はじめに
アカマツ(赤松)は、優美で自然な柔らかさを持つ松の王道と表現されることがある。その軽やかな針葉と育てやすさは、初心者にも経験者にも魅力的なポイントとなっている。
私の家の庭には自生のアカマツが1本だけ生育している。このアカマツは、タネが風に乗ってどこからか分からないがやってきて庭で自生して大きく育ったものである。私は、このマツの木を最近までクロマツだと思っていた。幹の色が赤みを帯びていないからである。しかしながら、松葉がクロマツとは異なり柔らかいので触れても全く痛くはない。どうやらまだ若木の範疇で幹の色が赤みを帯びていないのだと教わった。
私の趣味の一つはガーデニングであり、私にとってガーデニングの醍醐味は庭木の剪定である。庭の雑草取りより何倍も楽しい。しかしながら、庭木の中でマツの剪定は私にとっては非常にハードルが高いものであった。その理由は、マツの剪定は一種のアートのようなもので、技術的な剪定方法が他の庭木とは全く異なるものであるからだ。
細かい枝の選別や剪定の仕方は、経験が求められるためである。庭師さんに庭木の剪定を頼んだ場合でも、マツを担当するのはベテランの庭師さんであって、経験の浅い庭師さんは他の庭木を担当するのが常である。マツの剪定は、他の庭木よりも技術と時間を要するため、シルバー人材センターに依頼するようなことはなく、腕の良い庭師さんに依頼する必要がある。当然ながら、費用も高くなるが、腕の良い庭師さんがリスペクトされる理由がここにある。
ガーデニングを趣味にする者の一人としてアカマツの剪定にチャレンジしてみることは、次のステージに登るような高揚感を感じさせてくれる。勿論、実際に剪定ができるようにならなければ、単なる妄想でしかない。初めての剪定でも楽しめるよう確実なステップを踏んでアカマツの剪定にチャレンジしてみたい。
素人がいきなりマツの剪定するのはハードルが高いので、書籍やネットで基礎を学び、分からないところは知り合いの庭師さんに相談し、自分の庭のマツで少し練習をした上で近い将来には義母の庭のマツにもチャレンジしたいと思う。
前述したようにアカマツの剪定はアートのようなものである。初心者の私たちには最初からうまくできなくても気にせず、時間をかけて、楽しみながら取り組んでいくことが大切である。そして成功したときの達成感は格別であることを胸に秘めておく。初心者の私がアカマツの剪定にチャレンジするプロセスについてときおりUpdateしながら本稿を記したいと思う。
本稿が私のようにはじめてマツの剪定にチャレンジしようとする読者の参考に少しでも役立つのであれば嬉しいかぎりである。
<目次> はじめに アカマツ(赤松) 剪定の目的 マツの剪定時期 全体を観察 基本の形を保つ マツの剪定の基本 みどり摘み 透かし剪定 もみあげ マツの剪定が難しい理由 剪定に必要な道具のの準備 アカマツの剪定のポイント マツの剪定の仕上げ確認 あとがき |
アカマツ(赤松)
アカマツ(赤松)は、別名、雌松【メマツ】や女松【オンナマツ】と呼ばれている。樹皮が赤褐色なのが特徴で、擦ると剥がれ落ちる。アカマツの葉先も尖っているが、クロマツに比べて柔らかいことからクロマツの葉ほど触っても痛くはない。
アカマツの生えている場所は内陸部に多く、アカマツの根元にはマツタケ(松茸)が生えることでも有名である。
盆栽ではクロマツやゴヨウマツに人気があるが、庭木ではアカマツを好む人が多いという。気品と優雅さはマツの中では一番だという人もいる。確かに幹だけ見ても美しいと思う。
アカマツ(赤松)は、マツ科マツ属の常緑針葉樹である。アカマツは、別名でメマツ(雌松/女松)とも呼ばれる。これは、別名でオマツ(雄松/男松)とも呼ばれるクロマツに対しての呼称であるようだ。アカマツの葉が、クロマツよりも軟らかいことから女性を連想させるためと言われている。
