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リベラルアーツとは何か?リベラルアーツ=教養か?

はじめに

リベラルアーツ(Liberal Arts)は、広く深い知識や思考能力を身につけるための学問分野や教育体系を指す用語である。一般的に「教養」と訳されることが多いが、その背景にはより広範な意味があるとされる。

目次
はじめに
リベラルアーツとは
リベラルアーツに着目する理由
リベラルアーツの目的
リベラルアーツの歴史
古代ギリシャの哲学との関係
古代ローマの哲学との関係
リベラルアーツへの遺産
リベラルアーツの特徴
教養との関係
独学でリベラルアーツを学ぶ方法
あとがき

リベラルアーツとは

リベラルアーツは、私たちが生きるための力を身に付けるための手法であり、こうあるべきという固定概念から解放され、自由に生きるための手段を学ぶための学問であるとされる。

日本語にすると「教養教育」であるが、欧米諸国でのリベラルアーツの意味からするとこの和訳(直訳)は適していないかも知れない。


リベラルアーツに着目する理由

リベラルアーツは、グローバル社会に対応する人材育成に必要不可欠な教育であると考えられている。ビジネスだけでなく、私たちが考える引き出しを増やし、人生を豊かにすることへの学びでもある。

今さらながら、日本でも大学などの教育機関や人材育成や企業研修の場などで取り入れられ始めている。また、企業や組織を運営するリーダーや、マネジメントする管理職などに求められる考え方や要素の一つとなっているようである。

複雑化していく社会の中では、いろいろな問題や課題を解決していく機会も増えていく。その課題を解決するには、どれだけ高度な専門領域の知識を持っていても解決が難しい場合がある。物事を多角的に捉えて、さまざまな方向から柔軟に考えられる思考があってこそ解決できる課題もある。そのような考え方やものの見方を鍛えていくためにも、リベラルアーツが注目されていると言ってよいと思う。


リベラルアーツの目的

リベラルアーツの目指すものは、単に知識を蓄えることではない。むしろ、幅広い分野の学びを通じて、人生を豊かにし、社会で活躍するための柔軟な考え方と適応力を身につけることであるとされる。これは、現代の複雑な社会において特に重要とされている。

リベラルアーツを学ぶことで、世界を多角的に理解する力が得られると言われている。つまり、リベラルアーツは個人の自由な思考や多角的な視野を育てることを目指している。もし、この考えに興味があれば、自分が特に魅力を感じる分野について調べてみるのも面白いはずである。


リベラルアーツの歴史

リベラルアーツの歴史は、とても古く、古代ギリシャまで遡るとされている。リベラルアーツの原型は、古代ギリシャのプラトン(紀元前427~347)が推奨した「数学的諸学科の自由な学習」であり、人間を束縛から解放する知識や、自由に生きるためのスキルであると言われている。

また、リベラルアーツの起源は、古代ローマ時代の自由七科【じゆうしちか】に由来するとされている。自由七科とは、基礎的な学芸として重視されていた文法学論理学修辞学に、算術幾何学天文学音楽を加えた全7科の学問科目を指す。

リベラルアーツは、古代ローマから中世ヨーロッパの大学の基本科目になり、その後、海を渡ってアメリカに伝わってから、やがて日本にも伝来したという流れがある。

リベラルアーツの歴史を振り返ったみると、古代ギリシャと古代ローマの哲学は、リベラルアーツの起源と深く関係していることは明らかである。リベラルアーツの理念や構造は、これらの古代文明での哲学的思考や教育体系に根ざしていると考えるべきだろうと思う。


古代ギリシャの哲学との関係

  1. 自由人の学問としての概念
    • リベラルアーツは古代ギリシャの自由人の学問として発展した
    • 古代ギリシャの哲学者たちは、人間が自由であるためには広範な知識と理性による思考能力が必要だと考えた
    • プラトンやアリストテレスらは、教育を通じて真理を追求し、善良な市民を育てることの重要性を説いている
  2. 論理と弁論術の重視
    • ソクラテスやアリストテレスによる論理学や弁論術の発展はリベラルアーツの一部として今日も影響を与えている
    • これらの学問は思考力やコミュニケーション力を磨く基盤となっている
  3. 哲学と倫理の重要性
    • 古代ギリシャでは、哲学が知識の中心であり、倫理や存在の根本的な問いがリベラルアーツの核に据えられた

