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思考系脳を鍛える

アニメ『薬屋のひとりごと』に私がハマった理由は物語の展開だけでない!

(2024年3月14日更新)

はじめに

シニア世代がアニメを観て期待できる効果には脳の活性化があると誰かに聞いたことがある。確かにアニメは視覚や聴覚に刺激を与えるだけでなく、ストーリーやキャラクターについて思考したり感情移入したりすることで、脳の活性化につながる可能性が高そうである。脳の活性化は、認知症の予防や記憶力の向上にも効果があると言われている。

実は、私も『薬屋のひとりごと』というアニメにハマっている。このアニメは、ミステリーとラブコメの絶妙なバランスで人気となっているものである。魅力的で個性的なキャラクターが多く登場しており、美しい絵柄も気に入っている。私はアニメ通ではないので詳しくはないが、豪華な声優陣が出演していて世間の評価も高い。人気のアニメであることには間違いはなさそうだ。

引用)2023年放送TVアニメ
『薬屋のひとりごと』PVカット
引用)2023年放送TVアニメ
『薬屋のひとりごと』PVカット

ここではアニメの物語を詳しく語るつもりは私にはない。ただ一点、宮中で起こる様々な難事件を、薬の知識を持つ主人公猫猫【マオマオ】が解決していくミステリー作品であるとだけは言っておきたい。

私がこのアニメに魅せられる理由は、物語の随所に薬物や毒物の話や、化学実験食物アレルギー、あるいは疾病の話などが主人公の口を介して語られる点である。

このアニメの原作者である日向夏【ひゅうがなつ】さんは、薬剤師の経験はないということである。そのため薬物や毒物に詳しい友人や知人に相談したり、専門家にも意見を聞いたりして物語の内容を作り上げているという。

私は原作本を読んでいないので、このアニメの放送を毎回楽しみにしている。本稿では過去の放送でどんな薬物や毒物、疾病が登場したかをレビューしてみようと思う。


<目次>
はじめに
第1話『猫猫』:オシロイに含まれる毒性物質
第2話『不愛想な薬師』:植物に含まれる毒物
第3話『幽霊騒動』:浮遊病(睡眠時遊行症
第4話『恫喝』:オシロイによる水銀中毒の治療
第5話『暗躍』:無機化合物の炎色反応
第6話『園遊会』:食物アレルギー
第7話『里帰り』:銀食器に付着の指紋
第8話『麦稈』:タバコの葉の毒性+比重差のある液体
第9話『自殺か他殺か』:ストレスによる味覚障害
第10話『蜂蜜』:蜂蜜アレルギー
第11話『二つを一つに』
第12話『宦官と伎女』:冬虫夏草
あとがき

第1話『猫猫』:
オシロイに含まれる毒性物質

第一話では、かつて女性が化粧に使っていた白粉【おしろい】による健康被害の話が登場しました。

かつての白粉には水銀が含まれており、「水銀白粉」と呼ばれていた。肌を白くする効果があったが、主成分の塩化水銀(I)は皮膚から吸収され、その毒性によって健康被害を引き起こす危険性も指摘されていた。

水銀白粉は、7世紀頃に中国から日本へ伝わり、日本でも製造されるようになった。水銀白粉の使用は日本では明治時代に禁止されたが、その後も密造や密売が行われたらしい。昭和時代にも水銀白粉による健康被害が報告されているという。


第2話『不愛想な薬師』:
植物に含まれる毒物

第二話では、植物に含まれる毒物の話が登場した。遠征に行っている兵士たちが村人から提供された食物を食したところ食中毒を引き起こしたが、その原因が食べ物自体ではなく、兵士たちが周辺の樹木の枝から作った自作の箸である可能性が高いというのである。このことを指摘したのが主人公の猫猫【マオマオ】であるが、物語とは言え、よく気が付いたものだと感心する。

植物に含まれる毒物とは、植物が自己防衛のために産生する有毒な物質のことを指す。植物に含まれる毒物で有名なものには、アルカロイド、グリコシド、タンパク質などがある。これらの植物に含まれる毒物を摂取すると、食中毒や中毒症状を引き起こすことがあるようだ。

アニメの中でも主人公の猫猫【マオマオ】が語っていたが、シャクナゲのようなツツジ科の植物の花や葉にはグラヤノトキシン(四環性ジテルペン)と呼ばれる有毒成分が含まれているという。だからこれらを食べたり、お茶にしたりすると中毒症状を引き起こすらしい。

