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エンジンが突然かからなくなるセルモーター【starter motor】の故障

はじめに

先日、長年乗り続けて来た自家用車のエンジンが、突然かからなくなるというトラブルをはじめて経験した。

最初はバッテリーの消耗が原因だと思っていたが、JAFロードサービスに救援を頼んで修理をしてもらったところバッテリーの交換は必要はなく、セルモーターの故障だと言われた。

セルモーターとは、エンジンをスタートさせるための電動機(モーター)であり、この名称は和製英語であって、本来、英語ではstarter motorというらしい。

修理に慣れた熟練のJAFロードサービスの整備員の機転と手際の良さで、すぐに車のエンジンはかかったので、ホッとしたが、それも束の間であった。

JAFロードサービスの整備員に、エンジンを止めると再起動できない可能性が高いので、すぐに修理工場に持ち込むように助言されたからである。

その助言に従い、車を修理工場に持ち込み、事情を話してエンジンを切ると案の定、エンジンを再びかけることはできなかった。

それで、私にとっては、初めての経験である車のトラブル、セルモーター【starter motor】の故障とはどういうものかを調べてみることにした。


<目次>
はじめに
セルモーター【starter motor】とは
イグニッションキー【ignition key】
セルモーターの働き
セルモーターが動かなくなる原因
セルモーター修理の選択肢
  • 新品との交換
  • リビルト品との交換
  • 壊れたセルモーターを修理・オーバーホールする
まとめ

セルモーター【starter motor】とは

一般的な自動車が搭載しているエンジンで、4サイクルガソリンエンジンというのがあるが、このエンジンは①吸気、②圧縮、③燃焼・膨張、④排気の4行程を繰り返すことによって回転する。

このサイクルは車が動いているとき、つまりエンジンが正常に動いているときに継続に繰り返されるサイクルである。

停止しているエンジンは、吸気圧縮など工程を自ら行うことができない。

では、止まっているエンジンを起動させるにはどうするかと疑問が生まれるが、このときがセルモーター【starter motor】の出番である。

セルモーターは、止まっているエンジンのシャフトを回転させることによって、吸気、圧縮などの工程を強制的に行うことで、始動のきっかけを与えるものである。


イグニッションキー【ignition key】

自動車のエンジンキーのことを正式にはイグニッションキー【ignition key】というらしいが、このキーを差し込んで一段回すとメーンスイッチが入り、さらに回すとスターターモーターが回転するようになっている。

イクグニッション、すなわち点火のためのスイッチのキーということである。一般的には、点火スイッチと始動スイッチを兼ねている。

つまり、キーをイグニッションキーシリンダーに差し込んでまわすと、1段目でステアリングロックが解除され、2段目でオーディオなどのアクセサリー類、3段目で点火装置に電流が流れ、もう1段まわすとセルモーターがクランクシャフトを回転させ、エンジンを始動させる。


セルモーター【starter motor】の働き

一番多いタイプの「リダクション式」を例に、実際のセルモーターの動きをみてみると、次のようなステップになっているということだ。

  1. イグニッションキーを回す(又は、スタートボタンを押す)と、セルモーターの軸についた小歯車(ピニオン)がレバーで押し出されながら回り始める。
  2. その回転運動でピニオンはさらに前に押し出され、クランクシャフトのフライホイールの外周についたリングギアに噛み合わせられる。
  3. ピニオンが噛み合ってリングギアが回り、クランクシャフトが回ってエンジンのサイクルが開始される。
  4. それと同時に、今度は反対にピニオンがエンジンの力で回転するが、その回転はセルモーター自体に伝わらないようクラッチによって切り離されており、モーターが保護されるようになっている。
  5. イグニッションキーから手を離すと、STARTからONに戻り(スタートボタンを放す)、ピニオンギアは元の位置に戻り、モーターの電源が切れて、セルモーターは止まる。
セルモーターstarter motor

セルモーターは、あくまでもエンジン起動に使う補助的な機器であるため、一度エンジンが始動すればセルモーターの役目は終わる。

1回の使用で最大30秒程度の使用として設計され、一般的には故障率は低いとされている自動車部品である。


セルモーターが動かなくなる原因

故障しないはずのセルモーターが動かなくなる原因は何なのかという疑問が当然出てくる。

原因としてよくあるのは次の5つであるという。頻度の高い順に並べると次のようになるらしい。

  1. バッテリー上がり
  2. ブラシの摩耗
  3. ピニオンギアとリングギアのかみ合い不良
  4. セルモーター自体の故障
  5. イグニッションスイッチの故障

私の車が動かなくなった原因は、バッテリー上がりではなく、2番目のブラシの摩耗が故障の原因であることが判明した。

具体的には、モーターのブラシ摩耗でカーボン粉が大量に溜まっており、それがモーターに固着して電流の流れやモーターの回転を邪魔していたわけである。

左の写真は、私の車のものではないが、こんな感じになっていた可能性が高い。つまり、モーターのブラシ摩耗で生じたカーボン粉がモーターに固着することで電流の流れやモーターの回転を阻害していた可能性が高いと考えられる。

