はじめに
NHK「連続テレビ小説」第104作目、『おかえりモネ』は女優の清原果耶さんが主演のドラマで、ヒロインがあるきっかけで興味を持った天気予報を通じて人々の役に立ちたいと気象予報士を目指して上京し、やがて故郷の島へ戻り気象予報士としての能力を活かして地域に貢献する姿を描いたものであった。
このドラマの中で観天望気で天気を予想する場面が一度ならず登場した。私も学生時代にワンダーフォーゲル部で山登りをしていたから観天望気にも関心を持っている。
特に山の天気は変化が速いので、ラジオしか携帯できなかった当時は自分の眼で空模様を眺め、天気の変化を予想し、悪天候に対応するしか術はなかった。
IT技術が進歩し、誰もがスマートフォンを手にする現代では、天気予報はリアルタイムで入手することができる。しかしながら、観光地における局地的な天気予報は無料のサービスで入手できない。そんなときには観天望気の知識が役に立つ。
私は、旅行先の観光地でも空を見上げて雲の様子を眺めることがよくある。別に観天望気を毎度しているわけではないが、旅が天候に左右されるときには天気予報とは別に朝の雲の様子で判断するようにしている。妻が夕陽を見たいと言った日の天気予測は特に念入りにしなければならない。そうゆう習慣を長年続けて来たので観天望気についてのウンチクはちょっとウザいと思われるかも知れない。
スマートフォンで天気予報がリアルタイムで入手することができる現代においても観天望気の知識が役に立つことはNHKの朝の連続テレビ小説でも放送されていた。たまには空の雲をみて天気の変化を予想してみては如何か? 予想が当たっても外れてもそれなりに楽しいものである。何より雲の美しさに心が惹かれることの方が多い。それだけでも楽しいものだ。
<目次> はじめに 観天望気 基本となる雲形10種と天気 巻雲(絹雲、すじ雲、はね雲) 巻層雲(薄曇) 巻積雲(鰯雲、鯖雲、うろこ雲) 高積雲(むら雲) 高層雲(おぼろ雲) 積雲(わた雲、むくむく雲) 積乱雲(雷雲、入道雲) 層雲(霧雲、山かつら) 層積雲(曇雲) 乱層雲(雨雲、雪雲) あとがき |
観天望気
空を見上げて、周囲の大空を見渡し、そこに浮かぶ雲の形や、その雲の移動する方向、速さ、雲の形の移り変わる様子、大空の澄み具合、遠方の山の見え具合など、自分の眼で見えるありとあらゆる情報を基に、今後の天候の変化を予想すること、それが観天望気というものだとクラブ(大学時代のワンダーフォーゲル部)の先輩に教えられたものである。
今でもその知識は少しは残っているはず、と思いたい。実は、旅先で空を見上げて天候の変化をチェックすることがある。観光地では天候に恵まれることが最高のご褒美とも言えるからである。
基本となる雲形10種と天気
基本となる雲形は10種類ある。雲形は、雲が出現する高度と雲の形の組み合わせで分類されている。
雲が出現する高さでの分類は、高度5000m以上に現れる上層雲(巻雲、巻層雲、巻積雲)、高度2000~7000m位に現れる中層雲(高積雲、高層雲、乱層雲)、最も低いところに現れる低層雲(積雲、積乱雲、層雲、層積雲)の3分類である。
頭に「巻」がつけば上層雲と覚えれば忘れない。
雲の形による分類は、層雲(空一面に薄く層状に広がる雲)と、積雲(ひとつひとつの雲が丸い塊になっている雲)の2分類である。
層積雲は、積雲がつながって層になっている、積雲と層雲の両方の形を併せ持った雲である。
巻雲(絹雲、すじ雲、はね雲)
高度約10,000mの高い上空に出現する。青空高く絹糸を引いたような、真っ白い薄いかぎ状になった筋のある雲、または鳥の羽のような、あるいは刷毛でなぞったような、繊維状の、細い雲が散らばった形の白い雲である。
巻雲が見られる段階では、その後少なくとも数時間は晴天が続くと考えられ、すぐに雨が降る心配は少ない。
巻層雲(薄曇)
全空を覆うように現れるうすい雲。 この雲が太陽や月にかかると暈(かさ:光の輪のようなもの)ができることがある。
この巻層雲が巻積雲(うろこ雲)に変わっていくと天気が崩れる傾向にある。
巻積雲(鰯雲、鯖雲、うろこ雲)
高度7000~8000mの高い上空に出現する秋を象徴する美しい純白のうろこ状の雲である。
