はじめに
ジンチョウゲ(沈丁花)は美しい花と香りを持つことから、世界で広く栽培される花木の一つである。
「沈丁花」の名前は、「沈香」という香木に香りがよく似ていること、花が十字に咲く様子から丁子(クローブ)に似ていることに由来しているらしい。
ジンチョウゲ(沈丁花)の香りは、品のある甘さと植物らしいグリーンの香りが特徴的である。この香りは、120種以上の香気成分から成り立っていると言われている。最も有名な成分は、リナロールと呼ばれ、鎮静作用、抗不安作用、抗菌作用、抗ウイルス作用などの効能があるとされる。気分を和らげ、精神的に疲れた際に気持ちを落ち着かせる効果があるとされる。
また、ジンチョウゲの香りは、秋に開花するキンモクセイ(金木犀)と共にその強さと遠くまで届く香りの特性から、「千里香」とも呼ばれる。
ジンチョウゲ
ジンチョウゲ(沈丁花)は、ジンチョウゲ科の常緑低木(樹高:1~1.5m)で、春先に香り高い花を咲かせることで知られている。外側が桃色で内側が白の小さな花が塊になって枝先に開花する。開花時期は、2月下旬~4月中旬である。
耐寒性の植物であり、-5℃程度でも育つ。そのため、東北地方南部の平地以南で庭植え(露地植え)にすることができる。原産地は、中国南部からヒマラヤ地方とされている。
生長が遅く、移植を嫌う植物であるため、露地植えにする場合には植える場所をよく考えてから植える必要がある。また、露地植えにする場合には西日が当たらない半日陰~日向に植えるようにした方がよい。
ジンチョウゲの楽しみ方
ジンチョウゲ(沈丁花)は四季を通じて楽しむことができる植物である。
春の観賞
2月から4月にかけての早春はジンチョウゲの開花時期であり、香りの高い花を咲かせる。1月末頃から開花の準備が始まる。蕾が徐々に開花していく様は気温の上昇(季節の移り変わり)を敏感に感じているようだ。
ジンチョウゲは挿し木で簡単に増やすことができる。私はその苗を露地植えにしたり、鉢植えにして楽しんでいる。
花は外側が紅紫色で内側が純白の肉厚な花で、濃い緑色の葉とよく合う。この時期は花の美しさと香りを楽しむことができる最も良い時期である。
夏の観賞
5月から8月にかけての夏は、ジンチョウゲにとって新たな葉が生長する時期である。葉は濃い緑色で、花が終わった後も美しい緑を楽しむことができる。私は、この濃い緑色の葉がツバキと同様に好きである。
秋の観賞
9月から11月の秋は、ジンチョウゲの成長が落ち着き、樹形が整ってくる時期である。この時期は一回り大きくなったジンチョウゲの美しい樹形を楽しむことができる。
冬の観賞
12月から1月にかけての冬季は、ジンチョウゲが休眠期に入る時期である。 しかし、ジンチョウゲは常緑の植物なので、冬でも緑の葉を楽しむことができる。
ジンチョウゲの育て方
適切な植え場所
ジンチョウゲは日当たりが良く、強い風や直射日光にさらされない場所が適している。
用土
水はけのよい土であれば特に選ばないが、水はけが悪い場合は川砂やパーライトなどを混ぜて改善する。
植え付け
植え付けは、新芽が伸び始める前の3月下旬~4月下旬、または9月下旬~10月下旬が適期である。
水やり
露地植えの場合は根付いてからは特に水を与えなくても育つが、乾燥が苦手なので、雨がほとんど降らない時期や植えて間もないころは、土が乾燥したら水をたっぷり与える。
肥料
特に肥料を与えなくても毎年花は咲くが、花後の4月~5月、そして株が生長する9月に緩効性の肥料を株の周りに与えるとよい。
剪定
特に剪定をしなくても自然に樹形が整うが、枝が込み合うと蒸れて病気が発生しやすくなるので、花後すぐに込み合った部分の枝を間引き剪定するとよい。
病虫害対策
ジンチョウゲは病害虫に強い直物との印象を私は抱いている。ただし、害虫としてアブラムシが新芽の部分に付きやすいので注意が必要であると言われている。
あとがき
花の香りが強い樹木としてよく知られているのは下記の4種類の樹木であり、「四大香木」と呼ばれることもある。都合が良いことに春夏秋冬のそれぞれの季節に開花する。
- 春:ジンチョウゲ(沈丁花)
- 早春に開花する。外側が桃色で内側が白色の小さな花が塊になって枝先に咲き、強い香りを放つ
- 夏:クチナシ(梔子)
- 白い花を咲かせ、甘い香りを放つ
- 秋:キンモクセイ(金木犀)
- キンモクセイの開花は秋の訪れを告げる。遠くまで香りが届くことから古くは「千里香」とも呼ばれていた
- 冬:ロウバイ(蠟梅)
- 冬の寒い時期から早春にかけて透明感のある黄色い小花を咲かせ、独特の香りを放つ
これらの四大香木を庭に植栽できればガーデニングも一層楽しくなるかも知れない。我が家の庭にはジンチョウゲとキンモクセイが既に植栽されているので、あとはクチナシとロウバイを植えるだけでよい。
かつてクチナシを植えたことがあるが、バラ科の植物であるためケムシに害され枯らしてしまったことがある。しかし、サラリーマン生活をリタイアして家にいる期間が増えたので再度、チャレンジしてみようか。
【参考資料】
中山草司著;庭師の技術がわかる庭木の手入れ(1993年刊、大泉書店) |
船越亮二監修;庭木の手入れ12か月(1993年刊、主婦と生活社) |