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ガーデニング

素人の園芸を魅力的な趣味に変える苔【コケ】の魅力、種類と利用法

はじめに

私の友人の一人に苔【コケ】の鑑賞を趣味にしている者がいて、彼は苔を観察するためだけの目的で苔寺として知られる西芳寺をはじめとする寺院の庭園や各地の山林・渓谷を旅している。

私の庭を観た際も何種類か育てている苔の方にばかりに関心を寄せ、私が丹精こめて管理している庭木の方にはあまり興味を示さなかった。

彼に苔の魅力を尋ねると話が尽きることなく延々と続く。それほどに苔は魅力的らしい。私は彼のレベルの域には全く至ってはいないが、ガーデニング(園芸)でも苔を利用するので、必要最小限の苔の知識はあるつもりだ。

コケの正式な呼び名は、蘚苔類【せんたいるい】である。その蘚苔類は蘚類【せんるい】と苔類【たいるい】に分類できる。園芸用に使用するのは蘚類の方であり、苔類は使用しない。

苔類の代表的なコケがゼニゴケであり、私が目の敵にしているコケでもある。したがって、本稿で苔【コケ】と呼んでいるものは総じて蘚類のことである。


<目次>
はじめに
購入可能な苔の種類
  • オオカサゴケ
  • カモジゴケ
  • コツボゴケ
  • シッポゴケ
  • シノブゴケ
  • スギゴケ
  • スナゴケ
  • タチゴケ
  • タマゴケ
  • ツヤゴケ
  • ネジグチコケ
  • ハイゴケ
  • ハリカネゴケ
  • ヒノキゴケ
  • フデゴケ
  • ホソウリゴケ
  • ホソバオキナゴケ
  • マンネンゴケ
苔の利用法
苔の育て方
苔の魅力
あとがき

購入可能な苔の種類

苔の種類は世界に数万種類以上もあり、日本でも1,600種以上もあるというからそれらすべてを網羅するなどできない。

私が興味を持っている苔は園芸に利用できる苔であって、それ以外の苔には今のところ関心はない。この点が友人と私の苔に向き合う姿勢の違いである。当然ながら、彼の苔の種類についての知識には敵わない。

私の苔の知識はせいぜい日本庭園などでよく見かける苔ぐらいである。あるいは日本の苔専門ショップで購入できる苔しか知らない。だから両手両足の指で十分に数えられる程度の種類しか知らないが、園芸に利用する上では全く困ったことがない。

ゼニゴケ(苔類【たいるい】)は今回のコケのリストからは除外する。除外理由については別記事を読んで頂ければ幸いである。


オオカサゴケ

オオカサゴケ

オオカサゴケは、ハリガネゴケ科カサゴケ属の蘚類。大きな傘を開いたような姿をしている、比較的大型の苔である。山奥の多湿な渓流沿いや、常に水がしたたり落ちている涼しい山奥の斜面などに広く分布している。


カモジゴケ

カモジゴケ

カモジゴケは、シッポゴケ科の蘚類。長さ4~7mm程度の葉は先が針状に伸びる。弱い光でも育つので室内では比較的育てやすい。一方、乾燥や高温多湿の環境に弱い特徴がある。水やりの頻度や風通しに注意を払う必要がある。


コツボゴケ

コツボゴケ

コツボゴケは、チョウチンゴケ科 ツルチョウチンゴケ属の蘚類。葉は透明感とツヤがある。半日陰の水気のある場所を好み、明るい場所であれば常に水がかかるような場所でも育つ丈夫な苔である。しかし、元気で綺麗な状態で育てるには湿度が高い場所ではなく、適度な排水性のある土壌がよい。