空気が乱れている状態で発生するため天候悪化の前兆を示す。 少ない巻積雲が短時間で全空を覆うようになったり、塊が大きくなって低くなってきたら天候悪化の兆しと考える。
この雲は皆がよく知っており、地上で見る分には綺麗で好きな雲である。しかし、登山中は注意すべき雲の一つである。
高積雲(むら雲)
巻積雲に次いで美しい雲である。この雲は大きな丸みのある塊で、白色か淡灰色をしていて、一つ一つの雲塊に陰影がある。
群れをなしていたり、時には線状の場合もある。群れの著しい時にはその中央部で雲塊が互いに連なっていることもある。
この雲の量がだんだんと増加してきたり、あるいは各雲塊の縁が丸みを帯びて雲塊が大きくなりつつあるように見える場合は、低気圧が近づいて大気中の水分が増加している徴候である。すなわち天気が崩れる前兆であると判断する。
一方で、雲塊の縁がだんだんと消えていくように見える場合は、天気が安定している徴候であると判断してよい。
この雲も綺麗だが、天候悪化に繋がる場合が多いので、登山中にはあまり見たくない雲である。
高層雲(おぼろ雲)
高度2,000~7000m程度に出現する雲である。空全体を一様に覆うことが多く、大抵の場合はすりガラスを通した感じのぼんやりと霞んで見える程度である。
これが、太陽が眩しいほど見える巻層雲との大きな違いである。高層雲が厚くなると、日中でも周囲が薄暗くなり、影が見えにくくなる。
特にこの高層雲の下に黒い雲塊(片積雲:積雲が強い風に流されて変形したもの)が混じって見え、この黒い雲が流れていく方向が上層の高層雲と逆の場合、あるいは進行方向がまちまちである場合には、悪天候の前兆である。雨が確実に降ると判断してよい。
積雲(わた雲、むくむく雲)
雲の上面はむくむく泡のように丸く盛り上がっており、雲の底は水平である。輪郭がはっきりした雲で、日中の天気の良い日に現れるのが普通である。
積雲が一番多く現れる季節は夏である。
積乱雲(雷雲、入道雲)
積雲が強烈な日差しを受けて巨大に発達した雲であり、地上近くから上空まで高くそびえ立つ、最も雄大な雲と言える。雲底から雲頂までの高度は12,000 メートルを超えることもあるという。
強い上昇気流の影響で垂直方向へ発達し、雲頂が時には成層圏下部にも達する場合がある。
雲の下部や雲底よりも下では、激しい雨、場合によっては、雹(ひょう)や霰(あられ)が降ることもある。
積乱雲による降水量は、乱層雲による雨より格段に多く、短時間で大量の雨を降らせる。さらに、積乱雲は帯状に連なって発生する場合もあり、集中豪雨の原因になることがある。
積乱雲は、夏場に発生するものだと私は思っていた。積雲が最も多く発生するのが夏だからである。
しかしながら、積乱雲の発生頻度は、日本では冬場に最も多く発生しているという。特に冬の日本海側や山岳地帯に毎日のように雪を降らせ、時に大雪をもたらしているのは、実はこの積乱雲だという。これが、今回、ブログを書いていて学んだことである。
層雲(霧雲、山かつら)
比較的一様な雲の層で、霧が厚くなったような感じの雲である。朝早くに山頂近くに立つと層雲が谷間を埋めていることがある。おそらく谷底からこの層雲をみれば雨雲である乱層雲と変わらないのではないだろうか。
層積雲(曇雲)
高度2,000 m以下に出現する雲で、曇りの日に良く見られる。暗灰色のかさばった大きな塊となって、その雲間から青い空がのぞかれる。
形は主に層状、波状、サヤ状、ロール状であり、しばしば全天を覆うこともある。層積雲が乱層雲になることもある。
乱層雲(雨雲、雪雲)
地上から中層までの高度に出現する雲で、広い範囲に広がる雨雲である。いわゆる悪天候の主役の雲である。
特に、山登り中は会いたくない雲である。この雲に巻き込まれないように注意して空を観察するのが観天望気の目的とも言える。
あとがき
気象予報士でもない私の観天望気の記事を最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
晴れた日の積雲(わた雲/むくむく雲)を眺めるだけで心が穏やかになります。この記事がきっかけで読者の皆様にも空に浮かぶ雲を眺める機会が増えたのなら望外の喜びです。
【参考資料】
観天望気【かんてんぼうき】 |
雲や風の動きなどを観察して、経験をもとに天気を予想すること。 |