)
見てみたいダム湖一覧
黒部湖(黒部ダム)
あとがき

日本の人造湖ダム湖

日本各地に点在する有名な人造湖は、国立公園や国定公園の一部を構成していたり、それ自体が観光地にもなっていたりする。

数を数えると有名なものだけでもこんなにも多いのかと驚く。同時に私が訪れたことのある人造湖はほんのわずかであることにも愕然する。

日本一のダム湖(人造湖)と称される黒部湖黒部ダム)【富山県立山町】

人造湖とは言え、コンクリートの堰を見ない限りはそれとは気づかない素晴らしい景観を楽しめることができる。

近くで見る黒部ダムの豪快な放水は掛け値なしに圧巻! 虹も撮ることができ感激!

もちろんコンクリートの堰もそれはそれで圧巻であることが多い。私は高い所が苦手なので、その場に長居をしたくないという個人的理由があるだけだ。


ダムの種類

ダムの設計様式には、主なものとして重力式コンクリートダム、アーチ型コンクリートダム、ロックフィルダムの3種類がある。

重力式コンクリートダム関西電力
アーチ型コンクリートダム
ロックフィルダム

重力式コンクリートダム

ダム自体の重さで水圧をささえるダムである。

材質は主にコンクリートが使われ、構造は一般的に直線型で、横断面は台形で構成される。

日本のダムの約90%はこの形式であるという。


アーチ型コンクリートダム

ダムをアーチ型に湾曲させることで、両側山腹の岩盤に圧力を分散させて水圧を支えるダムである。

重力式コンクリートダムに比べてダムの厚さが薄くて済むため、材料コストを軽減できる。

ただし、水圧に耐えられるだけの強固な岩盤が必要となるため、建設可能な地点は限定される。


ロックフィルダム

土、砂れき、岩石を積み上げてつくるダムをフィルダムといい、そのうち岩石(ロック)で造るものをロックフィルダムという。

水漏れを防ぐためにダムの内部または上流面に、水を通さない材料を使用している。

ダム自体の体積が大きく安定性はあるが、資材の運搬が困難なため、ダムの材料となる岩石が近くにある場所に適している。


ダムが建設されるまでの工程

ダムが完成するまでには多くの工程があり、一つのコンクリートダムをつくるのに40~50年という長い期間を要するという。

1. 調査・設計

まず最初にやるべきことは、建設予定地の岩盤や地質などが、ダムに適しているかどうか、どんな生物が住んでいるかなどを調査することである。

そして、その調査結果に基づいて、ダム建設計画を立てる。つまり、ダムや周辺施設の図面を作成する。

2. 準備

ダムの建設予定地を流れている川を一時的にう回させたり、建設のための資材を仮置きする場所、資材運搬に使う道路などを整備しなければならない。

コンクリート製造設備やコンクリート打設に必要なクレーンなども組み立てる。

3. 掘削作業

強固な岩盤の上にダムをつくるために、ダムの基礎となる部分にある土砂や弱い岩を取り除く。

4. ダム本体の建設

コンクリートのひび割れなどに注意しながらコンクリートを打ち重ねてダム本体を建設していく。

同時にダムを管理する事務所や設備などをつくる。

5. 試験・検査を経て、完成

ダム本体の強度を確かめたり、水漏れがないかなどの試験・検査をする。この検査が無事に完了したら、ダムは完成である。


このように多くの工程と長期間に及び工事を経て建設されたダムおよびそのダムに堰き止められてできたダム湖は、多くの人々の尽力と貢献の結晶であるといえる。それを再認識した後は、ダム湖の印象も異なるものになるから不思議である。


