はじめに
クロマツは、一年を通じて緑を保ち、季節ごとに異なる表情を見せてくれる。特に冬でも葉が青々としているため、常に美しい姿を楽しむことができる。また、クロマツは樹齢が数百年に達することもあり、不老長寿の象徴とされているため、縁起物としても親しまれている。
クロマツは太い幹と黒褐色の樹皮、そして濃緑色の針葉が特徴である。クロマツの盆栽が好まれる理由は、この力強い外観による盆栽としての存在感であると言っても過言ではない。
クロマツは成長力が旺盛で、環境の変化に対する適応力が高いため、初心者でも育てやすいという特長がある。また、剪定やワイヤリングによって多様な樹形に仕立てることができる。
このように、クロマツの盆栽はその力強さと美しさ、そして育てやすさから、多くの愛好者に支持されている。
盆栽の世話は大変であり、現役の会社員をしていた頃は、興味はあっても自ら育てようとは全く思わなかったが、会社員をリタイアすると状況は変わってくる。
幸いなことに自宅の庭に自生してきたクロマツの苗を使って、盆栽を作ってみたくなったのである。市販されているクロマツの苗ではないので、形は不格好ではあるが私の「盆栽事始め」の練習台には十分に役立ってくれるはずである。むしろ発芽した頃から育てているので愛着は大きい。不細工であっても可愛く思えるから不思議である。
本稿では、クロマツの盆栽の作り方や、日常の世話の仕方(育て方)と病害虫対策についても記したいと思う。
クロマツの盆栽を育てるポイントは剪定作業であると思う。無駄な枝を断ち切る剪定と、芽摘みや芽切りを覚えると手入れも比較的楽になる。また、日当たりや散水に注意することで枯れる心配もほとんどない。
本稿では、クロマツの盆栽の作り方や、日常の世話の仕方(育て方)と病害虫対策についても記したいと思う。
クロマツ(黒松)
マツ科マツ属の常緑低木であるクロマツ(黒松)の原産地は日本であり、襖絵などにも描かれ古来から日本人に愛されてきた。クロマツは寺社仏閣の境内で多く植栽されている他、防風林や防砂林として海岸にも植栽されている。
海岸林(防風林・防潮林 ・防砂林 )は、海からの風や潮、津波や高波、飛んでくる砂などから海沿いの暮らしを守るために植林された森林である。
クロマツの最大の特徴は塩害の厳しい海岸でも育つ強健な性質である。養分の少ない海岸の土壌でも大きく育ち、森林をつくることのできる木はクロマツのほかにはないという。

クロマツは基本的には日当たりを好むが、半日陰や日陰といった環境にも適応する。さらにクロマツは非常に丈夫で寿命も長い。長年育てると力強い幹立ちと緑葉の美しさのコントラストを楽しめるために盆栽にも適している。そのためクロマツは盆栽の代表格とも称されている。
盆栽の作り方
クロマツの盆栽を作るには、いくつかの基本的なステップがあります。以下にその概要を説明します。
盆栽に仕立てられる松は数種あり、黒松の他に赤松や五葉松といったタイプもあります。赤松と五葉松は黒松よりも葉がしなるのが特徴で、五葉松は黒松よりも幹がずっしりしている点が異なるのです。
黒松は3種の中で最も葉が鋭角で、盆栽に仕立てると古風な雰囲気を醸し出します。作り方も難しくなく、初心者でも安心です。育て方を確認して、立派な黒松の盆栽を造りましょう。
苗の選び方
苗の選び方で大事なことは、健康な苗を選ぶことである。濃緑色の針葉を持ち、枝が適切に配列されているものを選ぶ。幹の形状や根の健康状態も重要である。

クロマツの盆栽を造るには、クロマツ苗を購入する。初心者が失敗しづらい方法としては、盆栽のみを専門とする造園店で購入するのがおすすめである。盆栽家が一定のレベルまで剪定をしたクロマツが入手できる。
園芸店で購入する場合は、幹元がずしっと重みのある苗を選ぶ。また、枝や葉に優しく触れてみて、張りがあるものが望ましい。まれに根元部分が腐りかけていたりするものもあるので注意しないといけない。
用土の準備
- 用土として水はけの良い土を準備する
- 赤玉土や鹿沼土など、水はけの良い土を使用
- これらを混ぜて使うことも一般的である
- 購入時の用土をそのまま利用してもよいが、養分をしっかり回すためには自分で用土を作るのがおすすめ
- クロマツの盆栽には、赤玉土を主として利用する
- 赤玉土の他、桐生砂や矢作沙を少量混ぜ合わせても良い
- 園芸店で盆栽用と表記された用土でもよい
- クロマツ盆栽の用土は水はけがよいタイプの用土を選ぶ
植え付け
クロマツの盆栽は適宜植え替えをすることで、新しい根の生長が助けられる。また、根の整理をせずに長年同じ器で育てていると、少しずつ根の行き場がなくなり、やがて根が腐る可能性がある。根が腐ると葉の枯れや変色にも繋がる。