シッポゴケ

シッポゴケ

シッポゴケは、シッポゴケ科シッポゴケ属の蘚類。松林などの山林の腐葉土の上に自生する。半日蔭と湿気を好み、直射日光を嫌う。
乾燥には比較的強いものが多い。


シノブゴケ

シノブゴケ

シノブゴケは、シノブゴケ科シノブゴケ属の蘚類。葉を広げた様子がとてもきれいな苔。山や林の湿った環境を好む。半日陰や日陰を好み、日光が苦手のようだ。


スギゴケ

スギゴケ

スギゴケは、スギゴケ科の蘚類。名の由来は、針葉樹のスギの葉に似ているところから。大型で直立するため庭園の石材のそばにあると映える。そのため庭園材として最もよく使用される。日向から半日陰まで様々な場所で生育する。日陰の湿った場所だと群生し、寒さや乾燥にも強いが、高温多湿には弱いという。


スナゴケ

スナゴケ

スナゴケはギボウシゴケ科の蘚類。茎を3~5cmほど不規則に伸ばし、卵型の葉っぱを密に茂らせる。日当たりがよい砂地や岩の上に自生する。乾燥高温低温湿度といった環境に強く直射日光にも負けずに育つ。雨上がりの時には特に綺麗になる。盆栽の根元に張り付けたりすると結構良い感じになる。


タチゴケ

タチゴケ

タチゴケは、スギゴケ科タチゴケ属の蘚類。直立型で仮根があり、茎長は4〜5cm。葉は透明感のある緑色をしている。山地の半日蔭の土壌の上に生育する。


タマゴケ

タマゴケ

タマゴケは、タマゴケ科の蘚類。春になるとかわいらしい丸い茶色の朔【さく】(胞子嚢;胞子の入った袋)をたくさん立ちあげる。湿度の安定した日陰の場所でよく育つ。乾くと縮れるが、湿気を帯びている時は黄緑色の葉色が美しく、半球状の塊になってこんもりしているのが魅力的な苔である。


ツヤゴケ

ツヤゴケ

ツヤゴケは、ツヤゴケ科の蘚類。光沢のある黄緑色からやや褐色を
帯びた緑色まである。半日陰の砂質土や岩上、樹の根元などを覆うように広がる。


ネジグチコケ

ネジグチコケ

ネジグチコケは、センボンゴケ科の蘚類。湿っているときは星形のビロードのようでかわいい姿をしているが、乾燥すると目立ない。乾燥に強いので公園や庭などでも生育する。


ハイゴケ

ハイゴケ

ハイゴケは、ハイゴケ科の蘚類。ふかふかのマット状でビロードのような肌触り。日当たりのよい場所でもよく見られる。乾燥にも強く、湿度さえあればどんな環境でも育つ丈夫な苔ではあるが、蒸れやすいという性質を有する。


ハリカネゴケ

ハリカネゴケ

ハリカネゴケは、ハリガネゴケ科ハリガネゴケ属の蘚類。葉は倒卵形で先が尖る。葉の長さは2~5 mmで、茎の長さは1~3cm。雌雄異株で、春から夏にかけて胞子体を形成する。胞子体は約3cmの赤い蒴柄をもち、その先端に蒴がつく。蒴は円筒形で、長さは3.5~5mm。蒴ははじめは緑色であるが、次第に赤色に着色していく。岩の上や木の根元、屋根の上などに生育する。


ヒノキゴケ

ヒノキゴケ

ヒノキゴケは、ヒノキゴケ科の蘚類。丸みのある苔姿と柔らかな葉の印象で、色味も鮮やかで美しい。名の由来は針葉樹のヒノキの葉のようにみえることから。湿度の高い山地の日陰になる場所を好む。乾燥が苦手で、乾燥すると内側に巻いていく。寒い風や直射日光なども嫌う。


フデゴケ

フデゴケ

フデゴケは、シッポゴケ科ツリバリゴケ属の蘚類。植物体の下部は黒褐色、上部に向かうにつれ緑色~黄緑色になる。日当たりが良く、乾燥した場所に自生する。湿度が高い状態が続くと枯れる。


ホソウリゴケ

ホソウリゴケ

ホソウリゴケは、ハリガネゴケ科ウリゴケ属の蘚類。乾燥していない時は茎かから葉が離れて開き、上から見るとふさふさとした葉先がたくさん見える。生命力が強く、乾燥の強い場所や直射日光の当たる場所でも生育する。


