はじめに
トラベルフォトライターは世間的には無名に近いが、この分野は競争が激しいため、職を得るための戦略を考えることでリスクを分析し、競争優位性を得る方法を模索しなければならない。また、不測の事態に備えるリスク管理能力が身に付け、困難を乗り越える力を強化しておく必要もある。
トラベルフォトライターの職を得るための戦略と戦術を考えることには、多くの意義があると思う。その理由は、このプロセスは単に目標達成を目指すだけでなく、考えることによって私たちの個性や強みを引き出し、目指すキャリアに向けた成長を促すものになると期待できるからである。
戦略を立てることで、どのような分野やテーマで活動したいのか、明確にするきっかけ、つまりに目的意識の醸成に繋がる。また、自分に必要なスキルやアプローチを整理し、無駄なく効果的にステップを進めることができれば、効率的な行動計画を立案することができると思う。
これらの意義を踏まえると、職を得るための戦略と戦術を練ることは、就職活動以上の価値を持つ取り組みであり、自己成長と自己実現の両方を叶えるプロセスと言えるのではないだろうか。
『孫子の兵法』における「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」の教えに従い、ターゲットの事前調査を怠らず、かつ、自分の力量を把握した上で、トラベルフォトライターへのチャレンジにおいても的確な戦略と戦術を考えたいと思う。
トラベルフォトライターになるための戦略
スキルの習得と強化
- 写真撮影スキル
- 高品質な写真はトラベルフォトライターにとって重要
- 構図、光の使い方、編集技術を学ぶ
- 文章力の向上
- 顧客(読者)を引き込む文章を書くために、ライティングの基本やSEOライティングを学ぶことが役立つ
- 専門知識の習得
- 特定の地域やテーマ(例えば、歴史、神社仏閣、自然公園)に特化することで、独自性を高めることができる
ポートフォリオの作成
- 個人ブログやウェブサイト
- 自分の作品を公開する場を作る
- 旅行記や写真を掲載し、自分のスタイルをアピール
- SNSの活用
- Instagramなどで写真や記事を発信
- フォロワーを増やすことで影響力を高める
- クラウドソーシングサイト
- 初心者向けの案件を受けることで、実績を積む
ネットワークの構築
- 業界イベントへの参加
- 旅行関連のイベントやワークショップに参加し、同業者や編集者とつながりを作る
- 旅行メディアへの寄稿
- 小規模な旅行メディアやブログに記事を投稿
- 実績を積むことが重要
戦略立案の具体例
このようにトラベルフォトライターになるにも戦略が必要であることが分かった。がむしゃらに努力したからといって確実にプロのトラベルフォトライターになれるわけではない。ましてやシニアの私には残された時間も限られている。できることなら最短距離を行きたいものであるが、経験も実績もない素人が最短距離で走れるわけがない。
そこで、先人の知恵も借り、その戦略を立案してみた。戦略とは目標を達成するための大きな方針や計画を指す。トラベルフォトライターになるための戦略としては、下表のようなものが考えられるが如何であろうか。

ゴールは、プロのトラベルフォトライターとして認知され、旅行サイトなどのクライアントから非公開の案件を継続的に受注することできるようになることである。
トラベルフォトライターになった証は、自分の作品に対して報酬が得られることである。収入が得られていないうちは、単なる趣味と変わらない。
自分のブログで広告収入が得られるようになれば、一歩前進したことになる。しかし、それだけでは不十分で、旅行関連の記事や写真を発注しているメディアや企業に応募したり、スキルマーケットやクラウドソーシングなどで仕事を獲得したりすることが必要がある。
開業は、持続化可能な収益化の目途が立ってからでもよいと思う。開業のタイミングはトラベルフォトライターになるための戦略には影響しないからである。
トラベルフォトライターになるための戦術
ターゲットメディアのリサーチ
自分が書きたいテーマやスタイルに合ったメディアをリストアップし、投稿ガイドラインを確認する必要がある。
メディアの特徴や読者層を理解し、それに合わせた提案を行えるようにする。
提案力の強化
- ピッチの作成