クロマツの盆栽のサイズや生長度に合わせて植え替えをすると、クロマツならではの葉のとがり・重厚感のある樹形を保てる、というメリットがある。重厚感のあるクロマツの盆栽を楽しむためにも、一定の植え替えを推奨したい。
クロマツの盆栽の植え替え作業は、施肥時期と同様に新しい芽が出始める直前が適期である。植え替えによって器内の環境や根がリフレッシュすることで、芽や枝の出もスムーズになる。具体的には4月から5月下旬頃がよいとされる。
植え替えの頻度は、育成段階のクロマツの場合は3年に1回程度とする。樹形がかたまったクロマツは4年に1回ほどがよい。
植え替え時に使う資材としては、仕立て材料とさほど変わらない。用土の他、苔、剪定はさみ、ピンセット、器、針金を準備する。器については現行のサイズより1号大きいものが推奨されるが、根を断ち切って同様の器を使っても構わない。
針金は器底の穴から通して、クロマツをしっかり固定するために使う。針金を使わずに鉢植え仕様でもよいが、用土と針金を合わせて使うことで用土が根にしっかり絡みつき丈夫になる。
クロマツを現行の器から出し、根をピンセットでとかしてあげる。古い用土を振り落とすように下に向かってとかす。その後、全体の根を半ばまで断ち切り、合わせて横向きに生えた上根は根元から落とす。
根を調整したら、ネットや用土を敷き、針金を設置した器にクロマツを配置する。中央にクロマツを置き、70%ほど用土をかぶせ、針金を交差させる。その後、用土を少量かぶせ、裏面を湿らせた苔を張ったら完成である。
- 鉢の準備
- 鉢底にネットと底石を敷く
- 苗の植え付け
- 根を広げるようにして苗を鉢にセットする
- 用土をそっと押さえながら入れる
- 用土を入れる際、強く押さえると根が弱るので注意
- 裏面を湿らせた苔を表面に張る
- スナコケやオキナコケ、スギコケ、ハイゴケが人気
- 水をたっぷり与えて(散水)、完成
日常の手入れ
クロマツの盆栽のに日常の手入れは、一般的には下記のような方法で行う。
- 日光と水やり
- クロマツは日光を好むので、屋外で直射日光が受けられる場所に置くのが理想的である
- 水やりは土の表面が乾いたら行い、鉢底から水が流れ出るまでたっぷりと与える
- 剪定と形成
- 春から初夏にかけて不要な枝や古い葉を剪定する
- ワイヤリングで枝を望む方向に誘導する
- 肥料
- 成長期に合わせてバランスの良い肥料を与える
- 春と秋には成長を促す肥料を、夏は控えめにする
クロマツの盆栽は日当たりがよいところが適所であるとされる。クロマツの盆栽に限らず、松柏類の盆栽は日当たりがない場所では思うように生長促進されない。日当たり場所を探し、基本は外で育成・手入れをするようにしたい。
また、お正月や慶事の際など部屋の中にクロマツの盆栽を置きたい時は、短時間に留めるべきとされる。日当たりがない場所に長期間置くと、葉がへたるので注意が必要である。
一般的に盆栽は水分が多いほうがよいというイメージであるが、クロマツの盆栽は別である。日当たりに注意した上で、少しからっとする程度の用土を目安としたい。散水は、表面がからからに乾いてから作業した方が良いとされる。
具体的な頻度としては、春から夏時期は1日2回ほど、秋時期は1日1回程度、冬時期は3日に1回程度でよいとされる。また、1週間に1回ほど霧吹きで葉に散水してやると、葉に張りがでる。
クロマツの盆栽は1年中育てやすく、適宜手入れしていれば枯れる心配はあまりない。ただし、夏の時期は紫外線量も多いので、葉がやけてしまう可能性もある。風がよく通り、なおかつ日当たりも確保できる場所で手入れをしたい。
クロマツの盆栽は、冬のつめたさにも堅固である。むろなどで管理しなくても、枯れることはない。購入したばかりでクロマツ自体が小さい場合や、枝が弱っている時は軒下や玄関内に入れてやると良い。

クロマツの盆栽の場合、肥料をあげることで新しい芽がつきやすい傾向にある。そのため、育成段階の小さいクロマツの盆栽は肥料をしっかり施すことで、樹形造形がしやすくなる。
一方である程度樹形がかたまったクロマツの盆栽は、肥料あげ過ぎると徒長枝が伸び、樹形が悪くなる。理想に近い形となってからは、肥料は少なく調整していくのがよい。
クロマツの盆栽は、基本的に新しい芽が準備する手前で施肥するとよい。具体的には4月から11月あたりに施肥するのがおすすめである。肥料を与える頻度としては月に1回を目安とする。12月から3月上旬あたりの寒い時期は、クロマツの生長も緩やかになるので肥料を必要としない。肥料やけを起こさないように注意したい。
クロマツの盆栽には、効きがゆっくりめな玉状の肥料がおすすめである。液体タイプもあるが、効きが早く養分過多で枯れる可能性もある。盆栽器のサイズに合った小粒肥料がよい。