これらの植物の蜜を吸ったミツバチが作る蜂蜜にもグラヤノトキシンが含まれており、これを食べると中毒になることがあるとされる。このような蜂蜜は「マッドハニー」と呼ばれ、トルコやネパールなどで採取されることがあるという。第10話で登場する「蜂蜜アレルギー」(後述)は、食物アレルギーではなく、実は「マッドハニー」である可能性も否定できない。真相は、原作者にも分かっていないかも知れないが・・・


第3話『幽霊騒動』:
浮遊病(睡眠時遊行症

第三話では、実は強いストレスが原因で発症したかも知れない浮遊病(睡眠時遊行症)の中級妃の話が登場した。当初は幽霊騒動にまで発展していたが、「幽霊」の正体は一度も「お手付き」になっていない中級妃で、武功を立てた武官に下賜される予定だという。当事者の中級妃と武官は元々、幼馴染で恋仲であったという事実と、主人公の猫猫【マオマオ】自身が花街の妓女から聞いていた偽装の話から中級妃の「浮遊病」は偽装の可能性が高いことを見抜いていたが、中級妃の幸せを願って沈黙を守ったというあらすじであった。

浮遊病とは、睡眠障害の一種で、睡眠時随伴症という疾病に属しており、深い睡眠中に意識がないまま動き回ってしまう状態を指す。「夢遊病」や「睡眠時遊行症」とも呼ばれる。

浮遊病の原因は、深いノンレム睡眠から中途半端に覚醒することによって起こると考えられているが、その発症メカニズムはまだ完全には解明されていないらしい。

浮遊病の症状は、個人差があるが、ベッドから起き上がったり、周囲を歩き回ったり、着替えたり、食べたりなどの行動がみられる。声をかけてもほとんど反応せず、覚醒させるのは難しい。症状は通常1~10分程度で終わり、覚醒後は遊行の記憶がない。

浮遊病は、小児期に多くみられる疾病で、成長とともに減っていくことが多い。しかし、成人でも発症することがあるという。

浮遊病の治療は、症状が軽くて自然に消失する場合もあるが、症状が重くて危険な場合は、薬物療法や心理療法などが行われる。また、睡眠環境の改善やストレスの軽減などの生活指導も重要であるとされる。いずれにせよ症状に気づいたら早めに医師に相談した方がよい。


第4話『恫喝』:
オシロイによる水銀中毒の治療

第四話では、第一話で登場した水銀を含有する白粉【おしろい】を使い続けて水銀中毒になっていた妃を回復させるために主人公の猫猫【マオマオ】が奮闘する様子が描かれていた。皇帝の命であるにもかかわらず、水銀中毒の妃を救おうとする主人公をじゃまする女官たちも登場していて「無知は罪」ということを教えてもらった話であった。

アニメ中では、主人公が妃の体内から毒物(塩化水銀(I))を排出させようとお茶を利尿剤代わりに用いたり、サウナで汗をかかせてたりしていた。

しかし、実際は塩化水銀(I)の中毒患者に利尿剤やサウナは役に立たない。塩化水銀(I)は無機水銀の一種で、腎臓に蓄積して腎不全を引き起こす危険があるものである。利尿剤やサウナは水分を失わせるだけで、水銀を体外に出す効果はなく、逆に水分不足によって腎臓の働きが低下したり、血液中の水銀濃度が上昇したりすることすらある。

このように主人公のとった治療方法は、現代の医学の常識からは少し逸脱していた第4話ではあった。しかしながら、水銀白粉の使用をすぐに中止させて、中毒患者の妃の体内の毒物をなんとか体外に排泄させなければならないという治療目的に沿った主人公の行動は決して間違ってはいない。手段が異なっていたことには目をつぶりたい。アニメのストーリー展開には支障はなかったのであるから目くじらを立てることではないと私は思っている。


第5話『暗躍』:化合物の炎色反応

第五話では、化合物の炎色反応の話が登場した。主人公の猫猫【マオマオ】は、木簡に塗布された食塩(塩化ナトリウム)などの無機化合物や金属元素を含む有機化合物による炎色反応を「暗号代わり」に使用しているのではないかと気づき、宮廷内の不穏な動きに危惧し始めたという展開が描かれていた。

炎色反応は、金属イオンや金属の粉末を炎に入れると、特定の色の光を放出する現象を指す用語である。この現象は、金属の電子が熱エネルギーを吸収して励起状態になり、その後エネルギーを光として放出して基底状態に戻るときに起こる。放出される光の波長は金属の種類によって決まり、光の波長によって私たち人間の目には色として認識される。したがって、炎色反応は金属の同定や分析にも利用されることがある。また、主人公の猫猫【マオマオ】が語っていたように、花火などにも炎色反応の原理が使われている。