アカマツ(赤松)の名の由来は、樹皮が赤みを帯びるという形態的な特徴から来ている。

アカマツは、山野に普通に見られるが、山地の尾根筋などの乾いた痩せ地にもよく生える。内陸部においてはアカマツが荒廃地でいち早く生長し、土壌が流出するのを防ぐ働きをする。アカマツ林にはマツタケが生えることが知られている。
樹形をコントロールしやすく、幹の色が美しくて幹だけ眺めても楽しめるので、庭木として使用されることが多いが、盆栽としても利用される。気品と優雅さはマツのなかでは一番だという人もいるくらいである。
クロマツ(黒松)とアカマツ(赤松)の苗木を区別する方法は意外と難しい。何故ならアカマツの苗木や若木の幹は、アカマツの成木の特徴である赤みを帯びていないからである。アカマツの幹が赤みを帯びてくるのは成長してからで、一般的に数十年経った木が赤みを帯びた幹になると言われている。
では、苗木や若木の状態でクロマツとアカマツを区別するにはどうすれば良いのか?
一般的には、針葉の色と形、それに硬さを比較する必要があると言われているが、その違いに大きな差がないので容易ではなさそうである(下表参照)。
比較項目 | クロマツ(黒松) | アカマツ(赤松) |
---|---|---|
針葉の色 | 濃い緑色 | 淡い緑色 |
針葉の形 | 鋭い感じ 太くて短め | 細長い感じ クロマツより長い |
針葉の硬さ | 硬い | 柔らかい |
幹の色(苗木) | 緑から灰色を帯びる | 緑から灰色を帯びる |
幹の色(成木) | 黒っぽくなる | 赤みを帯びてくる |
剪定の目的
庭木を剪定する目的には複数あり、主な目的は下記のようなものである。
- 見た目を美しくして鑑賞を楽しむ
- 樹木の健康を保つ
- 病気や害虫による被害から守る
特に、「透かし剪定」と「もみあげ」と呼ばれる秋の剪定を行う目的は大きく分けて2つある。それは「見た目の美しさ」と「害虫予防」である。
下記の葉や枝を取り除くとマツは非常に美しい樹形を見せる。
- 去年の古い葉
- 今年の葉の一部
- 枯葉
- 枯れ枝
- 不要枝
これらの古い葉や枯れ枝を取り除くことで毛虫などの害虫が身を隠す場所がなくなり、冬を越すことができなくなる。その結果、春になって毛虫などの害虫が出てくるのを予防することになる。
見た目を美しくして鑑賞を楽しむ
剪定の目的の一つは、見た目を整えて美しく見せることである。綺麗に手入れされた松の木の鑑賞は実に楽しい。特に、松は堅牢な幹と複雑に曲がりながらも整理された枝と特徴ある葉は造形的にも美しく、魅力的であり、観る者の心を捉える。
樹木の健康を保つ
剪定の目的には樹木の健康を保つ役割がある。不要な枝を取り除くことで日当たりを良くしたり、栄養を必要な箇所に集中させることができる。また、大きくなりすぎて、周りの樹木や低木の成長を阻害するのを防止できる。
病気や害虫による被害から守る
樹木を放置していると、不要な枝にも栄養分が使用される。剪定することで、必要な枝に栄養が行き渡り、樹木全体の抵抗力も上がるので病気にかかりずらくなる。
また、樹木を放置すると、枯れ葉や枯れ枝に害虫が繁殖する。剪定をして枝を間引くことで、風通しがよくなり害虫が増えるのを防ぐことができる。
マツの剪定時期
マツの剪定は、基本的に年2回、「春剪定」と「秋剪定」を行う。春剪定は「みどり摘み」とも呼ばれ、剪定時期は4~5月末に行う。一方、秋剪定は「透かし剪定」や「もみあげ」とも呼ばれ、剪定時期は11月頃が最適である。
