人間万事塞翁が馬【じんかんばんじさいおうがうま】は、「人生の幸不幸は予測できない」という意味のことわざである。
2012年のノーベル生理学・医学賞受賞者でもある、京都大学iPS細胞研究所所長の山中伸弥教授は、この「塞翁が馬」を座右の銘にしているということだ。
「世間に起きる良いことも悪いことも予期できないから、その出来事に振り回されてはいけない」、あるいは「悪いことが続いても今度は良い事があるかもしれないから落ち込む必要はない」という意味に捉えれば確かに座右の銘に相応しい。
「人間万事塞翁が馬」は、中国の故事に由来するので、このままでは意味がよく分からない。ちなみに 「人間」は「じんかん」と読み、世間を意味する。そして「塞翁が馬」というのは、中国の北辺の地、塞のそばに住む翁(老人)が所有する馬という意味であるようだ。
この故事の主人公である塞に住む老人は一頭の馬を飼っていたが、ある時、その馬が胡の地に逃げてしまうという不幸があった。この話を聞いた村人達は老人の家に集まり、この老人を慰めようとしましたが、老人は平常心を保ち、平然としていた。
そうして、 数か月が経った頃に逃げた馬が胡の駿馬(優れた馬)を連れて帰ってくるという幸福が訪れた。この話を聞いた村人達は老人の家に集まり、この老人の幸運を讃えたが、老人は平常心を保ち、平然としていた。
しばらくして、老人の息子がその駿馬から落馬して足を折ってしまうという不幸があった。その頃、戦争が勃発し、村の若者は皆、徴兵され、戦場で命を落とすことが多かった。しかし、骨折して歩けない息子は兵役を免除されたので戦死しなくて済んだ。
老人の人生には不幸と幸運が折り重なるようにやってきたが、多くの村人のように一喜一憂せず、老人は平常心を保っていた。馬が逃走したのは不幸であるが、駿馬を連れて来たのは幸運である。
しかし、息子がその駿馬から落馬して骨折するという点は不幸である。ところが、この不幸のおかげで兵役が免除されるという幸運があったのだから人生は分からないものだ。
物事は一面からでは、良い事なのか、悪い事なのか分からない。まさしく、「世間に起きる良いことも悪いことも予期できないから、その出来事に振り回されてはいけない」 ということである。
だからこそ、「悪いことが続いても今度は良い事があるかもしれないから落ち込む必要はない」という意味に捉え、座右の銘にしている、山中伸弥教授は人間的にも素晴らしい方だと思う。
人間万事塞翁が馬【じんかんばんじさいおうがうま】 |
人生の禍福は転々として予測できないことのたとえ。昔、中国の北辺の塞 のそばに住んでいた老人の馬が胡の地に逃げたが、数か月後、胡の駿馬 を連れて帰ってきた。その老人の子がその馬に乗り落馬して足を折ったが、おかげで兵役を免れて命が助かったという故事から。 |