はじめに
もっと自分のことを知りたい、あるいは変わりたいけど、どうすればいいのか分からないといったことが人生では必ず、一度や二度は経験するものである。
シニア世代の仲間入りをした今の私でもそんなふうに思うことがある。そんなとき、頼りになるのがリベラルアーツの知恵である。
特に、哲学と心理学は、私たちの内面を見つめ直し、自己成長のヒントを与えてくれる心強い道しるべとなる。
自己成長とは何だろう?
自己成長とは、単にスキルを増やすことではなくて、次のような内面の変化と成熟を含むプロセスのことである。
- 自分の価値観を見つめ直す
- 感情や思考のクセに気づく
- 他者との関係性をより良くする
ここにリベラルアーツの視点を取り入れると、ぐっと深みが出てくるようになるはずである。
哲学で「自分とは何か?」を問い直す
哲学は、問いを立てる力を育ててくれる学問である。 例えば、以下のような問いに向き合うことで、自分の軸や信念が見えてくる。
- 私はなぜこの選択をしたのか?
- 本当に大切にしたい価値観って何だろう?
- 幸せとは?自由とは?生きる意味とは?
ソクラテスの「無知の知」や、カントの「自律」の考え方は、自己理解を深めるヒントになる。
特に、ソクラテスの名言:『無知の知こそ、真の知である。』 は、自分の限界を認識し、常に学び続ける姿勢を持つ大切さを教えてくれる。日常生活では、新しい視点を探求するきっかけとなると思う。
また、ストア派哲学者のセネカの名言:『人生の大半は、生きることを準備している間に過ぎてしまう。』 は、今この瞬間を大切にする重要性を教えてくれる。
日常での優先順位を見直し、未来のための準備にとらわれすぎず、現在を楽しむヒントになる。
さらに、実存主義者のジャン=ポール・サルトルの名言:『人間は自由に呪われている。』 は、自由に選択する責任と、その結果を引き受ける覚悟の重要性を説いている。自分の選択に責任を持つことで、より充実した人生を送れるということである。
心理学で心のクセに気づく
心理学は、自分の思考や感情のパターンを客観的に見るためのツールとなる。 例えば、下記のようなツールで、なぜ自分はこう感じるのか?を理解することで、感情に振り回されずに前に進む力を育てられる。
- 認知行動療法(CBT)で、ネガティブ思考のクセを修正
- アドラー心理学で、「他者との関係性」から自分を見つめ直す
- マズローの欲求5段階説で、自分の成長段階を確認する
哲学×心理学で見つける、自己成長のヒント
哲学的アプローチと心理学的アプローチを融合させて、自己の成長を見つけるヒントを複数の異なる視点から下表に整理してみた。
| 視点 | 哲学的手段 | 心理学的手段 |
|---|---|---|
| 自己理解 | 私は何者か?を問い続ける | 性格傾向や思考パターンを分析 |
| 意思決定 | 自分の価値観に基づいて選ぶ | 認知の歪みに気づき、修正する |
| 他者との関係 | 他者との違いを受け入れる | アサーションや共感力を育てる |
| 成長の定義 | 幸せや善とは何かを考える | 成長段階や動機づけを理解する |
アサーション(assertion)とは、自分の意見や感情、希望を相手を尊重しながら率直に、誠実に、適切に伝えるコミュニケーションの方法を指す用語である。
心理学では、アサーティブ・コミュニケーションとも呼ばれ、自分の権利を守りながら、他者の権利も認める態度とされている。
アサーションは、我慢することと、わがままに振る舞うことのちょうど中間にあるスタンスであろうか。どちらかに偏りすぎることなく、自分も相手も大切にする対等な関係を目指すコミュニケーション・スキルの習得を目指したい。
あとがき
リベラルアーツは、自分を縛る思い込みや不安をほどいてくれる“知のレンズ”であると言えなくもない。 自分をもっと自由にしてくれる。
哲学で問い、心理学で気づき、そして日々の中で少しずつ変わっていく―― それが、自分らしく成長するための第一歩であることを気づかせてくれる。
禅僧・道元の名言:『一つの行動がすべてを表す。』 は、日々の小さな行動がその人の本質を反映することを教えてくれている。例えば、細かなタスクにも誠意を込めることが、大きな成果に繋がるということだと理解できる。
リベラルアーツの考えを取り入れ、今の自分の状況に合ったアクションプランを考えてみるのも面白いものである。シニア世代の私たちにもまだまだ時間が多く残されていると思う。