みどり摘みに適した時期は、地域やその年の気候によって多少変動することがあるが、4~5月末に行うのが一般的である。時期が早すぎると、みどり摘みをしたところから新たに芽がでてきてしまったり、逆に遅すぎると手で折れないので鋏を使うことになり時間がかかる。桜が散ったあとの頃が、一つの目安らしい。
透かし剪定はマツの休眠期である11月以降に行うのが良いとされている。しかし、7〜8月の暑い時期でなければ、いつ剪定をおこなっても特に問題はないらしい。
もみあげの時期はマツが休眠期に入る、11〜2月中旬を目安に行うと良いらしい。休眠期にもみあげを行うことでマツへの負担を最小限にすることができるという。
全体を観察
アカマツの全体の姿をじっくり観察して、自然な樹形をイメージする。無理に均等にしようとせず、自然な形を目指すのがポイントである。自然の美しさと調和を兼ね備えた堂々とした樹形であるべきである。
アカマツの自然な姿は、その独特の美しさから多くの自然愛好家に愛されている。具体的には下記のような特徴がある。
- ピラミッド型の樹形
- アカマツの伝統的な理想形は、上に向かうにつれて細くなる三角形のシルエットである
- 全体のバランスを整え、自然な美しさを表現する
- 幹の力強さ
- 幹は太く、しっかりとした印象がありながら、少し曲がりやねじれを含めることで動きや生命感を感じさせる
- 層状の枝葉
- 枝葉は層状に広がり、それぞれの枝が空間を持ちながら整然と配置されている
- これにより、風通しと光の取り入れが良くなる
- 自然な針葉の分布
- 全体に柔らかく揺れるような針葉が均等に広がり、アカマツの特有の優雅さを際立たせる
- 人工的になりすぎず(自然の景観を意識して)、まるで自然の風景の一部のような姿に仕立てるのがアカマツの魅力である
このような自然な姿を保つためには、定期的に剪定を行い、不自然な成長を抑える。針金を使って枝の形を整え、理想的な樹形を作ることが重要となる。
基本の形を保つ
自然な樹形を意識しながら、ピラミッド型に整える。そのためには、下枝を長く、上枝を短くする。つまり、下の枝から上の枝にかけて、少しずつ短くなるように整えれば良い。ピラミッド型を意識すると見た目のバランスが良くなるものである。
アカマツは独特の成長パターンがあり、自然な樹形を保つためにはこの特性を理解して剪定する必要がある。
マツの剪定の基本
遠くから全体を観察してバランスを確認し、最初は大きな剪定を避けて、少しずつ枝を切っていく。木の反応を見ながら進めると失敗が少ない。
細かい枝の選別や剪定の仕方は、経験が求められる。クロマツの剪定において、初心者が最初に躓くポイントである。
マツの剪定は、基本を守り、枯らすことのないようにしたいものである。マツの剪定の基本は、次のようなものである。
- 葉(芽)のあるところで切る
- 複数ある新芽は真ん中の芽をとる
- 剪定は上から下に、奥から手前に向かって行う
マツは葉(芽)のあるところで切らないと枯れてしまう性質がある。したがって、剪定は必ず葉(芽)を残して切るようにする。
枝先に複数の新芽がある場合は、成長の強い真ん中の芽をとるようにする。理由は、成長を抑制してバランスの良い樹形にするためである。例えば3本の芽がある場合は真ん中をとり、あとの2芽をY字に残すことで枝の曲がった美しいマツに仕立てることができる。しかし実際には4~5本の新芽が出ている場合が多いので、成長した後の姿をイメージしながら最も良さそうな2本の新芽を残して他の新芽は摘みとってしまうことになる。

ただ2本にするのではなく、芽の伸びる方向と全体の樹形とを見合わせて行うことが大切であり、それが美しい枝配りに仕立てるコツであるという。
