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シニア世代の生活

退職後に任意継続保険を選択する場合の申請手続方法

はじめに

日本は「国民皆保険」のため、国内に住所があれば年齢や国籍に関係なく健康保険への加入が義務付けられている。

しかし、義務ではあるが、これは国民が公平な医療サービスの提供を受けるために必要な仕組みの根幹をなすものである。私はこの仕組みが今後も継続的なものであってほしいと思う。

目次
はじめに
健康保険の選択肢
任意継続保険
国民健康保険
国民健康保険への切り替えの手続き方法
任意継続保険と国民健康保険の長所と短所の比較
健康保険の選択の決断
任意継続保険の申請から保険証交付までの手続き
任意継続被保険者の資格喪失
その他の留意事項
あとがき

健康保険の選択肢

会社を辞めてフリーランスになった場合、勤めていた会社の健康保険を任意継続するか、国民健康保険に直ちに切り替えるか、二者択一である。

そこで、任意継続保険国民健康保険のどちらにすべきか、それぞれの長所短所を比較し、切り替えの手続き方法を調べた。


任意継続保険

任意継続保険では、社会保険の資格を失っても、喪失日から20日以内に「任意継続被保険者資格取得申出書」を提出することで、勤務していた会社が加入する健康保険組合を、退職後2年に限り継続できる。

任意継続保険料は、原則、2年間変更されない

退職後の任意継続中もまったく同じ給付を受けることができるため、保養所などの各種施設を利用できるが、傷病手当金は支給されない

いったん任意継続被保険者になると、2年間は、国民健康保険への加入、もしくは健康保険の扶養者になるために資格を失うことは認められない。また、保険料を1日でも滞納した場合は資格を失う。

しかし、実際には、保険料を滞納することで国民健康保険に切り替えができるということになるらしい。

退職後、すぐに国民健康保険に加入すれば手続きは1度で済むが、任意継続する場合は、下記の手続きをすべて行なう必要がある。
・任意継続加入手続き
・任意継続保険証の返送手続き
・国民健康保険加入手続き


国民健康保険

国民健康保険は、加入者の病気やケガ、出産に際する医療費や死亡時の葬祭費用などが支給される制度である。

ただし、以下の国民健康保険除外要件のいずれかに該当する場合は、加入できない。

  • 健康保険に加入している方とその扶養家族(任意継続含む)
  • 船員保険に加入している方とその扶養家族
  • 国民健康保険組合に加入している方とその世帯家族
  • 75歳以上の者(後期高齢者医療制度の対象者)
  • 生活保護を受給している者

会社を退職したシニア世代は、上記のいずれにも該当しないので、切り替え手続きをして、国民健康保険に加入しなければならない。ただし、健康保険任意継続の手続きをした場合や配偶者などの被扶養者になる場合は、退職日の翌日付でその手続きを行えば、国民健康保険に加入する必要はなくなる。

国民健康保険料は、前年度の所得をもとに計算されるので、退職後直ちに国民健康保険を選択することによって、フリーランス生活の2年目以降に国民健康保険料の減額申請を利用できる場合がある。


国民健康保険への切り替えの手続き方法

会社を退職した際、退職日の翌日に社会保険の健康保険の資格を失う。1日でも社会保険に属していない日があれば、切り替え手続きをして、国民健康保険に加入する必要がある。

国民健康保険は、各市町村が運営しているため、住所のある市町村役場で加入手続きを行う。手続きは退職した日から2週間以内に行う必要がある。また、手続きに退職したことがわかる書類(離職届など)も要求される。他に必要な書類は、本人確認書類(免許証等)やマイナンバーなどである。


長所短所の比較

  保険の種類   長所短所
任意継続保険 会社に勤務していたときと同じ給付内容を受けることができる 原則として2年間保険料は変わらない
国民健康保険退職後2年目以降は減額申請できる場合がある出産手当金は支給されない

健康保険の選択の決断

国民健康保険にはいつでも加入できると考えたとき、健康保険料がどちらも同じくらいであるならば、任意継続保険料2年間支払った後国民健康保険料支払うという方法が最も一般的な方法だと思い、私はこちらを選択することにした。

会社員とフリーランスの健康保険料のもっとも大きな違いは、会社による半額負担の有無である。退職後に任意継続保険料を支払う場合は、会社負担がないので全額が個人負担になる。

例えば、会社員だったときの毎月の健康保険料が3万円であれば、全額の6万円を毎月支払うことになる。

一方で厚生年金保険料雇用保険料を支払う必要がないため、社会保険料全体でみるとそれほど大きな増額にはならないという。

しかしながら、上記の例の場合だと退職後の健康保険料だけで年間約70万円強の支出は避けられない。国民健康保険に切り替えたところで、これに近い額かあるいはこれ以上の額を支払う必要があるから止む得ない。この支払額も一時的なものと考えて我慢するしかない。