流れダム・とまりダムとは

ダム湖(人造湖)には一般に、「流れダム」と呼ばれるものと、「とまりダム」と呼ばれるものが存在する。

流れダムは、貯水容量が流入量に比べて相対的に小さく、夏季においても水温躍層が形成されることはなく、一般に湖底に至るまで酸素が豊富である。

一方、とまりダムは、夏季に水温躍層が形成される場合が多く、表面水温が高く、深層水温が低くなるため、両者の水は、大きな洪水で全体が混合される以外は、夏季には混ざりにくくなるとされている。

また、ダム湖(人造湖)は、貯水池内の水の交換の度合によって、池内の密度構造などが著しく左右されることから、その交換率によって流れダムととまりダムに大別することもあるという。

水難事故が起こりやすいのはどちらかと言えば、とまりダムの方であると言われている。

ボートやカヌーから落ちた際に水面と水中の水温差が大きいことが、人命救助を困難にしているからである。つまり水温差のために心停止が起こりやすいのである。だからダム湖での水遊びは慎重に行った方がよいと言える。


人造湖(ダム湖)の魅力

経済的価値

ダムを建設する主な目的は次のようなことである。

  • 河川水量の調節を行い、下流域の洪水被害を軽減(治水)
  • ダム下流域の河川の流水の正常な機能を維持する(利水)

多目的ダムでは、ダムに貯水した水を発電、水道用水、工業用水等に用いるための容量を確保することもその目的としている。この目的達成だけでも経済的側面からダムは魅力的である。

しかしながら、多目的ダムにおける、治水、発電、農業用水、都市用水(水道用水・工業用水)という各用途は、それぞれ事業の性格が異なり、かつ、各用途はいずれも独占的な事業であって市場競争が働かないという特徴を有している。

そのためそれぞれの効用や負担能力を共通の基準で判断することが難しいとされる。ダム建設においてよく政治的判断が必要な場合があるのはこのことが起因しているためであるといえよう。

いずれにせよダム建設の目的を達成するためには、流水の占用、舟運、漁業、観光、流水の清潔さの保持などを総合的に考慮して設定された流量を補給できる容量(不特定容量)を確保することが必要とされ、関係者の理解と協力が必須となる。

ダム建設に対する理解を得るため、国土交通省では、民間ツアー会社と連携してダムツアーを実施している。

ダムの工事現場も活用して完成前から観光資源としての効用を発現できるようダムツーリズムも推進している。

さらにはダムとその周辺地域の環境を活用し、地域と連携してダムの観光資源としての活用も積極的に図っている。

以上がダム湖の観光地化を進める理由である。私はこの施策に反対しているわけではなく、むしろ賛成している。しかしながら、それはダムの建設がステークホルダーの合意を得て、建設工事が始まって以降の話である。

ダムの建設計画あるいはそれ以前の調査の段階で、技術的および経済的な側面だけでなく、生態系への影響がないことを十分にアセスメントして貰いたいと思っているのは私だけではあるまい。


人工的自然美

きれいな山々に囲まれた湖は、天候が良ければその水面はエメラルドグリーンに輝いており、まさに絶景と呼ぶにふさわしい。

黒部峡谷鉄道車窓からの景色

コンクリートの堤を観なければ、天然湖沼と何ら変わりがないようにすら見える。

一方、ロックフィルダムは、岩石(ロック)を主材料として造る重力式ダムで、岩石のすき間を小さくするために、大小の石が混合して使用されている。そのため周りの景色と相まって、石を積み上げてできたダムの姿はそれ自体が美しい。

戸川ダム公園(香川県)春には250本の桜が戸川ダム湖を囲むように咲き誇る

ダム湖畔にはサクラの樹木が植栽されていることが多い。したがって、春には桜が咲き乱れ、湖畔に映り込むその姿は本当に美しい。

戸川ダム公園(香川県)