剪定は上から下に向かって行うことで、先に剪定した箇所に後から切った枝が引っかかることを防ぐことができる。さらに、奥から手前に剪定することで、剪定済みの枝に身体や腕が当たって傷付けるのを回避できる。
みどり摘み
春になって新芽が出始めたら、成長をコントロールするために不要な新芽を切り取る。マツの枝先から数本の新芽が出てくるが、この新芽を「みどり」と呼ぶ。このみどりを折って取る作業のことを「みどり摘み」という。
みどり摘みの目的は、マツの樹勢を抑えて均一にすることである。元気な芽を取っていくことでマツの樹勢を抑えることができる。春以降にマツがボサボサにならず、スッキリと見せることができる。
マツの枝先から出ている芽の中で、真ん中の強い芽を手で折る。手で折れない場合は、鋏で切っていく。
みどりは付け根で折るようにする。中途半端なところで折ってしまうと、そこからまた芽が出てしまい樹形が崩れてしまうからである。
最後に残した芽の長さが違う場合は短い方に長さを揃える。このときに、小さな芽は触るとポロッと取れてしまうので触らず、長い方の芽を途中で折ることで長さをそろえる。
透かし剪定
不要な枝を取り除き樹形を整えることを「透かし剪定」と呼ぶ。
透かし剪定で、まずやることは、飛び出している樹勢の強い枝を切ることである。根元に小さな芽があれば残すように切る。
木を上から覗き、下が見えないほど枝が密集している箇所を見つけ、枝を間引く。枝先についている芽の数を1~2芽になるように調整する。枝を透かし、葉をもみあげることで美しいマツの木に仕上げることができる。
透かし剪定のポイントは次の2つである。
- 枝をV字になるように残す
- 上下に重なっている箇所は下枝を大切にする
木から離れた場所から樹木全体のバランスを確認する。
- 飛び出している枝はないか?
- 形はおかしくないか?
- 広がりすぎていないか?
これらは剪定中には気づきにくいので、時々離れて場所から確認する。マツの透かし剪定は慣れるまでは難しい。しかし、経験を積むことで上手にできるようになる。

引用:松(マツ)の剪定方法・基本を現役庭師が徹底解説! | 庭ラブ

引用:松(マツ)の剪定方法・基本を現役庭師が徹底解説! | 庭ラブ
もみあげ
夏に伸びた新しい葉の一部と去年の古い葉を除去することを「もみあげ」と呼ぶ。「透かし剪定」と「もみあげ」は一緒に行う方が効率良く作業できるが、剪定の時期には注意を要する。
もみあげは、新しい小枝が伸びるのを止め、固まった時期に行うとよいと言われている。11〜2月中旬が一般的な適期とされる。
もみあげは、マツの手入れのうちで最も手間のかかる作業とされるが、樹木のふところ部分に日光を入れるために不可欠である。
もみあげの正しいやり方は、葉をむしる方向に注意することである。葉の流れに逆らってむしると、樹皮がめくれることがあるので、斜めか、横方向にむしるようにする。

引用:松(マツ)の剪定方法・基本を現役庭師が徹底解説! | 庭ラブ
古葉もみあげは、手で古い葉を全てむしる。古い葉は軽くむしるだけで簡単にとれる。
一方、新葉もみあげは、今年の葉の枚数が5〜7枚になるように、むしっておくと綺麗に見える。


むしりとった葉が枝などに引っかかっていると、見栄えが良くないので、枝や幹などを揺すって落としておく。
マツの剪定が難しい理由
マツの剪定が難しいと言われている理由は何であろうか? 一般的に知られている困難な理由には下記のようなものがある。
- 剪定箇所を見誤ると枯れる
- 手間がかかる
- マツヤニで汚れる
- 数年後の姿を想像するのが難しい
剪定箇所を見誤ると枯れる
マツは葉のないところで切ると、その先は枯れてしまう。そのため切る箇所を間違えると大切な枝を枯らしてしまうことになる。マツのこの特性が剪定を難しくしている要因である。
