はじめに
写真は、自分の目で見た世界を表現する楽しい趣味である。デジタルカメラが普及した今日では誰でもが簡単に写真を撮ることができる。今まで写真をあまり撮ったことがない人でもスマホで簡単に写真が撮れている時代となった。シニア世代が写真撮影を趣味に加えないという選択肢はないのではないかとさえ私は思う。
趣味のアマチュア写真家を目指す者は、写真の撮影技法を学習するに際し、写真の世界で使われている専門的な用語については理解しておく必要がある。そして最低限の専門用語については覚えておかなければならない。
しかしながら、かつての銀塩フィルムで撮影して時代と異なり、現在はデジタルカメラで撮影できる時代である。ほとんどの撮影操作はカメラの本体機能で自動的に調整してくれるので、私たちは被写体にカメラを向け、構図とアングルだけに気をつけてシャッターを押すだけで良い便利な時代に生きている。
だから専門用語を理解しなくても写真を撮る分には問題ないのが実情ではある。しかしながら、より良い写真を撮ろうとすると、どうしてもカメラの仕組みや被写体の撮影状態についての知識が必要となってくるものである。
夜景写真は、街のきらめきや空のグラデーションを美しく切り取る魔法のような撮影ジャンルと言えなくもない。しかし、暗い環境での撮影はちょっとしたコツが必要である。本稿では、初心者でも幻想的な夜景を撮れるようになるためのポイントあるいはコツを紹介したいと思う。
趣味のアマチュア写真家を目指す初級者の一人として、私もデジタルカメラを用いた写真撮影技術について一緒に学んでいきたいと思う。趣味のアマチュア写真家を目指す初級者にとって、知っておくと役立つ撮影技術を集めてみた。きっと何か一つぐらいはお役に立つはずである。アマチュア写真家の端くれとして、経験からもそのように私は確信する。
夜景撮影
夜景の撮影は、都市の光を美しく捉えるための技術であると言えるかも知れない。夜景の撮影では、建物や街灯の光が主な被写体となり、これらの光を適切に調整して撮影する。
夜景撮影は独特の魅力があり、上手く撮影できたときは妙に嬉しくなるから不思議である。光と影が織りなす幻想的な世界には、昼間の風景とはまったく違うドラマがある。
夜景は、人工の光と自然の闇が織りなす絶妙なバランスで成り立っている。シャッター速度やホワイトバランスを調整することにより、まるで絵画のような世界が生まれたりもする。
ビルの灯り、車のライト、ネオンの輝きなど、街の夜はまるで光の絨毯である。その一瞬を写真に切り取ることで、日常が非日常に変わるから不思議であり、それが夜景撮影の魅力となる。
機材の準備
夜の光をしっかり捉えるためには機材の準備は欠かせない。
- 三脚は必須アイテム!
- 夜景はシャッタースピードが遅くなるから、手持ちだとブレやすい
- 三脚があれば安定して撮れる
- レリーズやセルフタイマーを活用
- シャッターを押すときの振動を防ぐために、リモコン(レリーズ)やタイマー(2秒)を使うようにする
- レンズは広角がおすすめ
- 街並みや空の広がりをダイナミックに撮れる
レンズの選択
夜景を撮影するためには、広い範囲を一度に撮影できる広角レンズが最適である。広角かた中望遠をカバーするズームレンズを装着している場合は、広角側にすればよい。
夜景撮影には、F値が小さい(明るい)単焦点レンズがあると便利である。F値が小さい単焦点レンズは、光を多く取り入れることができるため、暗いシーンでも手ブレやノイズを抑えて夜景を撮影することができる。また、人物やスナップでも、背景を大きくぼかした撮影が可能である。
夜景撮影に便利な単焦点レンズで、人気の高いレンズには下記のようなレンズが知られている。
- Canon EF 50mm f/1.8 STM
- 「ネオンレンズ」としても知られ、明るい夜景を美しく撮影するのに適している
- Nikon AF-S DX 35mm f/1.8G
- コンパクトで軽量なレンズで、夜景撮影に最適とされる
- Sony FE 55mm f/1.8
- ソニーのEマウントレンズで、高性能な夜景撮影に最適
- Sigma 30mm f/1.4 DC DN
- 広角レンジでありながら明るい絞りを持っており、夜景撮影に優れている
これらの単焦点レンズは、明るい絞り値と高い解像度を持っており、夜景の美しい光や星明りを捉えるのに最適である。私のカメラはSony α7IVであるので、Sony FE 55mm f/1.8の一択しかないが、高価なのでまだ購入できずにいる。トホホ。
撮影モードの設定
夜景撮影では、暗さに負けない工夫が必要となる。ISO感度はできるだけ小さく設定しておきたい。その分シャッター速度はさらに遅くなるが、三脚で固定しておけば、ブレる心配はないし、ノイズの発生も防ぐことができる。ISO感度はISO100~ISO400の間がお薦めである。
- マニュアルモードで撮影しよう!