- メディアに記事を提案する際、具体的なアイデアやサンプルを提示する
- クライアントのニーズを理解
- メディアやクライアントが求める内容に応じた記事を提供することが重要である
継続的な学びと改善
- フィードバックの活用
- 編集者や読者からのフィードバックを受け入れる
- そして、改善を続ける
- 新しいトレンドの把握
- 旅行業界や写真技術の最新トレンドを学ぶ
- 常にスキルをアップデートする
戦術立案の具体例
戦術とは、戦略を実現するための具体的な手段や方法を指す用語である。トラベルフォトライターになるための具体的な戦術としては、下表のようなアクションが考えられる。

私が大学生であったならインターンシップを利用して旅行メディアや旅行会社で働き、トラベルフォトライターの仕事内容や必要なスキルを実践的に学ぶ機会があったかも知れない。インターンシップには年齢制限や応募条件があるので、この方法は私には無理である。
トラベルフォトライターになるための戦術の一環として、下記のようなアクションプランを考えてみたがどうであろうか。
- 必要な能力・スキルの習得
- 個人ブログの開設
- 個人ブログで記事を積極的に投稿
- 個人ブログを紹介してくれる旅行メディアに寄稿
- SNSの積極的活用
- クライアントからの非公開案件を継続的に受注
アクションプラン
私の場合、このアクションプランの一応のゴールを「6. クライアントからの非公開案件を継続的に受注」にしているが、各人のゴールは人それぞれに設定して構わない。むしろ自分に合わせて設定すべきであろう。
1.必要な能力・スキルの習得
トラベルフォトライターに必要な能力やスキルの習得に関しては、別稿「トラベルフォトライターに求められる不可欠なスキル」に詳述しているので、そちらをご参照ください。
2.個人ブログサイトの開設
将来的に、直接、コンタクトがとれる窓口として機能するような個人ブログサイトを開設することから始めよう。文章力のトレーニングには実践が欠かせないので、実践道場として個人ブログを活用したい。
なんでも自由に好きなことを書ける個人ブログは、文章力のトレーニングに最適である。また、Google Analyticsを活用すれば、アクセス数や検索ワードなど、ユーザーの反応や動向も確認できる。
ブログが果たす「窓口」の役割も侮れない。個人ブログを運営していれば、旅行サイトなどなんらかの形で記事を読んで興味を持ってくれた人から直接コンタクトをとってくれる場合があると期待できるからである。このように窓口として機能してくれるのが個人ブログであると思う。
詳細は、別稿「トラベルフォトライターの個人ブログサイト開設」を参照して下さい。
3.個人ブログで記事を積極的に投稿
旅の専門家(=ナビゲーター)として、観光スポットや宿泊施設のガイド記事を書く。勿論、記事はオリジナルである事が重要である。ナビゲーターとして専門性の高いテーマや読者への旅行提案を意識した文章構成、原稿作成や写真撮影が求められると思う。
読者が客観的に記事をみて「ここに行きたい」と思わせる内容と信頼性が必要となる。そのためには自分自身の旅行経験を基にした観光スポットのガイド記事の作成が中心となるはずだ。
旅行が好きな読者の方に「面白い!」、「参考になる!」と思ってもらえるような自分の実体験を元にした記事を中心にサイトを構築したい。
一日でも早く、個人ブログを経由して新たな仕事の依頼がもらえるようにしたいものだが、長期戦を覚悟しておきたい。
個人ブログを立ち上げれば、文書作成のトレーニングや記事を企画・立案するトレーニングになる。個人ブログで文章作成のトレーニングを積み、PV数や、読者がブログにたどりついた検索ワードなども細かく把握することでSEO対策についても学ぶことができると期待したい。
ブログ記事は、無駄な記述は必要ないが、1記事あたり最低でも1,500文字以上を目安に原稿を書き、3~15枚の自分自身が撮影した写真(オリジナル)のみを使用することにするを基本方針にしたいと思う。
4.旅行メディアに寄稿
特別なスキルやコネがない人にも門戸が開かれているのが旅行サイトへの寄稿である。そのため、広くライターを募集している旅行サイトを探し、寄稿できるチャンスを探したい。
