はじめに
日本は国民皆保険制度の国であり、日本国内に住んでいるすべての人々は何らかの医療保険に加入する義務があり、無保険状態は法律で禁じられている。会社員が加入する健康保険は一般的には社会保険と呼ばれており、一般会社員とその家族の加入先としては全国健康保険協会(協会けんぽ)と組合管掌健康保険(組合健保)がある。一般会社員以外の雇用者の加入先には、共済組合(公務員や私立学校教職員とその家族など)と船員保険(船員が加入)がある。
任意継続健康保険は、退職後も元の会社の健康保険(社会保険)に引き続き2年間加入できる制度であり、退職後2年間は勤めていたときと全く同じ給付内容を受けられる(但し、保険料は全額自己負担)。私もこの制度を利用した一人である。
任意継続健康保険の有効期間は2年間だけで、延長はできないので、それ以降は国民健康保険への切り替えが必要になる。この切り替え手続きを円滑に行わないと健康保険への未加入扱いとなる「空白期間」が存在することになり、医療費は全額自己負担となるなどの支障が生じる。
したがって、健康保険の「空白期間」を生じさせないようにしたいわけであるが、その具体的な手続き方法についてはあまり詳しくは知られていないようだ。事実、私も任意継続健康保険から国民健康保険への切り替え方法をネット検索で調べてみたが、具体的な方法についてはよく分からず、私の居住地である神戸市中央区の区役所の「保険年金医療課」の窓口で教えて貰わなければならなかった。
本稿は、私の実体験に基づく、健康保険の「空白期間」を生じさせないための任意継続健康保険から国民健康保険への切り替え方法について紹介するものである。この手続き方法は、私が知る限り、WEB初公開ではないかと自負するものである。
一般的な健康保険の切り替え方法
任意継続健康保険から国民健康保険への切り替えにおける一般的な方法は、下記のようなステップで行う手続き方法である。
- 「任意継続被保険者資格喪失申出書」を健康保険組合に提出する。なお、この申出書の提出は、資格喪失を希望する日の前月までに行う必要がある。
- 任意継続健康保険の資格喪失が確認されれば、健康保険組合から「健康保険資格喪失証明書」が発行される。
- 居住地(市区町村)役所の国民健康保険課で国民健康保険への加入申請を行う。この手続き申請で提出または身分確認に必要な書類等には次のようなものである。
- 国民健康保険資格取得届(役所で作成)
- 健康保険資格喪失証明書
- 本人確認書類(顔写真つき)
- マイナンバーカード、運転免許証やパスポート
- 保険料を金融機関から自動引き落としで支払う場合には、その手続きを行う
- 銀行や郵便局の口座番号の記入と届印
- キャッシュカードがあれば届印は不要
この方法は役所の窓口で紹介される一般的な方法であり、WEBでも一部は紹介されていたりもする。しかし、「健康保険資格喪失証明書」の入手に手間がかかる上にタイミングが難しい。スケジュールを上手く管理しないと、健康保険の「空白期間」が生じてしまうというリスクがある。
健康保険の空白期間なしの切り替え方法(推薦)
上記の手続き方法は、普遍的な方法であり、役所の「国民健康保険課」で教えてくれるが、この方法は「健康保険資格喪失証明書」の入手が面倒くさい上にタイミングが難しい。スケジュール管理を上手くしないと、健康保険の「空白期間」が生じてしまうリスクがある。
そこで私がお薦めするのが次に紹介する方法である。この方法は普遍的なものであるのかどうかは分からないが、少なくとも兵庫県神戸市中央区ではOKな手続き方法である。なお、この手続き方法は、神戸市中央区役所「保険年金医療課」の優秀な窓口担当者に教えてもらった方法である。
この私が推薦する任意継続健康保険から国民健康保険への簡単な切り替え方法は、下記のような手続きである。
- 任意継続保険期間満了日(喪失予定日)の10~14日前に居住地(市区町村)で国民健康保険への加入申請を行う。
- この手続き申請で必要な書類等は次のもののみである。
- 国民健康保険資格取得届(役所で作成)
- 本人の健康保険証(有効期限が明記されているもの)
- 家族の健康保険証(生活を共にする家族がいる場合)
- 本人確認書類(顔写真つき)
- マイナンバーカード、運転免許証やパスポート
- 保険料を金融機関から自動引き落としで支払う場合には、その手続きが必要
- 銀行や郵便局の口座番号の記入と届印
- キャッシュカードがあれば届印も不要
この健康保険の切り替え方法のポイントは、任意継続保険期間満了日(喪失予定日)の10~14日前に手続きを行うことである。その理由は、この手続きの受付が可能になるので14日前であり、健康保険証の発行には最長10日間ほどの日数をみておく必要があるからである。
実際、私の場合には神戸中央区役所の保険年金医療課の窓口で、13日前に手続きをし、土日を挟んで1週間以内に新しい健康保険証を入手できた。
尚、健康保険証は任意継続保険期間満了日の前日まで使用可能であり、新しい健康保険証は満了日以降から使用可能となるので注意が必要である。
あとがき
任意継続健康保険の有効期限が切れると「任意継続保険期間満了のお知らせ」と共に「健康保険資格喪失証明書」が健康保険組合から送られてくる。つまり、任意継続被保険者資格喪失申出書を健康保険組合に提出しなくとも「健康保険資格喪失証明書」を入手できるので楽である。しかしながら、これを待ってから健康保険の切り替え手続きを開始していては保険の「空白期間」は必ず生じてしまうことになる。したがって、できることならこれは避けるべき手段ではないだろうか。
一方で、今回の私が推薦する方法であれば、健康保険資格喪失証明書を入手する手間が不要であり、自分本人と家族の健康保険証とマイナンバーカードと銀行のキャッシュカードを持参するだけで手続きが完了するので非常に簡単である。実際にその手続きに要する窓口での所要時間はわずか20分程度であったので非常にあっけなく終わってしまった印象がある。
そして1週間後には新しい健康保険証が郵送されてきたので、健康保険の「空白期間なし」で任意継続健康保険から国民健康保険への切り替えを無事に終えることができた。
任意継続健康保険から国民健康保険への切り替えが簡単な理由は、実は任意継続健康保険証には任意継続保険期間満了日が「有効期限」として明記されているからであることが分かった。この「有効期限」が明記されていない保険証では、健康保険資格喪失証明書を入手しないと切り替え手続きはできないので注意が必要であるが、通常、任意継続健康保険証には「有効期限」が明記されているので心配は無用である。
任意継続保険期間満了日の10~14日前に健康保険の切り替え手続きを行うことで、保険の空白期間を作らずにこんなにも簡単に手続きが完了するので、是非、試して頂きたいものである。この便利な方法が周知されていないのが不思議なくらいである。
尚、現行の健康保険証の発行は令和6年(2024年)12月2日に終了し、マイナンバーカードでの保険証利用が基本となる仕組みに移行する予定になっている。そのため、今後は健康保険の切り替え手続きがさらに簡便になっていくと期待している。
令和6年(2024年)12月2日時点で有効な健康保険証は、最大1年間有効とする経過処置が設けられているが、経過処置期間中に発行済保険証の有効期間が到来した場合や、転職・転居などで保険者の異動が生じた場合は失効するらしい。したがって、保険の空白期間を生じさせないためにも健康保険証をマイナンバーカードに今から統合しておくことが推奨される。