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神社仏閣

社格制度における大社号と神宮号を名乗る神社の格式

はじめに

神社仏閣を参拝する機会が増えると疑問も自然と増えてくるものである。例えば、神社の場合、大抵は「○○神社」であるが、なかには「○○大社」であったり、「○○神宮」であったりする。

何らかの理由があるのだろうが、今日まで大きな神社が「大社」であり、天照大御神や天皇にゆかりのある神社が「神宮」であるなどのように漠然とした理解に留まっていた。

そこでもう少し知識を得たいと思い、調べてみることにした。

目次
はじめに
大社の本家、出雲大社
出雲大社【島根県】
官幣大社と国幣大社
大社号の神社一覧
伊勢の神宮以外の神宮
神宮号の神社一覧
「宮」のつく神社
大神宮

大社の本家、出雲大社

大社【たいしゃ】という社号は、格式の高い地域信仰の中核をなす大きな神社を指す社号として知られている。

かつては単に大社【おおやしろ】といえば出雲大社(島根県出雲市)のことを指していたという。奈良・平安時代の昔から大社と銘記されてきた神社は、出雲大社唯一であり、大社といえば「いづもおおやしろ」のことを指していたという。

主祭神である大国主神の住居が「ミヤシロ」と呼ばれていたのが由縁である。大社の本家・本元は出雲大社であることは神話の時代から歴史的に相違なさそうである。


出雲大社【島根県】

出雲国(現在の島根県)が「神の国・神話の国」として知られているのは、神々を祀る古い神社が、現代においても至る処に鎮座しているからであるという。

その中心が大国主大神をお祀りする出雲大社であるのは誰もが納得することであろう。

荘厳な社は、古来、天日隅宮を始め、様々な名称で称えられてきたが、現在は出雲大社いづもおおやしろ】と呼ばれている。

出雲大社(島根県出雲市)の御祭神は、勿論、大国主大神である。 大国主大神は、広く「だいこくさま」として慕われ、全国各地でお祀りされている。

大国主大神は、今日では広く「えんむすびの神」として人々に慕われているが、この「」は「男女の縁」だけではなく、生きとし生けるものが共に豊かに栄えていくための貴い「結びつき」であるという。

そして、日本の悠久なる歴史の中で、代々の祖先の歩みを常に見守られ、目に見えない「ご縁」を結んでくれているのが大国主大神だと信じられてきた。

大国主大神が「国づくり」によって築いた国は「豊葦原の瑞穂国」と呼ばれ、あらゆるものが豊かに、力強く在る国であったという。

古事記・日本書紀による伝承では、大国主大神は「国づくり」で自ら築いた国を大和朝廷の皇祖である天照大御神に還した(国譲り)したことになっている。

天照大御神は、国を譲り受けた代わりに高天原の諸神に命じて宇迦山の麓に壮大なる宮殿を造営させ、その宮殿を「天日隅宮(あめのひすみのみや)」と称して大国主大神の住居として与えたことになっている。この神話が出雲大社の起源とされる。

大国主大神には異なる神名が多くある。その一つに「所造天下大神【アメノシタツクラシシオオカミ】」があるが、それは神代に日本人の遠い祖先たちと、喜びや悲しみを共にしながら、国土を開拓された事に由来しており、これが「国づくり」の大業と呼ばれているものである。

大国主大神は「国づくり」の作業のなかで、農耕・漁業・殖産から医薬の道まで、私たちが生きていくために必要な様々な知恵を授けられ、多くの救いを与えたことになっている。