古代ローマの哲学との関係

  1. 体系化と実践の拡大
    • 古代ローマの哲学は、古代ギリシャの哲学を受け継ぎ、より実践的な教育体系に発展させた
    • キケロやセネカといった古代ローマの哲学者たちは、弁論術や倫理学をリベラルアーツの重要な要素として強調した
  2. 七つの自由学芸
    • リベラルアーツの具体的な枠組みである「七つの自由学芸(septem artes liberales)」は、古代ローマ時代に体系化された
    • この学問体系には以下のような分野が含まれている
      • 文法学、修辞学、弁証法(言語学や論理学)
      • 算術、幾何学、天文学、音楽(数学や自然科学)
  3. 市民の教養
    • 古代ローマの哲学者たちは、リベラルアーツが市民としての教養と知性を育てるための不可欠な教育だと考えた

リベラルアーツへの遺産

古代ギリシャと古代ローマの哲学者たちがリベラルアーツに与えた影響は計り知れない。これらの古代文明によって、知識を追求し、論理的かつ倫理的に考える力を備えることが、個人の自由と社会の発展に重要だと認識された。この精神は、中世ヨーロッパの教育体系にも引き継がれ、今日のリベラルアーツ教育に繋がっているとされる。

リベラルアーツの起源を辿ると、哲学が持つ思考の力がいかに人類の教育を変革してきたかが見えてくる。これらの思想は今も私たちに多くの洞察を与えている。私が哲学に興味を引かれるのもこのような観点に基づいている。


リベラルアーツの特徴

  1. 学問の多様性
    • リベラルアーツは、文系・理系を問わず多くの分野を含む
    • 哲学、文学、歴史、科学、数学、芸術、社会学などを含む
    • 広い範囲の知識を学ぶことでバランスの取れた視野を養う
  2. 自由な学び
    • Liberal(自由)の語源には思考や発言の自由を育む学問という意味が込められている
    • これは特定の職業スキルだけを習得するものではない
    • 広い知識と批判的思考を養うための教育を目指している
  3. 思考力とコミュニケーション力の向上
    • リベラルアーツ教育は、課題解決能力、論理的思考、創造性、そして効果的なコミュニケーション能力を強化することを目的としている

教養との関係

教養は、リベラルアーツの一部またはその結果として捉えることができる。ただし、教養は日本語で使われる際に、一般的には人としての知識や文化的な素養を意味することが多く、リベラルアーツのより包括的な意味合いとは少し異なる場合もあると理解されている。

元来、教養教育とは、教養を広げることや、幅広い知識の習得を指した用語である。だから、リベラルアーツの本来の意味とは少し異なっているのは明らかである。

教養教育は、スキルの習得ではなく、学生が社会に出て働いていくために必要な知識情報(教養の基礎)の提供に重点を置いた教育である。

一方、リベラルアーツは、明確な答えがない問題や課題を解決していくための知識やスキルなど学習方法考え方を習得することを目的とした学問のことである。そのためリベラルアーツは「自由学芸」としての学問体系を持っている。


独学でリベラルアーツを学ぶ方法

私たちシニア世代が独学でリベラルアーツを学ぶことは可能であり、自分の興味や学びたい分野に合わせて柔軟に進めることができる。その具体的な方法を以下に提案したい。

1. 学ぶべき分野を理解する

リベラルアーツは幅広い学問領域を含むが、次のような主要分野を独学の柱にするのがおすすめである。

  • 言語学
    • 文法、修辞学、弁論術
    • コミュニケーションと表現力を養う
  • 人文科
    • 哲学、歴史、文学
    • 人間性や文化への理解を深める
  • 自然科学
    • 算術、幾何学、天文学
    • 論理的思考と自然の法則を学ぶ
  • 芸術
    • 音楽、美術
    • 創造性を育む