そう言えば、JAFロードサービスの整備員が、ある太さの金属棒でセルモーターのあたりを叩いていた。

そうして、エンジンを起動させてくれたのは、セルモーター内に溜まったカーボン粉を叩き落としていたということであろうか。

あるいは、ブラシの摩耗であれば、叩くことであたり具合が変わり、一時的に電気の通り道ができたのかも知れない。あくまでも推測でしかない。

いずれにせよ、セルモーターを叩いてエンジンを起動させる方法は応急処置でしかない。一時的に動いたとしても、故障が直っているわけではないからである。

セルモーターが動かない限りはエンジンを起動させることはできない。セルモーターを新品に交換しないといけないのだろうか? 


セルモーターのトラブルの原因が、ブラシの摩耗であることが判明した。ブラシとは、モーターであるコイル部分に電気を流すためにあるパーツのことである。

ブラシがコイルに接触することで、電気を流す。そして振動や回転によって摩耗し、コイルと接触しづらくなる。これによってコイル部分に電気が流れずセルモーターが動かないといったトラブルが発生する。

ブラシの摩耗は、厳密にはセルモーターの故障というより摩耗や劣化に該当するが、動かなくなるという意味では私たちにとっては故障と何ら変わらない。

長年、愛車を乗り続けているとセルモーターはブラシの摩耗以外の原因でも故障することがあるという。つまり、セルモーターは永久的に使えるパーツではないということである。

一般的には、セルモーターは走行距離が10~15万キロを超えると寿命とされている。

走行距離が長いということは、エンジンの始動回数が多くなるので、セルモーターの消耗が激しくなるのは当然かも知れない。

そのため、走行距離が長い車でセルモーターが回らない場合、寿命がきたというサインの可能性がある。

長年使い続けていれば、劣化や摩耗などにより不具合が発生すると理解して、完全に壊れる前に交換するようにした方がよいが、そのタイミングの判断は素人にはやはりハードルが高い。


セルモーター修理の選択肢

セルモーターが壊れた場合、修理には次の3つの方法がある。

  1. 新品との交換
  2. リビルト品との交換
  3. 壊れたセルモーターを修理・オーバーホールする

1.新品との交換

新品との交換は、もっとも簡単な修理方法であるが、当然のことながら一番費用が高くつく。メーカーの純正品に交換した場合には、特に高くなると言われている。

しかし今後も長く愛車に乗るのであれば、一番安心な方法であるとも言える。


2.リビルト部品との交換

リビルト部品との交換は、セルモーターの内部の部品を交換するので新品同様の品質で製品保証(例えば、2年・4万km等)がつくため安心である。それでいて費用は新品の半分程度で済むので、おすすめの修理内容ではある。


3.修理・オーバーホールする

セルモーターの修理・オーバーホールを選択した場合は費用が最も安く済む。しかしながら、修理する箇所やオーバーホールの内容によって金額が変わってくるし、交換せずに部品を修理するため、時間がかかるのが難点である。


修理費用

セルモーターの修理・交換費用の相場は3万円〜15万円ほどであるということだ。私の車の場合の修理費が3万5千円弱で済んだのは、リビルト品との交換で修理してもらったおかげである。

尚、セルモーターの交換費用は、車両保険ではカバーされなかった。保険会社の説明によると、理由が事故による故障ではないからだという。私が今回の修理を新品との交換にしなかったのは、車両保険が使えなかったからでもある。

車両保険を使う機会がないということは、事故にあってないということでもあるから、まずはそのことに感謝すべきだろう。


まとめ

セルモーター【starter motor】は、車のエンジンをかけるために作動する重要なパーツである。

故障しにくいパーツではあるが、車の使用状況や走行環境によって使用消耗や劣化の度合いが違ってくる。

特に走行距離が10~15万キロを超える場合には、セルモーターの消耗や劣化の度合いが大きいと推測される。

セルモーターの不具合を感じたら、早めに交換しておくのが無難ではあるが、それは言うは易しであって、素人にはなかなかその判断が分かりずらいものである。

気付いた時には時すでに遅しの場合が多いかも知れない。

セルモーターが回り、エンジンがかかることを当たり前に思っていて、突然セルモーターが回らなくなると焦ってしまう。

いざというときに焦ることなく対処するためには、JAFや任意保険のロードサービスと契約しておくことをお勧めする。


【参考資料】
整備士が教える【スターターモーター(セルモーター)】の基礎知識と交換費用・方法|Seibii
よくあるロードサービス出動理由 | JAF
バッテリー上がりの原因と症状、点検方法とは? | JAF
エンジンがなかなか始動しない場合、考えられるトラブルとは? | JAF
セルモーター – Wikipedia