また、私はまだ見たことがないが、ライトアップを実施しているダム湖もあるらしい。

さらには、ボートやカヌーの体験ができるダム湖もあるらしいが、周辺の山々は一年を通してハイキングに絶好の場所として多くの人々に親しまれているケースが多い。

まさにダム湖は人工物でありながら自然美を兼ね備えた存在になっているといえよう。その人工的自然美こそがダム湖の魅力であると私は思う。


見てみたい人造湖(ダム湖)一覧

私が訪ねてみたい人造湖(ダム湖)を個人的興味と偏見のみでリストアップしてみた。

人造湖    ダム名    完成水系・河川
かなやま湖金山ダム1967石狩川・空知川
笹流貯水池笹流ダム1923亀田川・笹流川
シューパロ湖夕張シューパロダム 2015石狩川・夕張川
朱鞠内湖雨竜第一ダム1943石狩川・雨竜川
定山湖豊平峡ダム1972石狩川・豊平川
聖台貯水池聖台ダム1937石狩川・宇莫別川
大雪湖大雪ダム1975石狩川・石狩川
冨里湖冨里ダム1987常呂川・仁頃川
かわうち湖川内ダム1994川内川・川内川
津軽白神湖津軽ダム2016岩木川・岩木川
岩洞湖岩洞ダム 1960北上川・丹藤川
錦秋湖湯田ダム1964北上川・和賀川
御所湖御所ダム1981北上川・雫石川
田瀬湖田瀬ダム1954北上川・猿ヶ石川
あさひな湖宮床ダム1998鳴瀬川・宮床川
釜房湖釜房ダム1970名取川・碁石川
七ヶ宿湖七ヶ宿ダム1991阿武隈川・白石川
七ツ森湖南川ダム1987鳴瀬川・南川
宝仙湖玉川ダム1990雄物川・玉川
月山湖寒河江ダム1990最上川・寒河江川
田子倉湖田子倉ダム1959阿賀野川・只見川
羽鳥湖羽鳥ダム1956阿賀野川・鶴沼川
川俣湖川俣ダム1966利根川・鬼怒川
赤谷湖相俣ダム1959利根川・赤谷川
奥利根湖矢木沢ダム1967利根川・利根川
神流湖下久保ダム1968利根川・神流川
草木湖草木ダム1976利根川・渡良瀬川
ならまた湖奈良俣ダム1990利根川・楢俣川
野反湖野反ダム1956信濃川・中津川
八ッ場あがつま湖八ッ場ダム2020利根川・吾妻川
奥秩父もみじ湖滝沢ダム2007荒川・中津川
狭山湖山口ダム1934荒川・柳瀬川
奥多摩湖小河内ダム1957多摩川・多摩川
多摩湖 村山上ダム1924荒川・空堀川
多摩湖村山下ダム1927荒川・空堀川
相模湖相模ダム1947相模川・相模川
丹沢湖三俣ダム1978酒匂川・河内川
宮ケ瀬湖宮ケ瀬ダム2000相模川・中津川
銀山湖奥只見ダム1960阿賀野川・只見川
有峰湖有峰ダム1959常願寺川・和田川
うなづき湖宇奈月ダム2000黒部川・黒部川
黒部湖黒部ダム1963黒部川・ 黒部川
九頭竜湖九頭竜ダム1968九頭竜川
奥木曽湖味噌川ダム1996木曽川・ 木曾川
高瀬湖高瀬ダム1979信濃川・高瀬川
高遠胡高遠ダム1958天竜川・三峰川
美和胡美和ダム1959天竜川・三峰川
阿木川湖阿木川ダム1990木曾川・阿木川
恵那峡大井ダム1924木曾川 ・木曾川
徳山湖徳山ダム2007木曾川・揖斐川
佐久間湖佐久間ダム 1956天竜川・天竜川
奥矢作湖矢作ダム1970矢作川・矢作川
三河湖羽布ダム1962矢作川・巴川
大杉湖宮川ダム1956宮川・宮川
青蓮寺湖青蓮寺ダム1970淀川・青蓮寺川
ひなち湖比奈地ダム1998淀川・名張川
永源寺湖永源寺ダム1972淀川・愛知川
天若湖日吉ダム1997淀川・桂川
月ヶ瀬湖高山ダム1969淀川・名張川
虹の湖大野ダム1960由良川・由良川
知明湖一庫ダム1983一庫大路次川
布引貯水池布引五本松ダム1900生田川・生田川
池原湖池原ダム1964新宮川・北山川
津風呂湖津風呂ダム1962紀ノ川・津風呂川
椿山ダム湖椿山ダム1988日高川・日高川
備中湖新成羽川ダム1968高梁川・成羽川
神竜湖帝釈川ダム1924高梁川・帝釈川
本庄水源地本庄ダム1917二河川・二河川
弥栄湖弥栄ダム1990小瀬川・小瀬川
八千代湖土師ダム1974江の川・江の川
龍姫湖温井ダム2001太田川・滝山川
阿武湖阿武川ダム1974阿武川・阿武川
小野湖厚東川ダム1948厚東川・厚東川
満濃池満濃池大宝金倉川・金倉川
朝霧湖野村ダム1981肱川・肱川
法皇湖富郷ダム2000吉野川・銅山川
早明浦湖早明浦ダム1978吉野川・吉野川
上秋月湖江川ダム1972筑後川・小石原川
日向神湖日向神ダム1959矢部川・矢部川
美奈宜湖寺内ダム1978筑後川・佐田川
富士しゃくなげ湖嘉瀬川ダム2012嘉瀬川・嘉瀬川
北川ダム湖北川ダム1960五ヶ瀬川・北川
蜂の巣湖下釜ダム1972筑後川・津江川
日向椎葉湖上椎葉ダム1955耳川・耳川
米良湖一ツ瀬ダム1963一ツ瀬川
大鶴湖鶴田ダム1965川内川・川内川
かんな湖漢那ダム1993漢那福地川
倉敷湖倉敷ダム1994比謝川・与那原川
福上湖福地ダム1974福地川・福地川
一度は訪ねてみたい日本の主な人造湖(人工ダム)一覧
太字は訪ねた経験があり、お勧めの人造湖であることを示す)
(参考:ウィキペディア Wikipedia)