クロマツに限らず盆栽は玉状の肥料を使うことが多いが、油かすは養分としてもちょうどよい。化学肥料もあるが効きが強いので注意する必要がある。表記をよく確認してから購入したい。
施肥は器のサイズと、クロマツの盆栽の健康度によって用量が変わる。基本的な目安としては1号サイズの器に1玉と考えるとよいと思われる。葉が変色したり枯れている場合は、施肥不要と考えよう。
肥料は単純に用土に置くだけでも構まないが、軽く埋めるようにすると落ちる心配もない。ミニ盆栽の場合は、専用ケースを使うとよい。散水時に湿ることで、肥料が溶けてくれる。
基本剪定
クロマツの盆栽の剪定にはいくつか種類があるが、基本剪定は長く伸びた枝(徒長枝)を落とす作業を指す。徒長枝の剪定をすると、樹形を保つだけではなく、他の枝葉に均等に養分・水分が行き渡りやすくなる。葉の鋭角さも鑑賞点であるクロマツにとっては、徒長枝の剪定で見た目を美しく維持することが大切と言える。
クロマツの盆栽の基本剪定の時期は、新しい葉芽が出始める直前の期間となります。黒松の盆栽は、12月から2月下旬頃の冷えが強い時期の剪定は厳禁です。この期間に剪定すると、枝や葉が枯れる可能性があるので注意しましょう。
剪定の具体的な時期は、3月から4月上旬あたりがちょうどよいとされる。仮に太い枝を落としても、新しい芽が準備している時期なので、過度な心配はいらない。適期までは育成期と考え、散水や日当たり・風通しのみに気を付ければよい。
クロマツの盆栽の樹形全体を見て、過度に伸びた枝を根元から落とす。内側に入った枝や、葉が下向きに伸びている枝なども不要な枝であるので根元から切り落とす。
クロマツの盆栽の基本剪定は、不要と思われる枝がなければ無理に作業しなくて構わない。無理に行うと、反対に枯れることもある。樹形を見て理想と異なる形の場合、混み合って風の通りが悪そうな時のみ剪定すればよい。
クロマツの盆栽に基本の剪定をした後は、癒合剤を利用して切り口を保護してやる。癒合剤とは、盆栽や鉢植えに使う傷口剤である。癒合剤を活用すると、剪定はさみによる傷の治りを助けるとともに、害虫や雑菌から守る機能もある。種類はいくつかあるが、クロマツの盆栽にはペーストタイプのものが使い勝手がよいと思われる。剪定を終えたら、適量を塗る。
芽摘みと芽切り
クロマツの盆栽を美しく育成する中で、芽摘みと芽切りという作業が大切になる。
芽摘みとは、クロマツの葉の頂部分から出る芽を摘む作業である。芽摘みをすると枝の出を調整できるので、理想の型を造形しやすくなる。
一方、芽切りとは、当年の新しい芽を落とすことを指す。芽切りをすると落とした箇所から新たに芽(2番芽)が出るが、育成期間がないので魅力的な短い葉をつける。
芽摘みの時期は、新しい芽が見え始める4月上旬から5月下旬を目安とする。特に育成して数年経つクロマツはでる芽の数も多いのでよく観察する。反対に枝や葉が幼い時は、芽を摘む作業の必要はない。
芽摘みは、クロマツの葉のてっぺん部分に注目すると、ふわふわとした穂のような芽がある。この芽を手で断ち切るように落とすとよい。2つ以上でている場合は、最も生長している芽を取る。また、薄茶色の芽は見逃さず摘む。
芽切りに関してはもう少し遅く、5月下旬から7月頃が適期である。そもそも芽切りは伸びきった芽を落とす作業なので、芽がすでに摘まれたクロマツの盆栽は作業不要の時もある。クロマツの盆栽の経年数や状態に応じて判断したい。
芽切りの場合は、薄緑色の新しい芽を探す。この芽を元部分から断ち切る。もし薄緑色の新芽が見つからない時は芽切りの必要はない。状態をみて対応したい。
病害虫対策
- 病害虫対策
- アブラムシやハダニなどの害虫に注意し、定期的な検査と速やかな対処が必要である。
クロマツの盆栽は、適切なケアを行うことで美しい樹形を保つことができる。
あとがき
率直に言って、私がマツの盆栽、しかもクロマツの盆栽を育てることになるとは予想外の出来事である。盆栽には少なからず興味を持っていたのは事実であるが、サラリーマン生活を送っていた頃は絶対に無理であると思っていた。日常の世話ができず、枯らしてしまうことになるに違いないと思っていたからである。
ところが、サラリーマン生活をリタイアしてからゆとりの時間もでき、知人から盆栽を譲り受けたのを機会に、新たに自分でも苗から育ててみたくなった。しかもそのマツの苗というのが、偶然にも庭に自生してきたものであるから、ちょっと運命的なものを感じて育てることにしたわけである。私が生きている間に盆栽と呼べるような立派な盆栽に育つかどうかは分からないが、苗から育てることで愛着が半端ないのは分かっている。その価値は私にとってはプライスレスである。