手間がかかる
マツの剪定においては、一般に「刈り込み」と呼ばれる剪定はできない。「刈り込み」とは大きな鋏でバサバサと切っていく剪定方法を指す。マツの場合は、芽や枝を一つ一つ丁寧にハサミを入れる必要があるので、他の庭木に比べて非常に手間がかかる。
マツヤニで汚れる
マツの幹や切り口からは「マツヤニ」と呼ばれる樹脂が出る。このマツヤニは手につくとベトベトし、そのまま作業すると汚れを吸着して真っ黒になる。服につくと洗っても落ちないことが多いので捨てる覚悟が必要である。
数年後の姿を想像するのが難しい
庭木の剪定は数年後の姿をイメージして行うことが大切であるが、数年後の姿をイメージするには多くの経験が必要である。
剪定に必要な道具の準備
アカマツの剪定に必要な道具は、クロマツの場合と同じである。特段、アカマツ専用の道具が必要になるわけではない。道具については、別稿「クロマツの剪定技術を学んでガーデニングを楽しむ!」を参照してほしい。
アカマツの剪定のポイント
アカマツの剪定はポイントさえ押さえることができれば初心者でもチャレンジできる。アカマツの剪定におけるポイントには下記のようなものがある。
- 剪定に適した時期は年2回ある
- 「みどり摘み」で樹勢を抑える
- もみあげと透かし剪定で樹形を整える
剪定に適した時期は年2回ある
アカマツの剪定に適した時期は、春と秋~冬の年2回である。春の剪定は、4~5月末までに行う、いわゆる「みどり摘み」である。一方、秋~冬の剪定は、10月~1月に実施する、いわゆる「透かし剪定」と「もみあげ」である。
「みどり摘み」で樹勢を抑える
アカマツのみどり摘みは、4~5月上旬におこなうと良い。
みどり摘みの目的は、新芽をとって樹勢を抑え、樹形を整えることである。みどり摘みを行うことで、アカマツの樹勢をおさえることができ、美しい樹形を保つことができる。
「みどり摘み」の方法
みどり摘みの方法は、次のとおりである。
- 真ん中の強い芽を取る
- 残りの芽を1~2本になるように調整
- 残した芽の長さを揃える
真ん中の強い芽を取る
新芽が複数出ているので、その中で真ん中の樹勢の強い芽を根元から折る。時期が遅いと指で折れないので、植木鋏で切る。
必ず新芽の根元で切るのがポイントである。中途半端なところで切ると、切り口から新たに新芽が出てきて、余計に樹形がみだれる原因になる。
残りの芽を1~2本になるように調整
次に、残っている新芽の数を1~2本になるように調整する。2本残す場合は、2本の芽がVの字になるように残すと、自然な感じに仕上がる。
残した芽の長さを揃える
最後に、芽を2本残した場合は、長さを揃える。短い方の芽にあわせて長い方を途中で切ればよい。これで「みどり摘み」は終了で、秋には樹形が整い出す。
もみあげと透かし剪定で樹形を整える
10月~翌年の1月末までの期間に実施するマツの剪定は、一般に「もみあげ」と「透かし剪定」と呼ばれる剪定である。この2つの剪定は、同時におこなうと効率よく作業できる。
もみあげは、去年の古葉をむしりとる作業のことである。もみあげをする目的は、樹形をスッキリと美しくし、下枝への日当たりの調整をして下枝が枯れるのを防ぐと共に害虫の予防である。
一方、透かし剪定は、不要な枝を剪定して、マツの成長をコントロールしたり、病害虫の予防を目的とした剪定である。
「もみあげ」の方法
もみあげのやり方は、去年の古い葉を手でむしっていく。あまり強引にむしると皮までむけてしまうので、むしる方向には注意が必要である。また一緒に今年の葉も4~6枚程度残すようにむしっておけば、全体的にスッキリとした印象になる。