- 絞り・シャッタースピード・ISOを自分で調整することで、思い通りの仕上がりになる
- 低ISO
- ISOを低め(100〜400)に設定すると、ノイズが少なく綺麗(クリア)な写真が撮れる
- 絞り設定
- 絞り(F値)を開放気味( F2.8〜F5.6)にすれば光を多く取り込める
- F8〜F16程度の絞り値を使うと風景全体にピントが合う
- シャッター速度
- 長時間露光(数秒〜数十秒)を使用すると、光のトレイルや滑らかな水の表現が可能である
- 三脚は必須であるが、1〜10秒程度で光の軌跡や雰囲気を表現できる
私たち人間の眼と異なり、カメラは暗い被写体でも明るい被写体でも、一律の明るさに写そうとする。そのため、夜空のような暗い部分や、街並みの明るい部分が入り混じる夜景撮影では、カメラの決める露出と人間の明るさの感覚が合わない。その結果、夜空が明るく浮いてしまったり、街のイルミネーションの色が白く飛んでしまったり、思うような仕上がりにはならない難しさがある。そのため、最初は露出補正無しで撮り、撮影結果を見ながら調整していくしか方法がない。これが、夜景撮影の難しさであると言えよう。
構図とフレーミング
- 前景を利用する
- 手前に建物や木を入れて奥行き(立体感)が出る構図を考えたい
- リードインライン
- 街路や川のラインを利用して視線を導くと、写真に深みが出る
撮影テクニック
夜景撮影では、長時間露光が必要なので、カメラのブレを防ぐために三脚は必須である。そして、リモートシャッターを使用すれば、カメラに触れずにシャッターを切ることができるので、さらにブレを防止できる。
夜景を撮影するには、下記のような手順を踏むと良い。
- カメラを三脚に固定して、ブレを防ぐ
- カメラの撮影モードを絞り優先モード(AまたはAv)に設定
- 絞り値はF8からF16くらいに設定し、夜景全体をシャープに
- ISO感度は100から400くらいに設定し、ノイズを抑える
- ピントはマニュアルフォーカスにし、ライブビューで拡大しながら合わせる
- レリーズやタイマー機能を使って、シャッターを切る
夜景のような暗い場所での撮影は、光が少ないため、光を多く取り入れようとシャッタースピードが遅くなり、ISO感度が高くなる。その結果、手ブレが発生して画像が不鮮明になり、画像にノイズが増えてざらついてしまう。そこで、三脚を使うとブレないのでシャッタースピードを遅くできる。
したがって、夜景を綺麗に撮るために最も効果があるのは、三脚を使うことであると断言できる。
尚、三脚を使用する際は、誤作動を防ぐため手ブレ補正機能をオフに設定しておこう。
また、シャッターを押すときの振動でもブレが発生することがある。レリーズが使用できない場合は、セルフタイマーを2秒に設定すると、シャッターを押した際のブレを防ぐことができる。
では、三脚を持っていない場合はどうしたらよいだろうか?
三脚がない場合は、近くの壁や柱に寄りかかったり、手すりなどをカメラの支えにして、ブレを軽減させるのも一つの方法である。
それすらできないような場合は、手ブレを防ぐためにシャッター速度を速くすることを最優先しなければならない。ISO感度を手動で高く設定する。設定できるISO感度の上限は機種によって異なる。ISO6400やISO12800など、高くすればするほどシャッタースピードは速くなり、手ブレを軽減することはできる。しかし、画像にノイズが入り、解像感が失われたりする場合もある。画像を拡大しなければ、OKという場合もあるので、三脚を使用できない場合には試してみる価値がある。
また、夜景撮影のコツとしては下記のようなものがよく知られている。
- ゴールデンアワー後のブルーアワー
- 日没直後のブルーアワーは、空が美しい青色になり、建物のライトアップも映える時間帯である
- トワイライトタイムも狙い目!
