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シニア世代の生活

マイナンバーカードの利便性を理解し、積極的活用!

はじめに

マイナンバー制度の公式英訳は、Social Security and Tax Number Systemであり、この制度の目的と機能から理解すれば Individual Number Card Systemと訳しても良いことになっている。

間違ってもマイナンバーカードを”My Number Card”と訳しては可笑しいだろう。何故なら「あなたのマイナンバーカードを見せてください」と言いたい場合、英語で”Please show me your my number card”と言っては訳が分からなくなる。冗談はさておき、本題に入ろう。

マイナンバー制度に対しては肯定的な意見と否定的な意見がある。ある制度に対して相対する意見が存在するのは健全な証拠である。しかしながら、インターネット上では否定的な意見が多い印象を私は受けている。ちなみに私はマイナンバー制度に対しては肯定的で立場であるので、これらのインターネット上でのネガティブな意見には違和感を覚える。

インターネット上でマイナンバー制度に対するネガティブな意見が多い理由は、次の4点に集約できそうである。

  • プライバシーとセキュリティの懸念
  • マイナンバーカードの普及率の低さ
  • マイナンバーカードの普及策への批判
  • マイナンバーカード制度自体の理解と認識の不足

プライバシーとセキュリティの懸念については、マイナンバーは個人情報を一元管理するシステムであるため、個人情報の漏洩や不適切な利用に対する懸念があるのは私にも理解できる。

インターネット上では、特に「どこの誰が、自分の情報を知っているのか、あるいは知らないのかを把握できない」という不安が強いことを指摘する意見が多いように思う。

普及率の低さについては、確かにマイナンバーカードの普及率は他の先進国に比べて低く、全体の普及率は36%程度にとどまっているらしい。このような普及率の状況では、マイナンバーカードの利便性を十分に享受できない状況が続いていると言わざるを得ない。カード利用の利便性がさらに向上し、それが啓蒙活動を通じて国民に理解・認識されれば普及率も増大するはずである。

普及策への批判については、マイナンバーカードの普及策として行われた「マイナポイント事業」に対する批判が多いようだ。まさに「異次元」のマイナポイントの付与は、「ポイント取得だけを目的に個人番号カードを取得するのでも構わない」という政策であり、それが政府不信の国民感情から逆効果となり、個人識別番号及び個人情報の漏えい、不正利用の危険性を高めるとの批判に繋がったのかも知れない。

制度の理解と認識の不足については、マイナンバー制度の国民への啓蒙が進まなかったことから、この制度のメリットが国民の多くには伝わっていない。そのような状況下では、専門家でもないコメンテーターのネガティブな意見によっても惑わされる傾向が高まる感がある。

マイナンバー制度に限らず、専門家でもないコメンテーターがよく勉強せずに個人的見解を自信をもって発言するのは控えて貰いたいものである。テレビの情報番組は、少なくとも賛同・否定の相反する意見をコメンテーターに言わせるべきであろう。

マイナンバーカードの利便性や機能性について理解や認識していない人が多いということは、カードの取得や利用に消極的な傾向があるのは当然の帰結である。

これらの要素が複合的な原因となって、インターネット上ではマイナンバー制度に対するネガティブな意見が多いのだと思う。これらの問題を解決するための取り組みも政府によって進められているようだが、その進捗状況が遅々として進んでいないようにしか見えないのは残念で仕方がない。

本稿では、マイナンバー制度に対する上述のような不興の最大要因を吹き飛ばすようなこの制度のメリットやカード利用の利便性について紹介したいと思う。


<目次>
はじめに
マイナンバーカードの利便性
マイナンバーカードのリスク
マイナンバーカードのセキュリティ対策
マイナンバーカードの普及策
あとがき

マイナンバーカードの利便性

マイナンバー制度におけるマイナンバーカードの利便性については、現状においても下記のように多くの利点がある。

  • マイナンバーの証明書として機能する
  • 本人確認用書類として機能する
  • 健康保険証として使用できる
  • 確定申告時の電子申告e-Tax)が容易になる
  • 住民票などの各種証明書がコンビニで出力できる
  • 給付金等の受け取りが円滑になる