なんらかのメディアでの執筆経験が前提となっているサイトもあるが、初心者でも応募できるサイトも少なくない。個人ブログを運営していれば、それも実績として提示することができる。
文章作成能力に自信がある場合は、旅行サイトのライター募集に応募してみるのもありかも知れない。
サイトによってライターの選考方針は異なるので、そのサイトにマッチするようなサンプル記事やお題に沿った文章を執筆して選考されるというパターンが多いようだ。
一度特定の旅行サイトで執筆実績を作ってしまえば、それ以降は過去に執筆した記事を実績として示すこともできるようになるという。
寄稿ができるようになれば文字単価だけでなく、記事としての単価も上がることが多いという。
旅行サイトへの寄稿に伴う報酬は、「一記事〇〇円」という定額報酬制の場合が多いが、アクセス数に応じて報酬が支払われる従量報酬制をとっているサイトもある。
オープンにライターを募集している旅行サイトの場合、記事一本あたりの相場はだいたい1000円~5000円程度であるという。特に、オープンにライターを募集している旅行サイトの報酬は高いとはいえない。
旅行メディアに寄稿するメリットは、少ないながらも収入がある程度安定することである。一定の原稿料がもらえる寄稿は、駆け出しトラベルフォトライターにとっては大きな進歩である。
サイトによっては、取材費を負担してもらえたり、観光局やホテルなどが主催するプレスツアーへの募集がかかったりする場合もあり、無料で旅行ができるチャンスもある。
報酬が低めのサイトはライター紹介に力を入れているところが多く、ライターの個人ブログへの誘導につながりやすいなど、単に金額だけでは測れないメリットもあるようだ。
一か所のサイトだけでは執筆できる本数が少なかったり、他のライターとネタがかぶってしまったりする。サイトの方針や報酬額を踏まえ、自分の書きたいサイトを複数選んで寄稿するのが一般的なアプローチといえよう。
早く、署名記事(ライター名が記載される記事)が書けるようになりたいものである。
旅行サイトへの寄稿やブログ、SNSなどでの情報発信を続けていくうちに、メディア業界や旅行業界にコネクションができ、オープンに募集していない仕事を手がけられるようになっていく可能性はあると思う。それを追求していきたい。
旅行サイトで執筆している記事が誰かの目に留まり、より条件の良い個人的な仕事の依頼につながる可能性もある。そのチャンスを狙いたい。
ライターを募集している旅行サイト
LINE トラベル jp LINE トラベル jp |
未経験可。報酬は一記事300円の固定掲載料+アクセスに応じた従量報酬制のミックス。PVが多ければ多いほど報酬が高くなる仕組みで、6ヵ月以上間隔を開けずに新規記事を執筆し続ければ、過去に書いた記事に対しても、半永続的に報酬が発生し続ける仕組みである。PVが稼げる記事ほど有利になるのではないだろうか。 |
tripnote tripnote |
ライター未経験でも応募可。一記事500円の固定掲載料+アクセスに応じた従量報酬制のミックス。PVが多ければ多いほど報酬が高くなる仕組みである。毎月2本以上、かつ1年以上継続的に記事を入稿できること、記事には自分で撮影した写真を3枚以上使用することが条件。 |
itta itta |
ライター未経験でも応募可。報酬はアクセスに応じた従量報酬制。ポイント制を採用しており、貯めたポイントを換金できる仕組みになっている。記事に掲載する写真はすべて自分で撮影したものであることが前提。 |
SAGOJO SAGOJO |
旅行サイトではないが、「すごい旅人を募集する」というコンセプトで、ライティングや写真撮影、移住やワーケーションのモニターなど、旅人向けの色々な募集が掲載されている。 |
TABIZINE http://tabizine.jp/ |
規模も大きい正統派系トラベルメディア。海外に限らず国内ネタも含めて広く扱っているので、必ずしも海外に強くなくても、お出かけやグルメが好きな方であれば寄稿できる可能性は十分あるだろう。 |
世界新聞 http://sekaishinbun.net/ |
バックパッカー系のトラベルメディアでライターも個性派ぞろい。旅人が自身の体験にもとづいて、オリジナルな記事を書くことを大切にしているので、知識や文章力よりも旅の経験がより重要となるだろう。 |
TABIPPO.NET http://tabippo.net/ |