- 日没後30分以内は空に青みが残っていて、街の灯りと絶妙なバランスになる
- 光の反射(リフレクション)を活かす
- 水面や窓ガラスに反射した光(映り込み)を活かすと、幻想的な雰囲気を持った写真が撮れる
- ホワイトバランス
- 夜景撮影では自動ホワイトバランスよりも、画像処理アプリを使って、タングステンや蛍光灯モードを試してみると良い結果が得られることが多い
- ブラケティング
- 露出の異なる写真を複数撮影し、後で合成して最適な露出を得る方法である
Mモード/マニュアルで撮影
Pモード(プログラムオート)での撮影に慣れてきたら、Mモード(マニュアル露出)に挑戦してみることにしょう。
Mモードでは絞り(F値)とシャッター速度の両方を自分で細かく設定できる。夜景の明るさ、時間帯や周囲の明るさなど撮影環境に応じて、設定を変更しながら何枚か撮影して感覚をつかみ、撮りたいイメージに近づけていく。
日の出前や日没後のマジックアワーと呼ばれる時間帯は、空の色が刻々と変化しドラマチックな写真を撮るチャンスである。マジックアワーの撮影は、F値をF8からF13を目安に設定し、シャッタースピードを調整しながら光の量をコントロールするのがお薦めである。
シャッタースピードは2秒からから始めて、明るさを調整していく。スローシャッターになるので必ず三脚を使い、セルフタイマー2秒も活用しょう。
ホワイトバランスで色合いを調整
撮影画像の全体的な色合いの調整はホワイトバランスで変えることができる。これがデジタル画像の便利な点である。銀塩フィルムのカメラで撮影していた頃とは隔世の進歩である。
デジタルカメラが自動で決めるオートホワイトバランス(AWB)でも忠実に再現してくれるが、色味は撮影者の好みや意図によってさまざまであるので挑戦してみては如何であろうか。
ホワイトバランスを調整をすることで、実際に自分が見た夜景のドラマチックな印象や雰囲気が伝わりやすい写真を残しておくことができるかも知れない。
露出補正、ホワイトバランス、クリエイティブルック/クリエイティブスタイルといった調整機能を自由に使って、お気に入りの一枚を残したいものである。
あとがき
夜景撮影は、光と影のバランスを楽しむアートと言えるかも知れない。最初は難しく感じるかもしれないが、撮るたびに新しい発見がある。
夜は人も少なく、空気も澄んでいて、撮影に集中しやすい時間帯である。静かな環境でじっくり構図を練るのも醍醐味の一つとなる。
濡れた路面や水辺に映る光は、夜景ならではの魅力となる。雨でできた水たまりの水面の反射が美しい。雨の日こそ、幻想的な写真が撮れるチャンスになるから、雨天だからと嘆く必要は全くない。「発想の転換」を大いに活用しよう。
暗い環境での撮影は、設定や構図の工夫が必要である。だからこそ、撮るたびにカメラの腕が上達すると思う。実際に夜景撮影をすることで私たちの撮影技術も磨かれる。
日没直後の「マジックアワー」は、空の青と街の灯りが混ざり合う最高の時間帯である。この瞬間を狙うのが夜景撮影の醍醐味の一つと言えなくもない。まさにトワイライトの魔法と呼ぶに相応しい。
夜景撮影は、夜の景色を切り取るだけの単なる記録ではなくて、大げさな表現ではあるが、「夜の光の物語を紡ぐアート」のようなものであると言えるかも知れない。
初心者におすすめの練習法としては、次のような方法がある。
- まずは街灯やイルミネーションから
- 明るくて撮りやすい被写体から始めると、設定の感覚がつかみやすい
- 同じ場所で設定を変えて撮ってみる
- F値やISOを少しずつ変えてどんな違いが出るか試してみる
【参考資料】
夜景撮影の設定方法!一眼レフカメラ初心者でも出来る基本編 | フォトグラファン (photografan.com) |
きれいな夜景写真の撮り方とは?カメラの設定も紹介! (goopass.jp) |
星空を一眼レフで撮影するコツ。カメラの設定も解説 (goopass.jp) |
【キヤノン公式】夜景の撮影は難しい?初心者でもかんたんキレイに撮れるテクニック|カメラ初心者教室 (canon.jp) |