中でも健康保険証として使用できるメリットは非常に大きい。そのため、別稿「マイナンバーカードと健康保険証の一体化の利点は?」で説明する。


マイナンバーカードのリスク

一方、マイナンバーカードを持ち歩くようになれば、短所としては下記のようなリスクが挙げられる。

  • 紛失・盗難のリスク
  • 個人情報漏えいのリスク

上記のリスクは、マイナンバーカード特有のものではなく、銀行のキャッシュカードや信販会社のクレジットカードなどと同様のリスクである。


セキュリティ対策

マイナンバーカードのセキュリティ対策は、非常に厳重に行われているようである。その主な対策を下記に紹介する。

  • カードの特殊加工
  • ICチップのセキュリティ
  • 紛失・盗難対策
  • 法律による対策

マイナンバーカードの特殊加工については、カード面に文字をレーザーにより彫りこむとともに、複雑な彩紋パターンを施すなどの特殊加工が施されている。それらは、顔写真を含めたカードの偽造を困難にしていると言えよう。

ICチップのセキュリティについては、マイナンバーカードに搭載されているICチップにはプライバシー性の高い情報は記録されていないという。このことは、カード自体を盗んでも個人情報を入手できないことを意味する。スマートフォンの盗難の方が被害が大きいと言えるだろう。

また、ICチップの読み取りに必要な数字4桁のパスワードは、一定回数間違えるとロックがかかり、本人が手続きしないとロックの解除ができないようになっている。これは、キャッシュカードやクレジットカードと同じような仕組みである。

紛失・盗難対策については、マイナンバーカードを紛失または盗難に遭遇しても、24時間365日、マイナンバー総合フリーダイヤル0120-95-0178)でカードの利用を停止できる。これもキャッシュカードやクレジットカードと同様の仕組みである。

一方、マイナンバーカード独自の対策法も存在する。それは「マイナンバー法」という法律による対策である。この法律によってマイナンバーカードを取り扱う行政や民間企業に対するセキュリティ対策が施されている。これには、本人確認の徹底、特定個人情報の保管・作成などの禁止、個人番号情報保護委員会による監視・監督、特定個人情報保護評価などが含まれているという。

これらの対策により、マイナンバーカードのセキュリティは高度に保たれているが、リスクがゼロになるわけではない。カードの取り扱いには、キャッシュカードやクレジットカードと同様に十分な注意が必要であることは言うまでもない。しかしながら、世間一般やインターネット上でのセキュリティ対策への過剰すぎる批判は全く根拠がないものであると言えよう。


マイナンバーカードの普及策

マイナンバーカードの普及策については、下記のような様々な取り組みが政府主導で行われている。

  • 健康保険証とマイナンバーカードの一体化
  • マイナンバーカード活用による救急業務の迅速化・円滑化
  • マイナンバーカード活用による災害時の利用シーンの拡大
  • 出生届とマイナンバーカード申請書の一体化
  • 運転免許証とマイナンバーカードの一体化
  • iPhoneにマイナンバーカード機能を搭載
  • 図書館利用カード等としての利用拡大

健康保険証とマイナンバーカードの一体化によって、マイナンバーカードの利便性が飛躍的に向上するので、マイナンバーカード制度の普及に大いに寄与することだろう。

そして、この一体化により、マイナンバーカードが健康保険証としても機能するようになるために、全国民がマイナンバーカードを取得し、利用するきっかけになることだろう。

現行の健康保険証の発行は、令和6年(2024年)12月2日に終了し、マイナンバーカードでの保険証利用が基本となる仕組みに移行する予定になっている。令和6年(2024年)12月2日時点で有効な健康保険証は、最大1年間有効とする経過処置が設けられているが、経過処置期間中に発行済保険証の有効期間が到来した場合や、転職・転居などで保険者の異動が生じた場合は失効するらしいので、マイナンバーカードへの一本化は加速するはずである。一部のマスコミなどの外野は煩いが(何が目的なのか理解できない)、河野大臣には頑張って頂きたい。

マイナンバーカード活用による救急業務の迅速化・円滑化については、救急隊がいち早く傷病者の受診歴、薬剤・手術・診療・検診の情報を確認できる仕組みを実現するために、マイナンバーカードを積極的に活用する施策を指している。

マイナンバーカード活用による災害時の利用シーンの拡大については、被災者の支援手続きにおけるオンライン化、避難所における入退室管理等のデジタル化において、マイナンバーカードを活用する取り組みを指している。

出生届とマイナンバーカード申請書の一体化については、出生時からマイナンバーカードを取得することを標準化するため、出生届とマイナンバーカード申請書を一体化する取り組みが進められているらしい。この施策によって、次世代を担う国民の全てがマイナンバーカードを出生と共に所持できるようになるので、カードの普及率向上に貢献することだろう。

