はじめに
人前で話をすることは認知症(アルツハイマー型認知症または血管性認知症)や軽度認知障害(MCI)の予防の一環として脳トレ効果が期待できると言われている。その理由としては、以下の点が挙げられるという。
- 記憶力の刺激・向上
- 話す内容を準備して覚えるプロセスが、脳を活性化させる
- 話の流れを瞬時に思い出す訓練にもなる
- コミュニケーション能力の向上
- 言語を使い相手に伝える行為は、脳の複数の部分を活発に使う
- 適切な言葉選びや、分かりやすい表現を心がけることで、言語能力が向上する
- 集中力と注意力の鍛錬・向上
- 聴衆の反応を見ながら話を進めることで、瞬間的な判断力や集中力が鍛えられる
- 創造力と柔軟性の鍛錬・向上
- 予想外の質問や反応に対応する際、瞬時に新しいアイデアを生み出したり、柔軟に考える力が養われる
- 聴衆の反応に応じて話の方向性を調整することで、脳が瞬時に対応する力を鍛える
- 社会的つながりの強化
- 人との関わりは心身の健康に大きな効果をもたらし、認知機能を維持する助けになる
- ストレス耐性の強化
- 緊張やプレッシャーの中で話す経験を繰り返すことで、ストレスに対する耐性が高まる
これらの効果を享受するためには、定期的に人前で話す機会を持つことが大切である。例えば、プレゼンテーションやグループディスカッションに積極的に参加するのも良い方法である。また、日常的に人前で話す機会を増やすことで、より大きな効果が期待できるかも知れない。
ただし、効果には個人差があるため、他の認知症予防活動(例えば運動やバランスの取れた食事)と組み合わせて行うのがベストであるのは確かなようだ。
<目次> はじめに 人前で話す機会の具体例 ボランティアとして朗読を人前で行う セミナー講師を引き受けてみる あとがき |
人前で話す機会の具体例
人前で話すことの具体的な例には、以下のような場面がある。
- プレゼンテーションや会議
- 仕事や学校で、自分のアイデアや成果を伝える機会
- スピーチ
- 結婚式やイベントで祝辞を述べたりする
- 講演やセミナー
- 講師として、知識を共有するための講義をする
- 自分の専門分野について講演を行う
- パネルディスカッションやディベート
- 複数の人と公開討論や意見交換を行う
- ワークショップやデモンストレーション
- 新しいスキルや製品を紹介するための実演
- 地域活動やボランティア
- 地域のイベントで司会をしたり、取り組みを紹介する
- 演劇や朗読
- 舞台で台詞を話したり、観客に物語を朗読する
これらのどれも、話す内容や対象によって異なる準備が必要であるが、それぞれが貴重な経験となり得る。私たちシニア世代にとってどの場面が一番興味を惹かれるかは各人のキャリアによって異なるかも知れない。しかし、思い切って挑戦してみることで得られる充実感も大きいはずである。
ボランティアとして朗読を人前で行う
ボランティア活動として朗読を人前で行うことは、非常に効果的な脳トレになる。以下のような理由から、認知機能の向上に役立つと言える。
- 記憶力の向上
- 原稿の内容や読み方を事前に練習する際、記憶力が鍛えられる
- 集中力の強化
- 正しい発音や抑揚、速度を意識して読むことは、集中力を高めるトレーニングになる
- 言語能力の向上
- 声に出して文章を読むことで、言語の構造を理解し、語彙力や表現力を高める効果がある
- 感情表現と共感力の強化
- 聴衆に伝わるように感情を込めて朗読することで、共感力や感受性が磨かれる
- 社会的つながりの強化
- ボランティア活動として他者と関わることで、孤立感の軽減や精神的な充実感が得られ、心身の健康をサポートする
- ストレス耐性の向上
- 多くの人の前で朗読することには少なからず緊張感が伴う
- この経験を繰り返すことで、ストレス耐性が向上する
このように、朗読を通じたボランティア活動は、自分自身の健康や成長にもつながる素晴らしい取り組みである。継続することにより、さらに大きな効果を感じられるようになると期待したい。
セミナー講師を引き受けてみる
セミナー講師を引き受けることは、認知症予防になる可能性がある。セミナー講師として、自分の知識や経験を発信することは、脳に刺激を与える知的活動の一つである。知的活動は、脳の機能を維持・向上させる効果があり、認知症のリスクを低減すると言われている。
また、セミナー講師として、人と接し、会話を交わすことは、脳への何よりの刺激である。人との交流は、認知症の進行を遅らせる効果があるとされる。セミナー講師を引き受けることは、知的活動と社会参加の両方を行うことになるので、認知症予防に有効な活動と言えるだろう。
さらに、セミナー講師を無償で引き受けることのメリットとしては、以下のようなものが期待できるかも知れない。
- 自分の知識や経験を仕事に活かせる
- セミナー講師として、自分の専門分野や得意分野に関する知識や経験を発信することができる
- これは、自分のスキルや価値(ブランディングや信頼性)を高めるだけでなく、他人に役立つ情報を提供することにもなる
- 新しい人脈や機会を得ることができる
- セミナー講師として、多くの人と接することになる
- これは、自分のネットワークを広げるだけでなく、新しい仕事や協力の機会を得ることにもなる
- 教えることで学ぶことができる
- セミナー講師として、他人に教える過程で情報が整理され、講師の脳に記憶に定着する
- 受講者からの質問やフィードバックによって、自分の知識や理解を深めることができる
- 受講者に自分の知識や経験を伝えることで、受講者に新しい気付きや学びを与えることができ、受講者の成長や満足に貢献するだけでなく、自分自身もやりがいや充実感を感じることができる
以上のように、セミナー講師を無償で引き受けることには、多くのメリットがある。もし、自分の知識や経験を発信したいと思っているなら、セミナー講師に挑戦してみてはどうであろうか。
あとがき
率直に言って私は人前で話をするのが苦手である。ストレスを感じるし、何よりもあがり症である。誰か代わりの人がいるなら是非、代わってほしいと願うタイプである。そんな私がサラリーマン生活をリタイアした後は、そういったストレスから解放され、ストレスフリーの生活を満喫しているにも関わらず、人前で話をする機会を自ら得ようするのは一見矛盾した行動であるかも知れない。
しかしながら、私たちシニア世代は積極的に人前で話をする機会を持とうと努力しない限り、現役世代と違って人と話す機会が極端に少なすぎる。このような状況が長く続けば、認知症(アルツハイマー型認知症または血管性認知症)や軽度認知障害(MCI)の発症リスクが高まるばかりである。だから元来は苦手であっても努めて人前で話をする機会を持たなければならないと思う。
本稿で紹介した「ボランティアとして朗読を人前で行う」は、実は私の妻が実践していることであり、「セミナー講師を引き受けてみる」は私が実践中の試みである。本当に認知症やMCIの予防効果があるのかを私たち夫婦で「臨床試験」をしているようなわけである。どちらの試みも認知症やMCIの予防効果が高いことを期待したい。