また、主人公の猫猫【マオマオ】が語っていたように、花火などにも炎色反応の原理が使われている。


第6話『園遊会』:食物アレルギー

第六話では、食物アレルギーの話が登場しました。アニメではサバなどの魚介アレルギーが紹介されていた。主人公の猫猫【マオマオ】も蕎麦アレルギーのために蕎麦【そば】が食べられないと物語の中で告白していた。

私の知人の奥様も蕎麦アレルギーで、蕎麦ボーロの粉がわずかに食べ物に混ざっていたためにアナフィラキシーを引き起こし、救急車で緊急搬送された経験があると知人から聞いたことがある。決して食物アレルギーを侮ってはいけないと思う。

食物アレルギーとは、食べ物に対する免疫の過敏による疾病である。特定の食べ物に含まれるタンパク質に対して、免疫システムが過剰に反応して、皮膚や粘膜、消化器、呼吸器などに炎症や障害を起こしてしまう。

食物アレルギーの原因となる食べ物には、個人差が大きく、人それぞれなので厄介である。食物アレルギーの予防は、原因となる食べ物を避けることが基本である。

食物アレルギーは、年齢によっても異なる特徴があるという。乳幼児や子どもでは、卵や牛乳などのアレルギーが多く、成人では甲殻類や果物などのアレルギーが増えるらしい。

食物アレルギーの診断は、食物を摂取した後に症状が出るだけでは確定できない。食物アレルギーの疑いがある場合は、医師に相談して、血液検査や皮膚テストなどを行ってもらう必要がある。


第7話『里帰り』:銀食器に付着の指紋

第七話では、銀食器が毒物の入った食べ物を検知するのに有効であるという話が登場した。同時に銀食器には指紋が残りやすく、その指紋の検出方法も披露された。

中世のヨーロッパや朝鮮王国では、毒殺のためにヒ素がよく使われたという。そのヒ素は硫黄【いおう】を含む不純物として採掘されたということである。そのヒ素中の硫黄が銀食器と反応して黒ずみを生じさせたので、銀食器は毒味の手段として長らく重宝されてきたという歴史がある。

銀食器が毒物に反応して変色するという特性のメカニズムは、銀が毒物中の硫黄や塩素などの化学物質と化学反応を起こして硫化銀や塩化銀になるからである。これが銀食器の変色の理由であり、銀食器が毒味の手段として重宝されてきた理由である。

しかしながら、現代ではヒ素の精製技術が進んで硫黄を除去できるようになり、毒物の種類も多様化した結果、銀食器で毒物を検知することはできなくなってしまっているのは残念である。

主人公の猫猫【マオマオ】が銀食器の表面に残された指紋の特徴から犯人を特定するために銀食器についた指紋を「粉末法」で採取する方法が披露されており、興味深かった。粉末法というのは指紋に含まれる油分にパウダーを付着させて、指紋の形を浮かび上がらせる方法を指す。

銀食器が指紋の採取に役立つ理由は、銀食器は空気中の硫黄分によって黒く変色するという特性があるからだ。この変色は指紋の油分によって防がれる。銀食器に触れる前に、指を鼻の頭をつまむとよいのは、指に油分付着し、銀食器の表面に指紋の形が浮かびやすくなるからである。

現代の指紋分析法では、銀食器の表面に付着した指紋の油分に含まれる脂肪酸やアミノ酸などの成分を高度な機器分析で行っているという。指紋の主の年齢や性別、食生活などの情報まで推定することができるというから驚きである。


第8話『麦稈』:
タバコの葉の毒性+比重差のある液体

第八話では、タバコの葉からの抽出物が猛毒であることと、比重の異なる液体を一つの器に入れると二層に分かれるという話が登場した。そして、客に騙され捨てられた伎女がその客を殺すために上層の液体にはタバコからの抽出物が入れ、毒見を装って安全な下層の液体を客の前で飲むために麦稈【むぎがら】をストローにして使用する話が披露された。

このトリックも主人公の猫猫【マオマオ】は見事に見破ったが、その真相を公にすることはしなかった。証拠が残されておらず、かつ、済んでしまった話だとして、憶測で話をしないよう優秀な薬師である養父に公表を止められたからである。正義感のある主人公ではあるが、伎女への同情と、客の常習犯的な悪行に憤慨して、妓楼で起こった今回の事件が伎女と客の「心中未遂事件」として取り扱われることに異議を申し立てることはしなかった。真実は「殺人未遂事件」であったのだが・・・

この第8話は、ミステリー作品として秀逸であったと私は思う。水とアルコールはよく混和するし、二層に分離する二種類の酒を探すことは不可能に近い。都合よく上層の液体だけにニコチンを溶け込ませることは実際にはできないが、トリックの発想が素晴らしいので目をつぶりたい。