2. リソースを活用する

独学には優れたリソースの選択が欠かせない。

  • 書籍
    • 各分野の入門書や名著を選ぶ
    • 哲学ならプラトンやアリストテレスの著作
    • 歴史なら世界史の概論書など
    • 『リベラルアーツの学び方』
      • リベラルアーツの基本的な考え方や学び方を体系的に解説した書籍
      • 初心者にもわかりやすく、幅広い分野を網羅
    • 『池上彰の教養のススメ』
      • 池上彰氏が教養の重要性を説き、哲学や宗教学などの具体的な実践例を紹介している
      • 教養がどれだけ役に立ち、一生使える知の道具であるかが感じられる
    • 『自由になるための技術 リベラルアーツ』
      • 哲学や歴史、美術などを通じて、固定概念から解放されるための知識を提供する
      • 現代社会において、リベラルアーツを学ぶ意義が浮かび上がってくる
    • 『経営者のためのリベラルアーツ入門』(山口 周著)
      • 哲学や文学を中心に、リーダーシップや意思決定に役立つ教養を学べる内容
    • 『リベラルアーツという波動』
      • 国際基督教大学(ICU)のリベラルアーツ教育の実践例を紹介
      • 現代社会におけるリベラルアーツの意義を考察している
  • オンラインコース
    • MOOC(Massive Open Online Courses)プラットフォームで、リベラルアーツ関連の講座が無料または有料で提供されている
    • 例えば、CourseraやedXなどが良い例
  • 図書館や電子書籍
    • 地元の図書館や電子書籍サービスを利用して、多くの学問分野にアクセスできる

3. 学びの計画を立てる

リベラルアーツの幅広さを効果的に学ぶために、以下のような学習計画を作るとよいかも知れない。

  • 1つのテーマに焦点を絞る
    • 毎月または毎週、異なる分野に焦点を当てる
    • 例えば、1月は哲学、2月は歴史、3月は音楽といった具合
  • 目標を設定する
    • 1ヶ月で3冊読む、週に1時間オンライン講座を受けるなど、具体的な目標を決める
  • 日常生活に取り入れる
    • 学びを日常生活に活用することで理解が深まる
    • 例えば、歴史の知識を旅行計画に活かしたり、哲学のテーマを友人と議論したりする

4. 実践と交流

リベラルアーツの学びを深めるためには、実践と交流が重要である。

  • 議論
    • 自分の学んだ内容を誰かと議論したり、ブログやノートに書き留めたりして、自分の考えを整理する
  • 作品制作
    • 音楽や美術を学んだ後は、自分で小作品を作ってみるのも刺激的である
  • コミュニティ参加
    • 地域の哲学カフェや歴史クラブなどに参加して、他者との意見交換を通じて視野を広げる

5. 探究心を忘れずに

リベラルアーツの独学で重要なのは、自分の興味を中心に学び続けることであろう。未知の分野やテーマにも挑戦することで、さらに豊かな学びが広がるはずである。

独学の道は自由度が高く、学ぶ過程そのものが喜びとなる。興味を持っている分野やテーマについて、まずは一歩踏み出してみることが大切である。どの分野から始めてみるかを考えるだけでワクワクしませんか?


あとがき

課題解決に必要な力を養うことがリベラルアーツの目的であるため、学ぶべきことは現代社会のすべてが対象となる。明確な答えのない問いに対応していくためには、物事の本質や事実などの正確な情報を学んだあとに、自分なりの基準を持つというステップを踏むことが大切となる。

リベラルアーツは、単なる知識や情報を得るのでなく、学習方法考え方などのスキルを習得するためのものである。必要なときに活用できる知識ではなく、その知識をどう活用するか、課題解決のためにどのように生かせるかということを学んでいくものである。その学びを鍛えていくことで、新しいものの見方や、柔軟な思考が広がり、自分なりの基準を持つことに繋がっていくと信じたい。

そうした学びの中から、自分自身の中にある固定観念に気が付いて、その固定観念をアップデートさせるための発想や能力が身に付いていくと信じて、継続して取り組んでいきたい。


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