この慈愛ある御心への感謝の顕れが、それぞれの神名の由来になっていると伝えられている。


官幣大社国幣大社

平安時代にできた延喜式と呼ばれる古代社格制度では、神社の格式を示すものとして「社号」以外に「社格」というのが存在した。

国家の管理下に置かれたすべての神社は「官社」と呼ばれ、官社には「官幣社」と「国幣社」の二種類があり、それぞれ「大社」と「小社」に分かれていた。

官幣社とは神祇官が祀る神社であり、神祇官とは朝廷において最高の祭祀の実力者のことを指した。言うなれば、官幣社国直轄で治められていた神社である。

一方、国幣社とは地方官の国司が祀る神社である。主に各国(旧国)の一宮や、地方の有力神社が中心となっていた。

一宮 【いちのみや】というのは、地域を代表する大きな神社のことで、令制国(昔の地域区分)地域の中で最も神威が高い神社された。

基本的には一国(旧国)あたり一社を建前にしていた。

尚、国弊社よりも官幣社の方を格式の上位としていたようである。

明治時代にも明治政府が「延喜式」に倣い「近代社格制度」改めて神社の格を再定義した。

伊勢神宮を除き、国内すべての神社を「官社」・「諸社」・「無格社」に大別した社格制度である。

官社は、祭事の際、国から奉幣を受ける神社のことであり、官社はさらに神祇官が祀る官幣社と地方官が祀る国幣社に分類された。

この分類は古代社格制度(延喜式)を踏襲したものであったが、官幣社国幣社はさらにそれぞれ「大社」・「中社」・「小社」に分類された。

諸社はさらにどこから奉幣を受けるかによって、「府県社」(府や県からの奉幣)、「郷社」(郡や市からの奉幣)、「村社」(市町村からの奉幣)に分類された。

無格社とは、国家に認められていた神社であるが、上述の神社のいずれにも相当しない神社を指す。

無格社にはどこからも奉幣がなかったため、他の神社と区別するために社格の無い神社、つまり無格社と呼ばれていたが、そのまま社格の種類の一つに数えられてしまったようだ。

このような近代社格制度は、昭和21年2月2日に連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)の神道指令により廃止されたが、神社の格を表す目安として受け継がれていたようだ。

戦後に旧官幣大社旧国幣大社など大社格の社格を有した神社で大社と称したケースが多い。

全国から崇敬を集める格式の高い神社が「~大社」と称するようになったのは時代の成り行きなのかも知れない。

私達は何気なく「大社」は「大きな神社」だと思って参拝しているが、途方もない長い歴史を刻んでいることを忘れず、大切に後世に残していくべきであろう。


大社号の神社一覧

社号     旧格式   御祭神所在地   
出雲大社官幣大社大国主神(=大己貴命)出雲市
熊野大社国幣大社熊野大神櫛御気野命松江市
三嶋大社官幣大社大山祇命,
積羽八重事代主神
三島市
富士山本宮浅間大社官幣大社木花之佐久夜毘売命,
瓊瓊杵尊, 大山祇命
富士宮市
諏訪大社官幣大社建御名方神, 八坂刀売神諏訪市
気多大社国幣大社大己貴命(=大国主神)羽咋市
南宮大社国幣大社金山彦命, 彦火火出見尊,
見野命
垂井町
多度大社国幣大社天津彦根命桑名市
多賀大社官幣大社伊邪那岐命
伊邪那美命
多賀町
建部大社官幣大社日本武尊, 天照皇大神,
大己貴命(=大国主神)
大津市
日吉大社官幣大社大己貴命(=大国主神),
大山咋神 
大津市
春日大社官幣大社武甕槌命, 経津主命,
天児屋根命, 比売神
奈良市
龍田大社官幣大社天御柱命, 国御柱命三郷町
廣瀬大社官幣大社若宇加能売命, 櫛玉命,
穂雷命
河合町
伏見稲荷大社官幣大社宇迦之御魂大神, 佐田彦大神,
大宮能売大神, 田中大神, 四大神 
京都市
松尾大社官幣大社大山咋神, 中津島姫命京都市
梅宮大社官幣中社大山祇命, 瓊瓊杵尊,
彦火火出見尊, 木花咲耶姫命
京都市
住吉大社官幣大社底筒男命, 中筒男命,
表筒男命. 神功皇后
大阪市
大鳥大社官幣大社日本武尊, 大鳥連祖神堺市
熊野本宮大社官幣大社熊野牟須美大神, 事解之男神,
速玉之男神, 家都美御子大神,
天照皇大神, 忍穂耳命,
瓊瓊杵尊, 彦火火出見尊,
鸕鶿草葺不合尊, 軻遇突智命,
埴山姫神, 弥都波能売神,
稚産霊命
田辺市
熊野速玉大社官幣大社熊野夫須美大神, 熊野速玉大神, 家津美御子大神, 国常立尊,
天照皇大神, 高倉下命,
天忍穂耳尊, 瓊瓊杵尊,
彦火火出見尊, 鵜葺草葺不合命, 国狭槌尊, 豊斟渟尊, 泥土煮尊, 大戸道尊, 面足尊
新宮市
熊野那智大社官幣中社大己貴命(=大国主神),
家津御子大神, 国常立尊,
御子速玉大神, 熊野夫須美大神, 天照皇大神, 忍穂耳命,
瓊瓊杵尊, 彦火火出見尊,
鵜葺草葺不合命, 国狭槌尊, 豊斟渟尊, 泥土煮尊,
大戸道尊, 面足尊
那智勝浦町
宗像大社官幣大社田心姫神,  湍津姫神,
市杵島姫神
宗像市
高良大社国幣大社高良玉垂命, 八幡大神,
住吉大神
久留米市
参拝に行ってみたい神社一覧
太字は参拝したことがあるお勧めの神社

伊勢神宮以外の神宮

天照大御神を祀る伊勢神宮の正式名称は、「神宮」であり、伊勢にあるので通称として「伊勢神宮」を名乗っているという。したがって、本来は「伊勢の神宮」が正しい理解であるという。