妓楼で働く伎女たちは、酒などの液体を飲む際には食器に口紅がつかないよう麦稈【むぎがら】をストロー代わりにして使用するのが普通であり、過去に毒殺されかかった経験のある猜疑心の強い客でさえ、欺くことに成功させるトリックは見事というしかない。周到に読者にも妓楼で働く伎女たちの習慣を何気なく伝えている描写は準備周到な細部にわたるトリックの仕掛けであり、ハマってしまうほどに実に素晴らしい! 私的には第8話がミステリー作品として好きである。


第9話『自殺か他殺か』:
ストレスによる味覚障害

第九話では、強いストレスによって塩味だけが全く分からなくなってしまっていた味覚障害の武人が、同僚のいたずらで大好きな酒に大量の塩を混入されても気付かずに飲んでしまい、死んでしまうという事件が登場した。

味覚障害とは、味に対する感度が低下したり、味を感じなくなったりする症状全般を指す。味覚障害の原因と考えられる要因は、いろいろと報告されているが、心因性のストレスも味覚障害を引き起こすことがあるという。

心因性のストレスは、味覚を伝達する神経や味蕾の機能を低下させたり、味覚の感受性を変化させたりすることで、味覚障害を生じさせる。特に、うつ病不安神経症などの心の病にかかっている人は、味覚障害のリスクが高いと言われている。

味覚障害の中には、解離性味覚障害というものがあり、味覚を構成する甘味、苦味、酸味、塩味、旨味のうちの一部の味だけが識別できなくなるというものである。例えば、料理の塩加減がわからなくなったり、塩味がまったく感じられなくなったりすることがあるという。まさしく第9話に登場した話のとおりである。

タイトルの『自殺か他殺か』は、女官の死に新相についての見解を指しているが、私が興味をもったのは、武官の死の原因の方である。主人公の猫猫【マオマオ】は殺された武官は糖尿病を患っていたのではないかと推察していたのはさすがである。

糖尿病は、血糖値が高くなることで、神経や血管に障害を引き起こす病である。その影響で味覚を感じる神経や味蕾の機能が低下したり、亜鉛の吸収が悪くなったり、あるいは唾液の分泌が減ったりすることがあるという。これらの原因によって、味覚障害が起こることが報告されている。


第10話『蜂蜜』:蜂蜜アレルギー

第十話では、食物アレルギーの一種である「蜂蜜アレルギー」の話が登場した。登場人物の妃の一人が、蜂蜜アレルギーのために、幼い頃から決してハチミチを食してはいけないと周囲から強く言われ続けながら生きてきたと物語の中で告白していた。

確かに、蜂蜜でもアレルギーを引き起こすらしい。蜂蜜には、ハチの分泌物や採蜜した花の花粉が含まれており、これらがアレルギーの原因(抗原)となって、アレルギーを引き起こすことがあるとされている。

蜂蜜アレルギーの症状も基本的には一般的な食物アレルギーと同様であるが、特徴的な症状も存在するようである。予防は、原因となる蜂蜜を避けることが基本となるのは、他の食物アレルギーと同様である。

蜂蜜アレルギーの診断は、血液検査や皮膚テストなどで行われるので、蜂蜜アレルギーの疑いがある場合は、医師に相談して診断や治療を受けることが大切である。


第11話『二つを一つに』:蜂蜜アレルギー

第十一話(最新話)では、ある妃(阿多妃)が産んだとされる大事な赤子に栄養を摂らせるために妃の侍女が蜂蜜を与え続けた結果、その赤子が亡くなってしまった。妃の侍女は、後日、偶然にも蜂蜜アレルギーの幼い妃(里樹妃)に出会うことで赤子の死因が知ることになった。妃の侍女は、大切な主(阿多妃)のかけがえのない赤子を自らの手で死亡させてしまったことに後悔すると共に赤子の死因を封印するために幼い妃(里樹妃)を毒殺しようとし、実行犯は第9話で自殺した女官であったことが語られた。

その真相を主人公の猫猫【マオマオ】によって暴かれた侍女は、猫猫の提案を受け入れ、本来の動機とは別の動機を理由にして自首し、処刑された。処刑という結果は、変わらないにもかかわらず、その別の動機を理由にする方が妃(阿多妃)の侍女にとっては受け入れやすかったのだろう。第11話のタイトル「二つを一つに」は、本来二つの動機があったのを、一つの動機として処理した」という意味が込められていた。しかし、この侍女も真相を知らないままに世を去ったことになっているのは哀れである。

