はじめに
山口県萩市を旅した際、松陰神社を参拝し、松下村塾を訪ねて吉田松陰をはじめ幕末の志士たちに想いを馳せて来た。
吉田松陰は幕末物の映画やドラマでは必ず重要人物の一人として登場するキャラクターなので名前はよく知っていたが、実のところどんなに偉大なのかは実感として理解していなかった。山口県萩市を旅することでわずかながらでも吉田松陰という幕末に実在した偉人と彼の弟子たちについて学ぶことができたと思う。
また、吉田松陰の弟子ではないが接点はあったであろう坂本龍馬や中岡慎太郎にも想いを馳せてみた。
吉田松陰と松下村塾
幕末の志士たちの精神的支柱であった吉田松陰は、自ら主宰する松下村塾の掛け軸に「知行合一」の書を掲げていたと言われている。
『知識は身につけるだけでは不十分で、行動に移すことで初めて意味を為す』ということで、『知識は実践してこそ役に立つ』という意味だと思う。
吉田松陰は、長州(山口県)に生まれた稀代の思想家であり、教育者であった松陰先生の松下村塾が松陰神社(山口県萩市)に残されている。
松陰先生の終生の信条を表す言葉として、『至誠にして動かざる者は、未だこれ有らざるなり』があり、これは松陰先生が愛読した「孟子」の一節だという。
「どこまでも誠を尽くし、信じ抜いて行動を起こす」ことを最期まで貫き、当時の為政者に警戒されて、わずか30歳の若さで斬首された(安政の大獄)。
しかし、その短い人生ではあっても、松陰先生から影響を受け、明治維新の原動力となった幕末志士の数は多く、松下村塾からも多くの有能な人材が輩出されていることに驚く。
松陰先生は、まさに”King of kings”ならぬ ”Great man of great men” だと思う。
「夢なき者に理想なし、理想なき者に計画なし、計画なき者に実行なし、実行なき者に成功なし。故に、夢なき者に成功なし」(吉田松陰)
かつてのNHK大河ドラマ「花燃ゆ」で松陰役の伊勢谷友介さんが塾生によく問いかけていた言葉、「君は何を志しますか?」は上述の教訓に由来しているかと思われる。
松陰先生が高杉晋作にかけた言葉として伝えられている「死して不朽の見込みあらばいつでも死ぬべし。生きて大業の見込みあらばいつでも生くべし」も生きることの大切さを説いた言葉だと理解し、私は好きである。
高杉晋作
私は、高杉晋作にも何故か惹かれる。若くして無念の病没をしているが(享年29歳)、激動の幕末を太く短く、スマートに生きたイメージがある。
NHK大河ドラマなどで魅力的な人物として描かれていることが多いからでしょうか?
人は人 吾は吾なり 山の奥に 棲みてこそ知れ 世の浮沈
(高杉晋作)
面白きこともなき世を面白く、住みなすものは心なりけり
(高杉晋作)
実際に、魅力的な人だったのでしょうね。ナイスガイだと思う。
坂本龍馬と亀山社中
幕末の志士の中でも知名度が高く、皆に好かれる人気者と言えば「坂本龍馬」ではないだろうか?
知名度が高いのは幕末を描いた小説やドラマ・映画には不可欠な登場人物だからでしょう。
ベストセラー作家であった司馬遼太郎さんが小説(『竜馬がゆく』)で魅力的な主人公として描いているし、ドラマや映画では人気俳優が龍馬を演じることが多いように思う。
これらの影響が大きく、龍馬を人気者にしているのだと思う。私もその影響をもろに受けた一人であり、会ったこともない坂本龍馬が大好きである。
龍馬の故郷、土佐の桂浜(高知市浦戸桂浜)は、浦戸湾口、龍頭岬と龍王岬の間に弓状に広がる海岸で、東端の龍頭岬には坂本龍馬の銅像がある。
海岸の背後には松林があり、奇麗な砂浜と紺碧の海が調和する見事な景勝地となっている。高知県を代表する観光名所というのも納得である。近くの山手には、「坂本龍馬記念館」もある。
龍馬の功績の一つで、よく知られているのは薩長同盟成立の立役者となったことである。
敵対していた薩摩藩と長州藩の同盟を仲介し、結果的に明治維新を前進させた。当時雄藩であった薩摩藩と長州藩が敵対していたら新しい日本は生まれていなかったかも知れないと言われている。だからこの薩長同盟の仲介を龍馬の功績の第一と考えるのは当然である。
しかしながら、龍馬らしい功績は、日本最初の商社、海援隊(前身は亀山社中)を設立したことだと私は思う。
海援隊は、貿易会社と海軍の2つの性質をもっていたようである。海援隊には、陸奥宗光(山縣内閣の農商務大臣、伊藤内閣の外務大臣を歴任)もいた。
龍馬の死後、海援隊は、同郷の岩崎弥太郎に引き継がれて、やがて日本郵船、三菱商事に発展していくわけであるからすごいことである。岩崎弥太郎も偉人だけれど、龍馬には先見の明があったのだと思う。
中岡慎太郎
京都河原町の近江屋で龍馬と最期を共にした盟友、中岡慎太郎の像は室戸岬(室戸市室戸岬町)に建立されている。
中岡慎太郎は、薩摩藩と長州畔の有力者を説得して回り、薩長同盟の成立に尽力したと伝えられている。薩長同盟成立に貢献した功労者の一人である。
知行合一【ちこうごういつ】 |
知識と行為は一体だということ。真の知識は実践によって裏づけられていなければならないということ。中国明の時代、儒学者王陽明が、朱子学の大成者朱熹の先知後行説(広く知をきわめてからでなければ実践できないとする説)に対して唱えた陽明学の中心思想。「知行合一説」の略。 |