申請から保険証交付までの手続き

任意継続被保険の申請から保険証交付までの手続きの流れは次のようなものである。

  1. 任意継続被保険者資格取得申出書の提出
  2. 保険料の納付
  3. 保険証の受け取り

(1)任意継続被保険者資格取得申出書提出

退職日の翌日より20日以内に「健康保険任意継続被保険者資格取得申請書」を所定の健康保険組合まで提出する。

被保険者本人の加入と同時にこれまで被扶養者だった者を引き続き被扶養者とする場合には「健康保険任意継続被保険者資格取得申請書」に対象者の情報を記入するだけで添付書類は不要である。


(2)保険料の納付

「任意継続被保険者資格取得申請書」受付の確認メールを受信したら、納付期限までに初月保険料を所定の銀行口座振り込む

任意継続保険は、加入者が毎月10日(土日祝日にあたる場合は翌営業日)までに保険料を納付することで加入し続けることができる保険である。そのため期日までに納付しない場合には、健康保険法第38条に基づき、納付期日の翌日に資格喪失になるので注意が必要である。

毎月の納付が面倒である場合には、半期一括または通年一括で前納することもできる。通年一括の場合には約4%程度の保険料の割引がある。納付期限は対象月の前月末となっている。

年度の途中で任意継続被保険者となった者は、資格を取得した日の属する月の翌月分から9月分または3月分までを納めることができる。


(3)保険証の受け取り

保険料の入金が確認された後、保険組合から保険証が送付されてくる。


申込みから保険証交付までの事例(私の場合)

ちなみに私が加入している保険組合の場合の手続きの流れは、下記のようなものであった。

1任意継続保険の申し込みを行う
2保険組合より申込み受付のメールで健康ポータルサイトのID・仮パスワードが届く
3健康ポータルサイトに任意継続保険のID・仮パスワードで新規ログインを行う
4健康ポータルサイトから必要に応じて保険料納付書と資格取得証明書をダウンロードする
54で保険料・振込み先を確認し、初月保険料を納付する
6健康保険組合で保険料の入金確認後、保険証が送付される

任意継続被保険者の資格喪失

下記のいずれかに該当するときは、被保険者の資格を喪失するので、被保険者証をすみやかに返納しなければならない。
 

#被保険者の資格を喪失する事項資格を喪失する日
1任意継続被保険者となった日から2年を経過したとき被保険者証に表示されている予定年月日
2保険料を納付期日までに納付しなかったとき納付期日の翌日
3就職して、健康保険、船員保険、共済組合などの被保険者資格を取得したとき被保険者資格を取得した日
4後期高齢者医療の被保険者資格を取得したとき被保険者資格を取得した日
5任意継続被保険者でなくなることを希望する旨を申し出たとき申出が受理された日の属する月の翌月1日
6被保険者が死亡したとき死亡した日の翌日
※3、4、5に該当した際は「資格喪失申出書」の提出が必要となる

その他の留意事項

1氏名や住所に変更があったとき
氏名が変更となった場合は「健康保険任意継続被保険者氏名変更(訂正)届」、住所が変更となった場合は、「健康保険任意継続被保険者住所変更(訂正)届」を保険組合へ提出しなければならない。
2被扶養者に異動があったとき
被扶養者を削除するときは、健康保険被扶養者(異動)届に必要事項を記入のうえ、被保険者証を添えて健康保険組合へ提出しなければならない。被扶養者を追加する場合、添付書類が必要な場合があるので、健康組合に確認する。
3被保険者資格を喪失したとき
すみやかに被保険者証を返納する。
資格喪失日以降は保険証を使用できない。資格喪失後に使用(受診)した場合、医療費を全額返納することになる。
再就職して、健康保険等の被保険者資格を取得したときや、後期高齢者医療の被保険者資格を取得したとき、任意継続被保険者でなくなることを希望する旨を申し出るときは、「資格喪失申出書」の提出が必要となる。
4領収証書の保管
保険料を納付した際に発行される領収証書は、確定申告時に必要となるので、紛失しないように大切に保管する。領収証書の再発行はされない。

あとがき

申請手続き方法自体は難しいことではない。自分が加入していた健康保険組合の指示に従って手続きをすればよいだけである。

重要なのは自分に適した選択がどちらであるのかを判断し、決断することである。

健康保険に加入していたサラリーマンがリタイアした場合は、任意継続保険に加入することが多いのではないかと思う。その理由は人それぞれかも知れないが、一般的には保険組合が提供するサービスが国民健康保険よりも優れている場合が多いこととリタイア直後の保険料が国民健康保険よりも比較的安くなることだとされている。

任意継続保険に加入できたとしても2年後には国民健康保険に移るわけであるからそれほど悩まなくてもよいのかも知れない。それなら資格(権利)があるときには試してみるのも悪くはないだろう。


【参考資料】
BIJ健康保険組合 任意継続保険の案内および申請書類一式
任意継続とは | こんな時に健保 | 全国健康保険協会