予想していたよりも数が多くなってしまった。八ッ場ダムなどテレビや新聞のニュースで話題となった人造湖も含んでいる。


黒部湖黒部ダム
【富山県立山町】

黒部湖黒部ダム)は、一度は見てみたいと長らく願っていて、ようやくその機会を得ることができたダムである。学生時代や社会人になりたての頃、登山をしていても遠くから眺めていただけなので、ダムを間近で見ることができた時は感動ものであった。

黒部ダムは、富山県東部の長野県境近くの黒部川上流に関西電力が建設したコンバインダム(複数の形式を組み合わせて建設されるダムを指す)である。黒部ダムは、実は単純なアーチ型コンクリートダムではなく、ウイング部は重力式コンクリートダムであるという。理由は、建設途中で両岸の基礎となる岩盤を再調査したところ亀裂が見つかり、予想以上に脆いことが判明したため、設計変更をしたからである。両側がウイング状に変更となり、アーチ部を川下に向かって傾斜させることにより、水圧を両岸に逃がすのではなく、下向きの力へと変化させることでダム下部の岩盤に支えさせる構造となっているという。

黒部ダムは、黒部渓谷に建設された日本を代表するダムの一つであり、水力発電専用ダムで貯水量2億立方メートル、高さ(堤高)186メートル、幅(堤頂長)492メートルの規模を誇る。日本で最も堤高の高いダムとして知られ、黒部ダムの完成により、北陸地方屈指の人造湖「黒部湖」が誕生し、ダム湖百選にも選ばれている。(引用:ウキペディア)

黒部湖は、北アルプスの立山連峰と後立山連峰に挟まれた黒部渓谷にあるため自然の景観が良く、周辺が中部山岳国立公園でもあることから、立山黒部アルペンルートのハイライトの一つとして多くの観光客が訪れる観光名所と現在ではなっている。