運転免許証とマイナンバーカードの一体化については、運転免許証の住所変更届が不要になるなどのメリットがあるので、是非、早く実現してもらいたい。運転免許証は、本来の目的以外に、本人の確認書類として機能することから長らく重宝されてきた。しかし、昨今、運転免許証の偽造による不正事件が多数発生していることから、本人確認書類は偽造などのセキュリティ対策が強化されているマイナンバーカードに一本化しようとしている。そういった観点からも運転免許証とマイナンバーカードの一体化は時間の問題であると思う。私は大賛成である。

iPhoneにマイナンバーカード機能を搭載については、日本国民全体の約半数を占めるiPhoneユーザーに対してマイナンバーカードの利便性を訴求するための施策と言えよう。iPhoneにマイナンバーカード機能を搭載した場合、利便性がさらに向上するのか、つまり付加価値があるのか否かに関してiPhoneユーザーの一人として関心がある。

図書館利用カード等としての利用拡大については、図書館利用カード等、身近な市民サービスでの利用を拡大するための取り組みも進められているらしい。マイナンバーカード一枚さえあれば住民サービスの全てが享受できるのは良いことではないだろうか。マイナンバーカードの利便性が高まれば、普及率も自ずと増大していくはずである。

上記の施策は、マイナンバーカードの普及と利用拡大を目指したものである。マイナンバー制度は、デジタル社会の実現に向けた基盤となるものである。だからこそ、これらの施策は政府主導で進められているわけである。

一部のマスコミをはじめとする外野は煩いが、このようなノイズに怯むことなくデジタル社会の実現に邁進して貰いたい。デジタル社会の実現にはデジタル庁が各省庁や各自治体と連携して取り組んでいく必要がある。河野大臣の卓越したリーダーシップに期待したい。


あとがき

マイナンバー制度の公式英訳は、Social Security and Tax Number Systemである。この英訳の意味するところは、「社会保障・税番号制度」である。

つまり、マイナンバー制度は社会保障制度や税制の公平性と公正性を向上させることを目指している。このマイナンバー制度により、社会保障や税の負担を不当に免れることや不正受給の防止が可能になり、本当に困っている方へのきめ細かな支援が可能になると期待されている。

銀行口座や証券口座などの金融口座にはマイナンバーの登録が義務化されている。そのため、マイナンバー制度は脱税対策に役立つと言われている。マイナンバー制度は、個々の人々にマイナンバーを付与することで、本業としている会社の給与収入だけでなく、副業や株式投資などで得た収入もすべて国が把握できる仕組みになっている。

マイナンバー制度により、所得隠しや脱税を防ぐことができ、公平な税制度の実現に寄与できると国は主張している。確かに、マイナンバー制度により、国税庁は個々人の収入を把握することが容易となり、このことが税の不公正の解消につながっていると言えなくもない。しかしながら、マイナンバー制度はツールの一つであるので、完全な脱税防止には各個人の正確な所得申告や適切な税務対応が重要となるはずである。税務署から「申告漏れ」や「脱税」などと追及されないよう、きちんと申告をするよう努めたいものである。

私たちシニア世代の庶民にとっては、マイナンバー制度は短所よりも長所の方が多い制度である。シニア世代の庶民の多くにとっては、税負担よりも給付や社会サービスの授受の方が多くなっているはずである。具体例を挙げるなら、例えば、健康保険証としての利用、過去の病歴や薬歴に基づいた安全な医療や診断の提供、民間のお薬手帳アプリとの連携、年金記録の確認、緊急時の給付金や各種給付等の受け取りなどである。

一方で、マイナンバー制度により、個人の収入や資産状況が国に把握されることに対する懸念も指摘されている。特に、富裕層や企業の一部では、これにより課税が強化されるとの見方があるからである。

しかしながら、これは公平な税制を実現するための重要なステップであり、社会の公正性を高める効果を期待すべきであろう。つまり、マイナンバー制度を否定したいのは、収入の全容を税務署に把握されては困ると考える富裕層の一部だけであろう。私たち庶民がこの制度に反対する理由など存在しないはずである。


【参考資料】
申請・受取方法/申請状況確認 – マイナンバーカード総合サイト (kojinbango-card.go.jp)
マイナンバーカードの普及とマイナンバーの利活用の促進に関する方針について(mhlw.go.jp)
オンライン資格確認の普及について_マイナンバーカードと健康保険証の一体化について (mhlw.go.jp)