ホソバオキナゴケ

ホソバオキナゴケ

ホソバオキナゴケはシラガゴケ科の蘚類。キラキラ輝く銀色の葉先を持つ美しい苔であるため、苔専門ショップでの人気も高い。乾燥にも強く、縮みが少なく形状が変化しにくいのは生育が遅いためである。繁殖力が高いので園芸には最適の苔といえよう。


マンネンゴケ

マンネンゴケ

マンネンゴケは、コウヤノマンネングサとも称され、コウヤノマンネングサ科コウヤノマンネングサ属の蘚類。直立型で地中には地下茎を這わす。茎の上部に細かいぎざぎざ状の緑色~淡い緑色のやわらかな葉を広げる。湿度を好み、乾燥には弱い。直射日光に弱く、季節の変わり目や冬に葉が茶色くなりやすい。 


苔の利用法

苔はいろいろな用途に利用できるようだ。私は苔の利用法としては庭園と盆栽しか知らなかったが、コケに魅了され、コケを趣味にする女性(「苔ガール」と称されるらしい)の間では「コケ玉」作りが人気らしい。ネット検索をしているとコケ玉作りや苔ガールというワードが目に留まる。


また最近、耳にする機会が増えてきたSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)にも苔が貢献できるという。どういうことかというと屋上緑化壁面緑化に苔を利用することで、その断熱効果で空調に必要なエネルギ-消費を抑制する、さらには苔による二酸化炭素や大気汚染物質、及び重金属類を吸収することに役立っているということである。

苔の種類にもよるが、スナゴケハイゴケは乾燥に強く、土壌を必要としないことから、緑化に最適な建築資材となるらしい。


そもそも私が苔に興味をもったきっかけは苔の美しさを庭造りに活かしたいと思ったからである。したがって、私が語ることができる分野は、苔を庭園や園芸に利用する話に必然的になってしまう。そして苔を庭園や園芸に利用する方法は私が書くまでもなく下記の記事が大いに参考になる。

【プロが教える】苔を使ったおしゃれなお庭を実現する方法。苔の魅力にハマる。小さなスペースからチャレンジしよう。

では私からの新たな提案は何かということになる。私が苔を庭園造りに利用する理由の一つは、除草対策である。

長年、庭の雑草と格闘していると、長期的というか、戦略的には庭を雑草が生えにくい環境にすることが必要である。そのための戦術として苔をグランドカバーにしたいと考えている。

現在は、グランドカバーとしてジャノヒゲの一種であるタマリュウを植栽しているが、スナゴケハイゴケをグランドカバーにできるのではないかと考え、少しずつではあるが面積を増やしている最中である。苔が密集した場所は確かに雑草が生えてきていないので効果はあると確信している。

問題は庭を苔で完全に覆うまでには今からかなりの期間を要することである。しかし、それも趣味の一つと考えれば長期にわたって楽しむことができるということなので苦にはならない。

友人から教わった変わった種類の苔も専門ショップから入手して庭のアクセントにしてみようかと思っている。そうすれば、友人とコケ談義ができるようになるかも知れない。


苔の育て方

苔の育て方や増やし方については下記の記事が大いに参考になる。私ような初心者にとっては有難い記事となっている。

自宅でできる苔(コケ)栽培。コケの育て方、増やし方について | For your LIFE (fumakilla.jp)

苔を庭で育てるポイントは、庭の環境(日光の当たり具合と湿度、土壌の酸性度など)を調べ、その環境に適した種類の苔を選択することである。

後は適宜、散水すれば良いだけと言いたいところだが、苔が密集するまでは除草が必要になる。雑草が小さいうちに除草する必要があるのでピンセットを使用しなければならない。これが結構な手間になる。雑草が大きくなってから除草しようとすると苔の群生を破壊してしまうことになるからである。

まあ、こんな手間暇をかけることは現役のサラリーマンの間はできないことではあった。しかし、リタイアした今の私ならできるような気がしている。苔を庭で育てること自体を趣味にすればよいだけのことなのだから。