しかしながら、終戦(1945年)以降、日本の電力需要の大半は水力発電所によって賄われていたが、渇水になると各地で停電が相次いていた。関西地方では、1951年の秋に深刻な電力不足に陥り、一般家庭で週3日の休電日が設けられたが、休電日に関わらず連日のように停電していた。こうした状況は高度経済成長期を迎えた1955年以降も続き、工場で週2日、一般家庭では週3日、電力使用制限が行われていたという。このように関西地方では深刻な電力不足により、戦後復興の遅れと慢性的な計画停電が続き、深刻な社会問題となっていた。

決定的な打開策として、関西電力は、大正時代から過酷な自然に阻まれ何度も失敗を繰り返した黒部峡谷での水力発電以外に選択肢はないと考えた。当時、人が行くこと自体が困難で命がけだったその黒部川上流という秘境の地でのダム建設案に、当時の太田垣社長は「黒部しかない。関西の消費電力を一気に賄える。工期7年、遅れれば関西の電力は破綻する」と決断し、資本金の3倍(最終的には5倍)の総工費で臨んだという。

工事は難航を極め、多くの犠牲者も出たという。事期間中の転落やトラック、トロッコなど労働災害による殉職者は171人にも及び、建設現場以外でも、宿舎(飯場)が雪崩の被害を受け87名が犠牲(死亡)になったという。作業員延べ人数は、1,000万人とされる大工事であったことには間違いない。

黒部ダムの完成当時、大阪府の電力需要の50%(25万kW)を賄ったとされ、産業も重工業への転換がようやく可能になった。
(引用:ウキペディア)

このように原子力発電や火力発電が普及していない時代にあって、黒部ダムの水力発電は多大な貢献をしたと言える。

2006年時点での土砂堆積率は14%であり、ダム本体の耐久性と併せて考えると、これからも約250年はダムとして機能すると推定されているらしい。(引用:ウキペディア)

黒部ダムには観光で訪れたが、このダムの建設に尽力した人々への感謝と黒部ダムの電力供給への貢献の大きさも忘れないようにしたいものである。

名 称黒部湖黒部ダム
所在地富山県立山町
Link黒部ダムオフィシャルサイト (kurobe-dam.com)

あとがき

ダムの建設には、構想段階から賛否両論がつきものである。賛成者には賛成者の論理があり、反対者にも反対すべき理由や論理がある。反対理由で多いのは、環境破壊や利害関係であり、生活がかかっているから当然と言えば当然である。万人が諸手を挙げて賛成することはない。合理的判断であるのか、それが正解があるのかどうかは後世になってみないと分からないことが多い。したがって、ダムの建設における最終的決断には政治的判断がなされることが多いのも当然であるといえよう。

黒部ダムの建設にも当然、反対者がいて着工まで紆余曲折があったようである。しかし、時が過ぎ、現在の黒部湖を訪れ、感嘆の声をあげる観光客の中には誰一人として異議を唱える者がいないように私の眼には映った。

私も含め観光客の大半は部外者であるから、眼下の圧巻の光景に単純に感動して喜んでいるだけである。無邪気と言えばそれまでかも知れないが、せめて帰宅後はそのダムが建設された理由や経緯を調べて、思考のバランスをとっておくべきだろうと思う。しかし、実のところ私はまだその域には到達していない。

今まで見て来た人造湖やこれから訪れるであろう人造湖にもそれぞれの経緯があるはずである。その経緯を知れば、人造湖を眺める時の私の感情に何等かの変化や影響を与えることだろう。


【参考資料】
ダムの種類 [関西電力] (kepco.co.jp)
ダム – 国土交通省水管理・国土保全局 (mlit.go.jp)
黒部ダムオフィシャルサイト (kurobe-dam.com)