第十一話は、なんとも切ない話であったし、壬氏という主人公を庇護する宦官(?)と猫猫【マオマオ】自身の出生の秘密が次回以降で明かされそうな期待を抱かさせる放送回であった。


第12話『宦官と伎女』:冬虫夏草

第12話では、物語の最後に「冬虫夏草」【とうちゅうかそう】が登場した。「冬虫夏草」は、壬氏が緑青館から猫猫【マオマオ】を身請けする際に多額の金子と共に持参したものである。

冬虫夏草は、キノコが昆虫やクモに寄生し、体内に菌糸の集合体である菌核を形成して、さらに昆虫の頭部や間接部などから棒状の子実体を形成したものの総称である。

冬虫夏草は、古来より東洋医学の生薬として不老長寿、強壮の秘薬として重用され、鎮静、鎮咳薬として病後の衰弱、肺結核などに用いられてきた。また、冬虫夏草エキスは、生体全組織におけるATPの効率的な生産を可能にし、生体全機能の向上改善に寄与すると考えられている。

冬虫夏草は現在でも取引されているようだ。冬虫夏草はその希少性から高値で取引され、特に中国では重要な収入源となっているという。冬虫夏草の価格は形状によって異なり、原型の冬虫夏草の価格相場は1gあたり1500~4000円の高値で取引されているらしい。薬師である猫猫がこの不思議な冬虫夏草を夜な夜な眺めては舞い上がっている様子が理解できると共に愉快である。

しかしながら、冬虫夏草の人気が高まる一方で、乱獲や環境破壊により資源の減少が心配されているという。また、偽物の問題もあるほか、安全性や品質管理が保証されているかどうかを確認する必要がある。


あとがき

第8話『麦稈』で猫猫の養父・羅門が猫猫の推理(推測)に対して『憶測でものを言っちゃいけないよ』という発言がある。私たちの意見は事実に基づいて考え、言うべきだという教訓である。

「火のない所に煙は立たぬ」ということわざもあるが、昨今のゴシップ週刊誌あるいはSNSでのフェイクニュースには酷いものが多い。まるでわざとボヤをあおって大火事にし、観衆の注意を引こうとしているかのようだ。このようなことを続けていれば、読者の信頼を失くすことになることに気付かないのだろうか? きっと気付いているはずで、確信犯的な要素がより悪質的だ。売上至上主義の、その場限りで、刹那的で世相を牽引している。私たちはこれらのウソに騙されないような賢い読者にならなければいけない。そのためには「事実に基づき自分で考えて判断」できるようになりたいと思う。

情報を批判的に評価し、その信頼性を判断する能力を得ることは容易なことではないのは分かっている。情報源の信頼性を評価するためには、その情報がどこから来たのか、どのようにして得られたのか、どのような目的で共有されているのかを理解する必要があり、これには時間と労力を必要とする。しかし、それは情報化時代に生きる私たちが自分自身と社会全体を保護するために必要かつ重要なスキルである。努力を重ねるしかないと私は思う。


アニメ『薬屋のひとりごと』は、大陸の中央に位置する架空の大国の後宮を舞台にした日向夏のミステリーとファンタジー、ラブコメディの要素を含んだ魅力的な作品を原作としたものである。

主人公は、花街で薬師をしていた少女・猫猫【マオマオ】が人攫い【ひとさらい】に遭い、後宮の下働きの下女として売り飛ばされ、宮中で働くところから始まる。できるだけ目立たないようにして、年季明けを待つ日々を過ごしていたが、ある日、帝の御子と寵妃たちが呪いによって衰弱しているという噂を知り、正義感から花街の薬師だった経験を活かしてその原因を匿名で寵妃たちに知らせた。そのことがきっかけで、後宮を束ねる美形の宦官・壬氏【じんし】の目に留まり、皇帝の寵姫の毒見役に抜擢される。壬氏に気に入られた猫猫は、その後もさまざまな事件や面倒事を押し付けられることとなる。自らの「毒への好奇心」もあって、深い洞察力と薬師としての薬学知識を使い、次々にそれらの難事件や難問を解明・解決していくという話であった(第1クール;第1話~第12話;2023年10月から12月に放送)。

アニメ『薬屋のひとりごと』は現在、第2クール(第13話~第24話;2024年1月から3月)がABEMAでも放送中であり、その第2クールの放送も残り2話で終わるかと思うとちょっと寂しい気がする。

アニメの最終話の展開は、原作小説や漫画に基づいていると思われるが、詳細は明らかになっていない。放送予定では、最終話は2024年3月23日に放送されることになっている。アニメの最終話がどんなふうな展開になるのか楽しみに待ちたいと思う。