「透かし剪定」の方法
アカマツの透かし剪定のポイントは、次のようなものである。
- 芽は1~2本に減らす
- 不要枝を剪定する
- 下からみて空が見える程度に剪定する
まずは、芽の数を1~2本にまで減らしていく。一般に多いものでは5~6本ほど芽が出ていることがあるので、1~2本になるように植木鋏で切っていく。
真ん中の強い芽を外したあとは、V字になるようにバランスを考えて他の芽を切るとよい。
不要枝とは次のようなもので、これらはすべて剪定する。
- 徒長枝:上に強く伸びた枝
- 交差枝:他の枝と交差した枝
- 逆さ枝:幹に向かって伸びている枝
不要枝を切りながら、少しずつ枝を透かしていく。切断する箇所は、根元に小さな芽があればそこで切り、なければ枝の分かれている股のところで切る。
最後に下からのぞいてみて、空が透けていれば完了である。風通しを良くすることで病害虫の予防にもなる。
マツの剪定の仕上げ確認
マツの剪定を終えたら、最後に樹形全体を確認しておく。チェックポイントは、次のようなものであり、これらを確認して剪定終了となる。
- 棚はお椀をひっくり返した形になっているか?
- 剪定したマツの葉が枝や幹に引っかかっていないか?
- 垂れた枝葉はないか?
- 枯れた枝は残っていないか?

もし、棚に飛び出している箇所があれば切っておく。
剪定したマツの葉を放置すると、茶色くなり見栄えが良くないので、枝や幹を軽く揺するか、軽く叩いて葉を落としておく。
垂れた枝葉は樹形を崩してしまう。垂れた枝は鋏で切り、垂れた葉は手でむしっておく。
害虫被害や美しい樹形のためにも、枯れた枝は必ず取っておく。硬い枝の場合は剪定鋏かノコギリを用いて切断する。
あとがき
マツの剪定に興味を持つと神社仏閣の境内にあるマツや日本庭園のマツの手入れ具合にも自然と関心がいく。庭師さんたちに感謝したいと思う。庭師さんたちの尽力によって私たちは優美なマツの姿を目にすることができ、散策を楽しめるのだから。
難しいとされるマツの剪定も基本を押さえて剪定すれば私のような初心者でもチャレンジすることができるかも知れない。マツは放置するよりは、やはり手入れすることで確実に綺麗になる。時間はかかるがその分達成感を味わうことができる。
タネが風に乗ってやってきて庭に自生したアカマツも最近では大きく育ち、私の演習林ならぬ「演習木」(1本しかない!)になってくれるのは幸いである。
アカマツの剪定は確かに難易度が高い。特に成長パターンや形状を維持するための技術が必要であるからだ。だからアカマツの剪定は初心者にとっては確かにハードルが高く感じられるのは当然である。
しかしながら、基本的な知識を身につけて、少しずつ経験を積むことで初心者でも上手に剪定できるようになるかも知れない。実際に、私自身は基本を押さえて慎重に取り組むことで、少しずつ上達することができることを実感した。
剪定のための細かいポイントを押さえれば、挑戦してみる価値はガーデニングを趣味する者にとっては十分にある。庭木としてのアカマツは、庭の主木になることが多いので、どんな庭にしたいかイメージを膨らませることができる醍醐味がある。
アカマツの剪定は、最初は少しずつ剪定して、木の反応を見ながら進めると良い。たとえ失敗しても次の成長期には修正できるので、思い切って挑戦してみたいと思う。庭が美しくなることを夢みて私の挑戦は続く!
【参考資料】
庭師の技術がわかる庭木の手入れ(中山草司著、1993年刊、大泉書店) |
庭木の手入れ12か月(船越亮二監修、1993年刊、主婦と生活社) |
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