大学生が立ち上げた世界一周団体がもとになったメディアなので、編集部のメンバーも若く、独特の雰囲気がありそうだ。世界新聞同様、ライター紹介は比較的大きな扱いになっているので、ブログなどライターの個人メディアへの流入も見込めるだろう。 |
ところで、クラウドソーシングとは、仕事を依頼したいクライアント(企業)とライター(個人)がそのサイトに登録し、条件にマッチすれば文書作成の仕事を受注できる仕組みである。
初心者にも使いやすいクラウドソーシングサイトとして、サグーワークスがある。サグーワークスに登録し、プラチナライター制度というものにチャレンジすることから始めてみようかと思ったこともあるが、若者ならいざ知らず、シニアの私にはそこで修行する時間がない。早く次のステージに立ちたかったのでこのステージをスキップすることにした。
それにもう一つの理由は、クラウドソーシングで案件を探している人は多く、公開の募集に応募したりすることは大勢の人がやっている。自分がやるべきことは、大勢の人がやっていないことであると考え、私の場合は、クラウドソーシングを利用しないことにした。しかし、勿論、クラウドソーシングを全否定しているわけでは決してない。
5.SNSの積極的活用
私は、最近になってようやくInstagramを始めた。それまで、X(旧Twitter)やInstagramなどのSNSを使った経験が全くなかった。しかし、これからの時代は、SNSも併せて活用していかないと個人ブログだけでは十分なツールにはなり得ないと思う。
とにかく若者層からの支持の多いのはSNSであるため、基本的にSNSを活用する場合は、自分の書いたブログ記事の拡散に利用するつもりである。まだ、実践はしていなのだが・・・
SNSのフォロワーを増やし、自らインフルエンサーになれればよいが、それは夢物語だろう。せいぜいフォロワー数の多い有力アカウントにリツイートされるような良質なコンテンツを作り続けていきたいと思う。そうすれば、いつかは一気にフォロワーが増えるチャンスがあるかも知れない。
そうすれば、旅行会社の方から執筆を依頼されることもあるかも知れない。しかし、このアイデアはどれくらい時間がかかるかわからないうえ、不確実な方法論であると言える。あくまでも補助的・補完的なアプローチとして考えておくべきと心得ている。
6.非公開の案件の受注
オープンには募集されていない仕事の報酬は、オープンに募集されている仕事の報酬よりも高い傾向にあるという。
旅行サイトに寄稿できるようになった後は、どれだけ非公開の案件を手がけられるようになるかがプロのトラベルフォトライターとしての勝負となるように思う。だから今回のアクションプランのゴールに設定してみたが、如何であろうか?
非公開の案件を受注できるようになるためには、地道に情報発信を続け、少しずつ実績を重ねていくことが必要だと思う。旅行サイトでの執筆実績ができたら、オープンにライターを募集していないサイトにも直接、アプローチしてみるつもりだ。
より条件の良い業務委託のライティングの仕事を探し、さらに上のステージに行くための努力を継続していきたい。大切な事は、大半の人がやらないことにチャレンジすることだと思う。
一つのメディアだけで自分の希望をすべて満たすのが難しい場合は、複数のメディアに寄稿し、それぞれ違う位置づけにするのもいいだろう。
自分の個人ブログへの流入を重視しているので、自分がどんなライターとして紹介されるかも大事にしたいと思う
あとがき
トラベルフォトライターとして認知されるにはかなりの時間を要することになるだろう。
企画の立て方や取材の方法を学び、コミュニケーションスキルを磨き、写真撮影・編集のスキルや、構図やアングルに関するセンス、執筆や構成などを考えるスキルなど、多くのスキルを必要とする仕事のようだからである。
個人で仕事の依頼を獲得するようになるまでには、自分のブログなどで旅先の記録を投稿し、能力・スキルを磨いていくことが肝要である。
個人ブログやSNSの活用、個人ブログで文書作成能力を鍛え、旅行サイトに寄稿して経験値を増やしていきたい。
そして、フリーランスのトラベルフォトライターとして認知されて、やがては自分が本当にやりたい仕事を選べるような身分に早くなりたいものである。そのための研鑽は続けていくつもりだ。