苔の魅力

苔の魅力を言語化するのは非常に難しいことに気付いた。私の友人が苔の魅力を延々を語るのは本当にすごいと思うが、文章にするとその熱量はきっと伝わらないと思う。

まず自分の眼で実際に苔を鑑賞したときを思い浮かべてほしい。他の植物にはない癒しが感じられるはずだ。単純な緑色では光の当たり具合や湿度を感じて様々な表情を見せてくれる。

勿論、苔の種類が違えば、その表情は変化に富む。日本庭園で群生している苔は特に表情が豊かだ。どの風景にも適合して、違和感を一切感じさせない。主役の庭木を引き立て、かつ、自らも存在感を示す生物が苔以外にあるだろうか。何の変哲もない岩や石ですら主役のごとく引き立たせる苔の魅力をどう言葉で伝えれば良いのだろう。

自分の庭や盆栽で育てた苔なら手で触れることもできる。この触感の素晴らしさはどう言葉で伝えればよいのだろう。実際に触ってもらって、感じてもらうしか方法がないように思う。園芸で苔を扱うことの魅力は、自らの手で触れることができる点である。苔寺で知られる西芳寺では許されない行為であるので、是非、自分で苔を園芸に取り入れてもらいたいと思う。

目で見て感動し、手で感触を味わった次は、臭い(香り)である。実際はそんなに匂うわけではない。蘚類はむしろ無臭に近い。では何故、苔の香りを論じるかと不思議に思われるであろう。当然である。しかし、雨上がりの庭で、苔がより緑色に映えるとき、その場の空気はとても気持ちの良い香りをしている(気がする)のである。これも自分の庭でなければ、無理な体験の一つと言えるかも知れない。

苔の庭には静寂さが似合う。セミがやかましい夏よりは彼らのいない季節の方が苔の庭は魅力を増す。静寂もまた五感を刺激するから不思議である。

私はまだ苔を味わったことがないから味覚については知らない。しかしながら、ちっぽけな苔がこれほどまでに私達の五感を刺激するとは驚きである。

是非、この小さな苔の世界を覗いてみてほしい、そして苔の魅力を実感してもらいたい。私の文章力では決して伝えられない。まさに、「百聞は一見にしかず」である。


あとがき

本稿を書いていて「山ガール」ならぬ「苔ガール」の存在を知った。苔ガールとは、苔に魅了された苔好きの女性のことを指すそうだが、その名前がメディアに取り上げられたのは今からすでに10年以上も前のことだという。恥ずかしながら、「苔ガール」の存在を今日まで知らなかった。

多くの女性が何かに興味をもって没頭するとメディアも注目するものであるらしい。登山を趣味にしている女性、「山ガール」しかりである。

オジサンが何かに夢中になっても世間は無視状態で「勝手にすれば」の状況ではある。別に僻んでいるわけではなく、それが世間の常識だと私自身も思ってきた。

ところが冷静に考えてみると、ある問題に気付いてしまった。「苔ガール」や「山ガール」にしろ、あるいは「釣りガール」は、元々、オジサン(男性)が趣味としてきたものに女性が進出してきたというだけであって、ジェンダーレスの現代では当然の傾向といえるのだ。別に目くじらを立てる必要は全くない。

冒頭から話が脱線してしまっていて恐縮であるが、何が言いたいかというと、趣味にジェンダーは関係ないということである。

苔を園芸に利用したいというオジサンの趣味は、女性にも是非、共有してもらいたい。一度、体験すればその楽しさに魅了されるはずである。園芸やガーデニングはオジサンの趣味だと思っているようで、全くもって興味を示さない私の妻に、このことを強く主張したいのである。


【参考資料】
コケ植物|岡山県自然保護センター|里山の自然にふれてみよう
自宅でできる苔(コケ)栽培。コケの育て方、増やし方について | For your LIFE (fumakilla.jp)
【苔図鑑】苔の名前、種類を写真で確認! | earth green
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