一方、神宮は、社号として神宮号を名乗る神社である。

神宮という社号は格式がとても高い神社であり、皇室とゆかりの深い由緒ある神社につけられる。

神宮と呼ばれる基準としては、皇室の祖先神を祀っているかどうかである。

日本書紀には、伊勢神宮石上神宮出雲大神宮(後の出雲大社)が記されている。

また、平安時代の「延喜式神名帳」には大神宮伊勢神宮)、鹿島神宮香取神宮が記されている。

すなわち、神社の中でもごく限られた、格式が高くて規模が大きい神社のみが、神宮として扱われていたということである。

明治以降には、その格式の高さから他の天皇や皇室の祖先神、大和平定に功績のある特定の神を祭神とする神社が神宮へと称号を改めたため、神宮の数が急に増えることになった。

一番新しい例は終戦後に、北海道神宮英彦山神宮が、神社本庁の許可を得て改称しているのみである。

有名な明治神宮・鹿島神宮・宇佐神宮など神社本庁が認可している神宮は現在24社あるが、神社本庁に属さない神宮も存在しているという。


神宮号の神社一覧

社号    御祭神 所在地   
伊弉諾神宮伊邪那岐命、伊邪那美命淡路市
霧島神宮天饒石国饒石天津日高彦火瓊瓊杵尊霧島市
鹿児島神宮天津日高彦穂々出見尊霧島市
鵜戸神宮日子波瀲武鸕鶿草葺不合尊日南市
英彦山神宮正哉吾勝勝速日天忍穗耳尊添田町
橿原神宮神武天皇橿原市
宮崎神宮神武天皇宮崎市
氣比神宮伊奢沙別命、仲哀天皇敦賀市
宇佐神宮八幡大神 (応神天皇)、
比売大神、神功皇后
宇佐市
近江神宮天智天皇大津市
白峯神宮崇徳天皇、淳仁天皇祭神京都市
平安神宮桓武天皇、孝明天皇京都市
新日吉神宮大山咋神、大山咋命荒魂、
大己貴命、玉依比売命、
玉依比売命荒魂、 田心比売命、
菊理比売命、後白河天皇
京都市
赤間神宮安徳天皇下関市
水無瀬神宮後鳥羽天皇、土御門天皇、
順徳天皇
島本町
吉野神宮後醍醐天皇吉野町
北海道神宮明治天皇札幌市
明治神宮明治天皇渋谷区
熱田神宮熱田大神、
御神体:天叢雲剣
(草薙剣; 三種の神器の一つ)
名古屋市
石上神宮布都御魂大神、布都御魂 天理市
國懸神宮國懸大神、御神体:日矛鏡和歌山市
日前神宮日前大神、御神体:日像鏡和歌山市
鹿島神宮武甕槌神鹿嶋市
香取神宮経津主神香取市
神宮号の神社一覧

」のつく神社

(みや・ぐう)」という社号も格式が高く、特別の理由を認められた神社につけられる。例えば、天皇や皇室、国に関わりのあった人物を祀っている神社である。

親王と呼ばれる天皇家の男子や歴史上の重要な人物である。例えば、香椎宮には仲哀天皇が、東照宮には徳川家康が、天満宮には菅原道真がそれぞれ祀られている。


大神宮

大神宮【だいじんぐう】という社号は、伊勢神宮の出張機関というべき、東京大神宮の特別な社号である。

東京大神宮は伊勢神宮天照大御神豊受大神を勧請されており、まさしく伊勢神宮出張機関ともいえる。

江戸時代には、「東海道中膝栗毛」でも旅の主目的として描かれているように伊勢神宮への参拝は生涯かけての願いであった。

江戸から伊勢は非常に遠く、道なりは厳しいものであったため、明治天皇の判断で東京大神宮が、伊勢神宮の遙拝殿としてつくられ、「東のお伊勢さん」と呼ばれるほど人々に親しまれるようになった。


【参考資料】
出雲大社【公式サイト】
出雲國一之宮・熊野大社【公式サイト】
三嶋大社【公式サイト】
富士山本宮浅間大社【公式サイト】
諏訪大社【公式サイト】
氣多大社【公式サイト】
南宮大社【公式サイト】
多度大社【公式サイト】
多賀大社【公式サイト】
建部大社【公式サイト】
日吉大社【公式サイト】
春日大社【公式サイト】
龍田大社 | 奈良寺社ガイド
廣瀬大社【公式サイト】
伏見稲荷大社【公式サイト】
松尾大社【公式サイト】
梅宮大社【公式サイト】
住吉大社【公式サイト】
大鳥大社【公式サイト】
熊野本宮大社【公式サイト】
熊野速玉大社【公式サイト】
熊野那智大社【公式サイト】
宗像大社【公式サイト】
高良大社【公式サイト】
伊勢神宮【公式サイト】
ウィキペディア(Wikipedia)